2025年10月17日、Porsche AGは、2026年1月1日付でミヒャエル・ライタース氏を新たなCEOに任命すると発表した。2015年から10年間にわたりポルシェを率いてきたオリバー・ブルーメ氏は、その職をライタース氏に引き継ぎ、今後はフォルクスワーゲングループのCEO専任としてグループ経営に専念する。

ミヒャエル・ライタース氏

10年にわたるブルーメ体制に終止符

ブルーメ氏は2015年にPorsche AGのCEOに就任して以来、数々の重要な節目を指揮してきた。とくに、同社史上初となる株式公開を実現し、電動化時代への転換を主導。さらに、国際市場の拡大とモータースポーツでの成功によって、ポルシェのブランド価値を一段と高めた功績を残した。

オリバー・ブルーメ氏

ブルーメ氏は声明のなかで、「ポルシェの責任者として10年間を過ごしてきましたが、フォルクスワーゲングループのために本年末をもって後任者に職務を引き継ぐことを決断しました」と述べ、経営のバトンをライタース氏に託す決意を示した。また、「スポーツカービジネスで経験豊富なミヒャエル・ライタースがこの役割を担ってくれることをうれしく思います。彼と新しい経営陣には全幅の信頼を寄せています」とコメントしている。

ブルーメ氏は2022年にフォルクスワーゲングループCEOに就任して以降、ポルシェとの兼務体制をとっていたが、グループ全体の再構築が進むなかで、今回の決断に至ったとみられる。

再編と戦略転換を進めた2024年

ブルーメ氏はまた、現在の事業環境について「ポルシェにとって最大の単一市場である米国と中国における大きな変化は、私たちのビジネスモデルに新たな要求を突きつけました」と述べ、2024年には組織再編と製品戦略の刷新に踏み切ったことを明らかにしている。ドライブトレインの多様化とコスト構造の見直しにより、ポルシェは将来の市場変化にも対応できる柔軟な体制を整えたという。

ブルーメ氏は今後もVWグループCEOとして、ポルシェの経営をグループ全体の視点から支援し続けると述べており、完全な決別ではなく、戦略的関係の深化が図られる見通しだ。

フェラーリとマクラーレンを経て、古巣ポルシェに復帰

後任のミヒャエル・ライタース氏は、自動車業界で長年の経験を持つエンジニア出身の経営者だ。フェラーリで8年以上にわたりCTO(最高技術責任者)を務めた後、2022年7月からはマクラーレン・オートモーティブのCEOを務めてきた。その前には13年以上ポルシェに在籍し、「Macan」や「Cayenne」シリーズの開発を率いた経歴を持つ。

つまり、ライタース氏にとってポルシェへの復帰は“古巣への帰還”でもある。SUVの技術開発を通じてブランドの成長を支えた人物が、今度は経営トップとして再びその舵を握ることになる。

「技術とリーダーシップの両立」へ期待

Porsche AG監査役会会長のヴォルフガング・ポルシェ氏は、「ミヒャエル・ライタース氏は自動車業界で数十年にわたる経験を積んでいます。彼のリーダーシップと深い専門知識は、Porsche AGの取締役会議長として成功を収めるための理想的な前提条件です」とコメント。監査役会として、現在の課題を克服し次の成長段階に導くことができると確信していると述べた。

ライタース氏の就任は、ポルシェにとって技術主導のブランド戦略をより一層強化する契機となりそうだ。電動化・デジタル化・サステナビリティという業界全体の課題に対し、エンジニアとしての現場感覚を持つ新CEOがどのような方向性を示すのか注目される。

次章に向けた“世代交代”の完了

ブルーメ氏は以前から、取締役会の世代交代を長期的・戦略的に準備していたとされる。今回のライタース氏の就任は、その流れを受けての自然な移行といえる。

10年間のブルーメ体制でポルシェは過去最高の業績を記録し、電動化戦略の礎を築いた。その成果を受け継ぐライタース新体制のもと、ポルシェは「変革と成長の両立」という次のステージへと進む。

(Text by 8speed.net Editorial Team / Photos by Porsche AG)
※本記事はプレスリリースをもとに、一部AIツールを活用して作成。編集部が専門知識をもとに加筆・修正を行い、最終的に内容を確認したうえで掲載しています。