2026年10月7日、Porsche AGはドイツ・ヴァイザッハの開発センターで開催したキャピタルマーケットデーにおいて、2035年を見据えた新戦略「Sportwagenschmiede '35」を発表した。新型スポーツカーやSUVの投入、カスタマイズ事業の拡大などを通じてブランド価値を高めるとともに、事業構造の効率化によって収益性の改善を目指す。

911の上位に位置するスーパースポーツカーを開発

今回の新戦略で注目されるのが、今後の製品ラインナップに関する計画だ。

Porscheは、スポーツカーメーカーとしてのアイデンティティーをさらに強化するため、すべてのモデルラインにおいて「911」のDNAをより強く打ち出す方針を示した。その一環として、911の上位に位置するスーパースポーツカー向けに、ミドシップエンジンレイアウトのプラットフォームの開発を発表した。

現時点では具体的なモデル名や発売時期、パワートレインの詳細などは明らかにされていないものの、Porscheのラインナップの頂点に立つ新たなモデルの登場が期待される。

また、911についても魅力的な派生モデルを追加し、ラインナップを強化する計画だ。

Porscheは2030年まで、毎年少なくとも1つのブランドを象徴する新製品を投入する方針で、既存モデルの改良とあわせて商品力を高めていく。

718のEVや新型SUVを投入、エンジン車も継続

今後の新型車としては、電気自動車(BEV)の「718 Boxster」と「718 Cayman」が予定されている。両モデルは、初めて通年生産となる2028年に販売を牽引することが期待されている。

さらに2028年には、新たなSUVを発表する計画だ。

この新型SUVは、現在販売されているBEVの「Macan」と並行して展開されるモデルで、内燃エンジンおよびプラグインハイブリッド(PHEV)を設定する。2028年に本格的な生産を開始し、2029年には売上高と収益性の向上に大きく貢献すると見込んでいる。

加えて、Porscheは「Cayenne」の上位に位置する新たなSUVの投入についても検討している。

パワートレインについては、内燃エンジン、PHEV、BEVという3本柱の戦略を維持する。今後も内燃エンジンやPHEVの開発を続ける一方、次世代バッテリー技術にも投資する方針だ。

また、車両開発ではアウディとの連携を強化する。BEV向けのPPEプラットフォームと、内燃エンジン車向けのPPCプラットフォームを活用し、開発リソースを効率化しながら、それぞれのブランドの個性を維持する。

カスタマイズ事業を拡大し、1台あたりの価値を高める

Porscheが新戦略の基本方針として掲げるのが、「Value over Volume(数量より価値)」だ。

販売台数の拡大を優先するのではなく、1台あたりの付加価値を高めることで、ブランドの独自性と収益性を強化する。

そのために、カスタマイズサービスを大幅に拡充する。とくに、顧客の要望に応じた特別な車両を製作する「Sonderwunsch(ゾンダーヴンシュ)」プログラムを強化し、同事業の売上高を中期的に6倍へと拡大することを目指す。

さらに、最上位モデルの平均販売価格を中期的に約20%引き上げる計画も示した。

今後は、パフォーマンス、エクスクルーシブネス、ヘリテージという3つの領域を「Home of Sports Cars」という名称のもとに集約する。

パフォーマンス分野では、PorscheがManthey Racing GmbHへの出資比率を67%に引き上げる。これにより、パフォーマンスキットやサーキット体験に加え、少量生産のコンプリートカーなどにも事業を拡大する方針だ。

モデル数を絞り込み、収益性の改善を図る

一方、Porscheは事業の効率化にも取り組む。

製品ラインナップについては、モデルバリエーションを約20%削減する計画だ。これにより開発や生産の複雑さを軽減し、モデルバリエーションあたりの販売台数を中期的に約30%増加させることを目指す。

また、収益性の高いDセグメントおよびEセグメントの商品を強化し、ポートフォリオ全体に占める両セグメントの割合を中期的に約45%まで引き上げる方針だ。

事業運営面では、将来のモデルラインの開発コストを最大20%削減するほか、生産部門の人件費を最大30%、販売・流通コストを20%削減する計画を掲げる。

組織の合理化も進められ、従業員代表との間で合意した「フューチャーパッケージ」では、社会的責任に配慮した形で9000人の人員削減を行う一方、中核となる従業員については2035年までの雇用を確保する。

さらに、中期的には管理職ポストを40%削減し、従業員数全体を25%削減する計画だ。

中核事業への集中も進めており、RimacおよびBugatti Rimacの保有株式の売却や、コンサルティング子会社MHPの売却に関する合意なども明らかにした。

こうした施策によって、年間販売台数が20万台未満でも損益分岐点に達する事業構造を目指す。

スポーツカーブランドとしての価値をさらに高める

新戦略では、中期的な財務目標として、グループ全体の売上高営業利益率10〜15%、自動車部門の純キャッシュフローマージン9〜12%を掲げる。長期的には、それぞれ15%、12%を目標とする。

Porsche AG取締役会会長のミヒャエル・ライタースは、新戦略について、すべてのモデルライン、とくに利益率の高いセグメントで魅力的な新型車を投入することにより、Porsche独自のスポーツカーブランドとしての地位をさらに強化する考えを示した。

また、戦略名に採用した「Sportwagenschmiede」には、あらゆるセグメントで最もスポーティな車両を提供するという志に加え、職人技や現実的な考え方、起業家精神を重視する姿勢が込められているという。

新たなスーパースポーツカーの開発や内燃エンジン車の継続、カスタマイズ事業の拡大など、今回の戦略は、ポルシェが今後もスポーツカーブランドとしての独自性を重視する姿勢を示したものといえる。

販売台数の拡大よりも1台あたりの価値を高めるという方針のもと、Porscheがどのような新型車を送り出すのか、今後の展開が注目される。

(Text by 8speed.net Editorial Team / Photos by Porsche AG)
※本記事はプレスリリースをもとに、一部AIツールを活用して作成。編集部が専門知識をもとに加筆・修正を行い、最終的に内容を確認したうえで掲載しています。