ポルシェAGは2024年1月25日、フル電動化された新型「Macan」を発表した。今回は「Macan4」と「Macan Turbo」のワールドプレミアとなる。

Macanは発売から10年を経て、フル電動モデルの第2世代となった。最高出力470kW(639PS)のパワートレインを搭載した第2世代のMacanは、あらゆる路面でEパフォーマンスを発揮し、270kWの高性能急速充電と613kmの航続距離(WLTP)を実現している。

ルシェAG取締役会会長のオリバー・ブルーメ氏は、シンガポールのワールドプレミアにおいて「卓越したEパフォーマンス、新しいドライバーエクスペリエンス、そして非常に印象的なデザインによって、Macanをまったく新しいレベルに引き上げます」と述べた。

Macan製品ライン担当のイェルク・ケルナー氏も「当社の目標は、フル電動化されたMacanによって、このセグメントでもっともスポーティなモデルを提供することにあります」と述べた。

新型Macanはフロントとリアのアクスルに最新世代の永久励磁型PSM電気モーターを採用。ローンチコントロールとの組み合わせにより、Macan4は最高出力300kW(408PS)のオーバーブーストパワーを発生、さらにMacan Turboは最高出力470kW(639PS)を誇る。なお、最大トルクはそれぞれ650N・mと1,130N・mとなる。また静止状態から100km/hまで、Macan4は5.1秒、Macan Turboは3.3秒で加速し、最高速度はそれぞれ220km/hと260km/hに達する。

800Vアーキテクチャーを備えた新開発のプレミアムプラットフォームエレクトリック

電気モーターは、アンダーボディに搭載された総容量100kWhのリチウムイオンバッテリーからエネルギーを取り出し、そのうち最大95kWhをアクティブに使用することが可能だ。HVバッテリーは、ポルシェが新型Macanで初採用した、800Vアーキテクチャーを備えた新開発のプレミアムプラットフォームエレクトリック(PPE)の中心コンポーネントにあたる。

DC充電出力は最大270kWで、このバッテリーは適切な急速充電ステーションで約21分以内に10%から80%まで充電することが可能だ。400Vの充電ステーションでは、バッテリー内の高電圧スイッチにより、800Vのバッテリーを定格電圧400Vの2つのバッテリーに効果的に分割することでバンク充電が可能。これにより、HVブースターを追加することなく、特に効率的な最大135kWの充電を実現。また、家庭用充電器では最大11kWのAC充電が可能だ。

走行中には電気モーターを介して最大240kWのエネルギーを回生する。インテグレーテッドパワーボックス(IPB)も、軽量化と省スペース化を実現しながら電動化されたMacanの効率性に寄与している。このIPBは、オンボードACチャージャー、高電圧ヒーター、DC/DCコンバーターの3つのコンポーネントを組み合わせている。複合航続距離(WLTP)は、Macan4で最大613km、Macan Turboで最大591kmとなっている。

新型Macanのスタイリングについて

スタイルポルシェ責任者のミヒャエル・マウアー氏は「フル電動Macanによって、確立された製品アイデンティティーを電気自動車に引き継ぐ初のポルシェを発表します。新型Macanは、ポルシェの製品ファミリーの一員であることを、そのブランドアイデンティティーによって明確に認識することができます。ポルシェの伝統的なプロポーションはさらに進化し、電気自動車の課題に最適に適合しています。これにより、Macanのスポーティ、モダン、ダイナミックな外観がさらに強調されました。このデザインは、Macanが電気自動車であっても、このセグメント随一のスポーツカーであり続けることを明確に示しています」と述べている。

ボディサイズは全長4,784mm、全幅1,938mm、全高1,622mm。また新型Macanには最大で22インチのホイールが装着される。ホイールベースは先代モデル(2,893mm)より86mm長い。

アクティブおよびパッシブエアロダイナミクスによる航続距離の延長を実現

新型Macanは、アクティブおよびパッシブエレメントを採用して空気抵抗係数を0.25に抑えた「ポルシェアクティブエアロダイナミクス(PAA)」により、航続距離と消費電力にプラスの効果をもたらしている。

