トランスアクスルV8を完成させたポルシェ928 GTS。ポルシェ928 GTSは、GTシリーズの最終進化系である。“Classic of the Day!!!”

GTS(グランツーリスモ スポーツ)という略称は、「ポルシェ928」の開発最終段階を見事に表現している。ドライビングマシンとしてではなく、高性能ツーリングカーとして開発された。品質と仕上がりは最高レベルだ。

※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。

縦置きV8は5.4リッター、350馬力。最高速度は275km/hだった。ベンチレーションのスラットにまでレザーベルトが施されている。

V8エンジンはポルシェ928を楽々と操る

速く走りたいなら、「ポルシェ928 GTS」がふさわしい。1.6トンの重量は、アクセルを踏み込んでも重いと思うことはほとんどない。5.4リッターV8エンジンは350馬力の最高出力と500Nmの最大トルクを発揮した。

3,000rpmから、ポルシェは力強く加速していく。我々が誕生20年を記念して2012年に行った比較テストでは、「ポルシェ928 GTS」の最高速度275km/hを記録した。

速さと軽快さは気の遠くなるようなものだ。振動もなく、エキゾーストシステムからの轟音もなく、ただ尽きることのない推進力・・・。

これでシャープさが足りないなら、「GTS」より「S4クラブスポーツ」の方がいいだろう。しかし、その話はまた次の機会にでも語ろう。

残念なことに、名車「ポルシェ928 GTS」は、ポルシェは「911しかない」と固く信じるポルシェ愛好家からの支持を得ることができず生産を終了する。

ポルシェ928GTSで本当に快適なのは2人だけ。結局のところ、これは正真正銘のスポーツクーペなのだ!

スポーツカーの実用的な才能とはこういうものだ

現在でも「928 GTS」に妥協はない。しかも、実用性にも事欠かない。快適に移動できるのはせいぜい大人2人だが、シートを倒せばトランクには理論上ユーロパレットを積むことができる。

それほど背の高くないドライバーは、見通しが良くないため狭い駐車場では苦労するだろう。「928 GTS」は現行の「ポルシェ911」より全然大きいのだ。

購入検討者にとっての問題点:エンジニアの高い基準と細部へのこだわりが、メンテナンスコストの高さにつながっている。愛好家に言わせれば、スペースシャトル(928のこと)用のスペアパーツが稀少で高価なのだそうだ。

しかし、近い将来、カイエンからもV8モデルがなくなり、今後V8ポルシェが生まれる可能性は極めて低いことを考えれば、いかにこの「928」が希少で貴重な1台であるかを感じることができるのは私だけではないだろう。

大林浩平:以前にも記したが、僕は928が好きである。その当時は古ぼけたカエルのように見えた911と比べ、宇宙船のようにスマートで、ステアリングと連動してメーターパネルごとチルトするステアリングホイールを持った未来的な内装、そして圧倒的なパフォーマンス・・・。ヴァイザッハという名前を覚えこまされたのも「ヴァイザッハアクスル」という4WS機構を持った928のサスペンションによって、である。そしてポルシェの開発陣も、もう古くさくてうるさくて超高速領域では不安定になっちゃう911を引退させ、この928や944の延長線上にあるような、クールでスマートなアウトバーン超特急を作るメーカーになりたかったのではないだろうか、と予測する。

そもそも928の仮想敵にされたのはメルセデス・ベンツ450SLC 5.0やSEC、あるいはBMW633 / 635CSiといった4座のラグジュアリー高性能クーペだったはずで、こてこてのスーパースポーツになろうとしていたのではない。その証拠に928は狭いながらも4シーターだし、最初からトルクコンバーター式のオートマチックトランスミッションをラインナップモデルに持っていた。ポルシェの狙いとしては、高速で快適に移動するアウトバーン超特急であって、決して純粋なスポーツカーを作ろうとしたのではないことは明白である。

だから今回は928GTSが主題ではあるけれど、僕は普通の(最初期の)928か、928Sくらいまでが本来の魅力を持っているモデルであって、あまりハードに振って欲しくない、そんなモデルでもある。

そんな928が出演した(?)映画やテレビドラマなどで、僕が今でも一番似合っていたと思うのは、「パパはニュースキャスター」で、田村正和演じる、イケメンで、プレイボーイで、バリバリ仕事と恋をこなすキャスターが乗っていたのが928であった。ちょっとクールでスマートに都会を疾走するシーンは絶妙で、これこれ、928はこう使われなくっちゃと、928ファンとしては溜飲を下げたものである。

その少し前には松本 隆先生が928を愛用し、ソニーレコードのスタジオ裏手の路地を爆走していたとも聞くが、確かに都会と928というのは妙に似合うシチュエーションではないか。

だが928は登場した直後から、「こんなのポルシェに見えない」というポルシェファンから総スカンを食らい、どこから見てもポルシェに見える911の延々と続くサーガに席を譲り、販売を中止に追い込まれてしまうのだが、実は928は18年という長きにわたり作られ、その間延々と改良に改良を積み重ねて生産された逸品でもあった。

その証拠にフェリー ポルシェの75歳の誕生日には「ドクターズカー」と呼ばれる、ワンオフの928をベースにしたシューティングブレークのような車を会社から贈られている。決して911のカブリオレのアンテナに風船などがつけられたプレゼントではなく928であったことは、特記すべきでもあるし、928の彼方にこそポルシェの技術と先進性の未来があったと開発陣は思っていたのではないだろうか。

928の逸話の中で僕がいつも思い出すのは、カーグラフィック誌で928Sに試乗した熊倉氏の記述である。タイシタモンだ、とつぶやきながら彼が記した記事の中に、「911から928に乗り換えたオーナーがいたが、つまらなくなってすぐに売却した人がいた。ミツワのYメカニックがオヤオヤと思い、928の技術的な説明をその人に話すと『売らなきゃよかったかなぁ』と、928をもう一回新車で買いなおしてくれた(要約)」という一文で、928というのはそういう裕福な人が、さらっと購入しスマートに乗りこなす超特急、というイメージを、僕はその記事を読んだ瞬間からずっと抱き続けているのである。

それにしても登場した当初は、特に幅がものすごく広く、超高性能に思えた928も、今となっては1836mmの幅も、出た当初は230馬力のパワーも特に驚くほどの数値ではない。タイヤに至っては16インチと、ポルシェ992が見たら、「おじいちゃん、ずいぶん小さい靴履いてるねぇ」と言われちゃいそうなサイズだ。でもそれは今の自動車が過剰に大きく立派になっている、ということではないだろうか。いつの間にか人間では追いつかないほどの性能を持ち、過剰に過剰を重ねるほどの重さと大きさを持つようになってしまっている、928のスペックを改めて見直しながらそんなことを改めて認識した次第である。

(Text by Lars Hänsch-Petersen / Photos by Roman Raetzke / AUTO BILD)