前号ではSUV全盛の昨今、「なぜポルシェにPanameraが必要なのか」という考察を書きました。

フェルディナント・ヤマグチでございます。今回は「Panamera GTS」の試乗記です。

4人が乗れて荷物も積めるポルシェならSUVのMacanとCayenneがある。

それを知りつつも、低い着座位置や低重心、スポーツカーに近い運転感覚を手放したくない。

そんな欲張りな人のための“特異なる存在”がPanameraではあるまいか、と。

この考察を踏まえ、今回はPanameraを実際に走らせてみます。

「Panamera GTS」のボディサイズは全長×全幅×全高:5,055×1,935×1,415mm、ホイールベースは2,950mm。

試乗したのはPanamera GTS。4.0リッターV8ツインターボエンジンをフロントに搭載し、最高出力500PS。最大トルクは660Nm。この強大なパワーを8速PDKを介して4輪に伝え、0-100km/hは3.8秒、最高速302km/hというスポーツカー並みの数字を叩き出します。さらに、通常のPanameraから車高を10mm落とし、スタビライザーも強化されています。

「Panamera GTS」に搭載される、4リッター V型8気筒ツインターボエンジンの最高出力500PS、最大トルクは660Nmを発揮。

ちなみに「Porsche Active Ride」は400Vの高電圧電源を必要とするためE-Hybrid系専用。純エンジン車のGTSには装着できず、2チャンバー2バルブ式のエアサスペンション+PASMをGTS用にスポーツチューンされています。

500PSもあれば十分過ぎるほど速いのですが、今のPanameraはこれが最強ではありません。頂点のTurbo S E-Hybridはモーターの助けもあり、最高出力782PS、最大トルクは1000Nm、0-100km/h加速は2.9秒(!)と、バカっ速です。

上には上があるなぁ……とカタログを見て唸るばかりですが、ひとたびGTSを走らせると、その数字の差はさほど気にならなくなる。

「Panamera GTS」の最高速度は302km/h。スピードメーターは350km/hまで目盛られる。

低回転からアクセルを強く踏み込んだときの反応は、無論モーターを積んだ高性能PHEVほど唐突ではありませんが、2000rpmあたりからモリモリと力が立ち上がり、上までイッキに、しかもきれいに伸びる。6000rpmを越えてもまだ先がある。PDKのパドルを使って回転を保ってやれば、実に気持ちの良い加速を味わえます。

適当に踏んでも猛烈に速いのですが、ドライバーが多少の仕事をすればなお速くなる。

パドルを引く。回転を合わせる。さらにアクセルを踏む。すると500PSが俄然生きて来るのです。

車重2トンを超えるクルマとは思えないほどスムーズなコーナリングが味わえる。「さすがポルシェ」と言わざるを得ない。

高速を降りて山道に入る。ここからがPanameraの真骨頂。ブレーキを残してステアリングを入れる。フロントが向きを変えると、車体後半も遅れずに着いてくる。大きく重い物体を、無理矢理曲げている感じがしない。ステアリングが正確で、狙ったラインを取りやすい。さすがポルシェ、と纏めてしまうのは乱暴ですが、やはり「さすがポルシェ」としか言いようがありません。

一方で不満もあります。

まずデカい。このテの大きいクルマを褒める時は、「走り出せば大きさを感じさせない」と書くのが常套手段ですが、デカいものは何をどうしたってデカい(Panamera GTSのボディサイズは全長×全幅×全高:5,055×1,935×1,415mm)。狭い道での擦れ違いにはいちいち気を遣いますし、狙ったラインは取れますが、911のようにヒョイヒョイと向きを変えるクルマでもありません。

21インチ Panamera Turbo S ホイール(センターロック付き)を標準装備。PCCBおよびキャリパーのハイグロスブラック塗装はオプション(146.2万円)。

そして硬い。

腰に響くようなガチガチの足ではありません。Normalモードなら街中でも快適に走れるし、高速道路では落ち着いていて快適です。しかし荒れた舗装や路面の継ぎ目では、21インチのタイヤを通してそれなりの入力が伝わってくる。

ポルシェアクティブサスペンションマネジメント(PASM)が連続的に減衰力を調整し、3つのモードを手動で選択可能だ。

Sportにすると足はさらに引き締まり、山道ではこちらの方が具合がいい。連続するコーナーでも車体の収まりが早く、ステアリングを切り返したときの反応も明確になる。一方、Sport Plusまで行くと公道では些か“やり過ぎ”の感がある。こちらはサーキットのような鏡面路面向きのモードと割り切るべきでしょう。

と、ここまで書いてフト疑問が湧いてきました。

Panameraは4ドア(※リヤゲートも含めると5ドア)のGTカー。911ではありません。果たしてここまで硬くする必要があるのでしょうか。前号で散々書いた通り、このクルマにはリヤシートがある。

家族や友人を乗せ、荷物を積み、長距離を移動するのが主たる目的です。

だからこそ911とは別にPanameraが存在する。それなのに快適性を削って足を締めている。矛盾しているように思えてなりません。リヤタイヤの幅は実に325mmもある。四輪駆動の優秀な制御とも相俟って、乱暴にアクセルを開けた程度ではビクともしない。かなり速い速度でコーナーへ入っても、何事もなかったようにスルッと曲がっていく。見事です。

でも運転そのものを楽しむことが目的なら、911という世界屈指のスポーツカーが同じ店で売っています。うーむ。どうしたものでしょう。

そもそもGTSは、Panameraの“標準解”ではないのかもしれません。

リヤシートの快適性を最優先するなら、もっと穏やかな仕様を選べばいい。絶対的な速さならTurbo S E-Hybridがある。GTSはそのどちらでもなく、Panameraという器を「可能な限りドライバー側へ寄せたモデル」と見ることができましょう。要するに、GTSは万人向けのPanameraではない。

4枚ドアは必要。でもリヤシートの人を最優先するつもりはない。

リアシートには「ポルシェリヤシートエンタテインメント」を装備する(オプション/28.6万円)。

荷物はたくさん積みたい。でもそれと引き換えに運転感覚を鈍らせたくない。

そんなワガママな要求に応えたクルマです。

そう考えると、この硬さにも合点が行く。

しかも現行型のPanameraで、モーターを介さずV8“だけ”で走るのはGTSだけ。

500PSという数字はTurbo S E-Hybridの782PSに比べれば控えめですが、公道では恐ろしいほど速い。回転を合わせ、適切なギアを選んで走らせる余地が残っている分、こちらの方が面白いと感じる人も少なくないと思います。

ご家族をリヤシートへ乗せる機会の多い人にはGTSを薦めません。そういう方にはもっと穏やかなPanameraがあるんのでそちらをどうぞ。

「多少の実用性は欲しい。でもそのために走りを諦める気はない」。

そんなワガママで自分勝手で欲張りな人に、Panamera GTSを強く強く推奨するものであります。

Porsche Panamera GTS 主要諸元

・全長×全幅×全高:5,055×1,935×1,415mm
・ホイールベース:2,950mm
・車両重量:2,100kg
・最高出力:500PS
・最大トルク:660Nm
・トランスミッション:8速PDK
・駆動方式:4WD
・0-100km/h加速:3.8秒
・最高速:302km/h
・タイヤサイズ:前275/35ZR21、後325/30ZR21

(Text by Ferdinand Yamaguchi & Photo by Ferdinand Yamaguchi & Toru Matsumura)