PAAシステムには、アダプティブリアスポイラー、フロントエアインテークのアクティブクーリングフラップ、完全に密閉されたアンダーボディのフレキシブルカバーが含まれる。ヘッドライトモジュール下のエアカーテンと低く構えたフロントエンドが、空気の流れを最適化する他、リアでは、横方向のティアオフエッジとルーバー付きディフューザーが空力効率を確保する。

2つのラゲッジコンパートメントと拡大された室内スペースを実現

新しいMacanは電動化によってラゲッジスペースが拡大されており、リアシートベンチ後の容量は最大540リッター(カーゴモード)、さらに、ボンネットの下には「フランク」と呼ばれる容量84リッターのセカンドラゲッジコンパートメントが用意されている。その結果、先代モデルを127リッター上回る容量を確保。リアシートの背もたれを完全に倒すと、リアラゲッジコンパートメントの容量は最大1,348リッターに拡大。また、最大けん引性能は2,000kgを実現している。

モデルや装備に応じて、運転席と助手席は従来よりも28mm低く、後部座席は15mm低くなり、足元スペースが増加。また、最新のデジタルユーザーインターフェースに加え、吹き出し口やエアコンのスイッチ類など、アナログのコントロールエレメントも残されている。さらに、LEDライトストリップが、コックピットとドアのトリムストリップに組み込まれており、アンビエント照明やコミュニケーションライトとして機能する。状況に応じて、挨拶、充電プロセス、ドライバーアシスタンスシステムとの連携など、情報や警告も伝えることが可能だ。

最大3つの画面を備えたディスプレイを装備

新型Macanには、曲面デザインの12.6インチ自立型インストルメントクラスターと10.9インチセンターディスプレイを含む、最大3つの画面を備えたディスプレイと操作コンセプトが装備される。また、オプションの10.9インチディスプレイを介して、走行中の乗員によるインフォテインメントシステムの情報の閲覧、設定の調整、ビデオコンテンツのストリーミング再生も初めて可能となった。ポルシェドライバーエクスペリエンスには初めて、AR(拡張現実)技術によるヘッドアップディスプレイも装備される。

新世代のインフォテインメントシステムは、Android Automotive OSをベースにしています。標準装備されたポルシェコミュニケーションマネジメント(PCM)は、“Hey Porsche”音声アシスタントを使うことで、充電ステーションを含むルートを瞬時に提案する。また、新しいポルシェアプリセンターでは、サードパーティプロバイダーの人気アプリに直接アクセスし、Macanに直接インストールすることが可能だ。

リアアクスルステアリングと2バルブダンパーを備えた新型Macan

イェルク・ケルナー氏は「新型Macanは、特にスポーティなシートポジションと低重心、そして印象的なドライビングダイナミクスとステアリング精度によって本物のスポーツカー感覚を実現しています」と説明する。

Macan4とMacan Turboの駆動方式はともに4WD。2つの電気モーターは、パワーエレクトロニクスを介してほぼリアルタイムに制御される。また電子制御ポルシェトラクションマネージメント(ePTM)は、従来の4WDシステムの約5倍の速さで作動し、10ミリ秒以内にスリップに対応することが可能だ。さらに、4WDの配分は選択されたドライビングプログラムによって制御される。リアアクスルの電子制御式ディファレンシャルロックであるポルシェトルクベクトリングプラス(PTV Plus)も、Macan Turboのトラクション、走行安定性、横方向のダイナミクスに貢献する。

Macanのエアサスペンション仕様車(ターボに標準装備)には、ポルシェアクティブサスペンションマネジメント(PASM)電子制御ダンピングコントロールが装備される。さらに、オプションでスチールスプリングサスペンションとの組み合わせも可能だ。PASMには、2バルブ技術を採用したダンパーも装備される。

また、Macanでは初となる、最大操舵角5度のリアアクスルステアリングがオプションとして用意される。市街地走行や駐車時に11.1mというコンパクトな回転径を実現すると同時に、フロントアクスルステアリングによって、高速走行時の卓越した走行安定性を可能にする。

日本国内における新型Macanの予約受注開始日および価格、仕様等は決まり次第発表する予定だ。

(Text Toru Matsumura)