最近、自動車雑誌やWeb、あるいは友人・知人が所有するクルマなどで目にする機会が増えつつある「ペイントプロテクションフィルム」。フロントバンパーなどにヒットする飛び石からボディを守る透明のフィルム?くらいの知識はお持ちかもしれない。

ポルシェ 911(992)にXPELペイントプロテクションフィルムを施工中。絶妙な力加減と専用液剤により、少しずつボディにペイントプロテクションフィルムをなじませていく

たしかにその解釈は正しい。しかしそれは「ペイントプロテクションフィルム」が持つ役割のひとつにすぎない。

1996年にアメリカで創設したXPEL,INC社が提供する「ペイントプロテクションフィルム(PPF)」と呼ばれるペイントプロテクションフィルムが日本市場で評価され、最新のスーパースポーツモデルや高級車オーナーを中心に支持を広げている。

今回、2回に分けて「XPELペイントプロテクションフィルムとは?」そして「XPELペイントプロテクションフィルムの強みとは?」といった切り口でこの製品にスポットライトを当ててみたい。

それぞれの記事に目を通していただくことで、ペイントプロテクションフィルムに関する理解と、知識を深める一助になれば幸いだ。

XPELペイントプロテクションフィルムのルーツとは?

XPEL(エクスペル)ペイントプロテクションフィルムのルーツは、ヘリコプターのローターやキャノピーなどを保護する「軍事用」だった。この機能を活かし、紫外線や酸性雨、飛び石などによるキズからクルマのボディの塗装面を保護するペイントプロテクションフィルムへと進化させたのが、1996年にアメリカ・テキサスで創設されたXPEL,INC社というわけだ。

XPEL社のペイントプロテクションフィルムは、自動車の分野に留まらず、船舶やオフィス・商業施設・住宅向けなど、幅広い分野において転用が可能であり、それぞれのジャンルに特化した製品が開発・製品化され、現在も進化を続けている。

アメリカでは新車を購入したら「クリアノーズブラ」がマストアイテム?

アメリカでは、新車を購入したらボディに「クリアノーズブラ」を貼るという文化が根付いている。クリアノーズブラ……それはつまり、クルマのフロントマスクにペイントプロテクションフィルムを施工することを意味する。

かつて、日本でも流行した「ノーズブラ」の存在を憶えているクルマ好きがいるだろう。このカー用品の進化版が「クリアノーズブラ」というわけだ。

広大なアメリカ大陸では、日本では考えられないような長距離移動も珍しくない。さらに、日本のように道路が整備されていないエリアも少なからず存在する。日本とアメリカ、同じように時速60km/h(約37マイル)で走行した場合、飛び石が愛車を直撃する確率は後者の方が圧倒的に高い。もはやボディコーティングでは、その頻度やダメージの深さを防ぎきれない。そこで、より皮膜が厚い「クリアノーズブラ(ペイントプロテクションフィルム)」が威力を発揮するというわけだ。

バンパーやボンネットのエッジなど、複雑に曲線が絡む箇所の施工はまさに職人技だ

ペイントプロテクションフィルムとカーラッピングは別モノ

意外と混同されることが多い「ペイントプロテクションフィルムとカーラッピング」。これはまったくの別モノと理解する必要があるだろう。

要約すると

・ペイントプロテクションフィルム:愛車の保護(用途に応じてフィルムに付加されている機能が異なる)
・カーラッピング:イメージチェンジ(全塗装に近い考え方)

となり、双方の役割が異なることが分かる。

XPELペイントプロテクションフィルムの「自己修復機能」とは?

XPELペイントプロテクションフィルムが類似製品と異なる点は、XPEL,INC社が2011年に発表した世界初となる自己修復機能を持ったペイントプロテクションフィルム「ULTIMATEシリーズ」の存在が挙げられる。

XPELペイントプロテクションフィルムのデモンストレーションを体感。ワイヤーブラシでフィルム表面にキズをつける

この製品は、軽度のキズや虫害、鳥の糞、花粉、黄砂、雨染みなどからオリジナルの塗装面を保護するだけではなく、気づかないうちに発生してしまう洗車キズ、そのほか飛び石などによるダメージをフィルム自身が修復するという。

事実、取材中に「ULTIMATEシリーズ」のデモンストレーションを体感したが、鉄ブラシでフィルム表面にキズをつけたあと、ヒートガンで熱を加えたらみるみるうちにキズが消えていった。

その後、ヒートガンで熱を加えるとみるみるうちにキズが消えていく!本当に自己修復してしまった

これは約60度の熱を加えることで自己修復する機能とのことで、機械洗車でついたキズ程度であれば、気温の高い時期に屋外駐車していればあっという間に消えてしまうだろう。

自動車メーカーで純正採用されるXPELペイントプロテクションフィルム

こだわりを持つオーナーによっては「純正品以外は認めない」という考えの人もいるだろう。しかし、その点は安心していいだろう。なぜなら、ポルシェやマクラーレン、ジャガーおよびランドローバー、そしてアストンマーティンの一部のモデルは、メーカーの工場のラインでXPELペイントプロテクションフィルムが施工され、ユーザーにデリバリーされている。

また日本国内においても、一部のレクサスディーラーでオプション品として採用されており、XPELペイントプロテクションフィルムの品質の高さが想像できるはずだ。

XPELペイントプロテクションフィルムを施工したクルマにはこちらのステッカーが貼られる。これ自体がステータスシンボルとなっている

機械洗車もok!愛車のボディが常に保護されているという絶大な安心感

バンパーやボンネット、左右のリヤフェンダーなどに多数の飛び石などによるキズが目につくクルマがある。「走り屋の勲章」とされ、それなりの速度域で走らせた時間と距離が長いことの裏付けでもある。

これはこれでクルマとして正しい使い方であるし、美しい姿といえるだろう。だがその一方で、大切な愛車でドライブしたい、サーキットなどで思い切り走らせたい。しかし、飛び石をはじめとするキズがつくことは避けたいと考えるオーナーも存在する。

まして、資産という視点でクルマを見たとき、キズの多さが売却時にマイナスとなることは避けられない。大多数のユーザーの心理として「中古車を手に入れるならば、走行距離が少なく、コンディション良好な個体を手に入れたい」のが本音だからだ。

また、住環境やオーナーの置かれた立場によっては「手洗い洗車をしている時間や場所がない」というケースも少なからずあるだろう。都市部などではガソリンスタンドの数が減り、その結果、手洗い洗車が2時間待ちという事態も少なくない。

『天候や走行シーンなどの外的要因を気にすることなく愛車を堪能し、なおかつ磨きキズや飛び石、紫外線からボディを保護する』という、オーナーの相反する要望を叶えることができるのがペイントプロテクションフィルムというわけだ。

XPELペイントプロテクションフィルムの端材を用いて伸縮性の度合いを見せてもらった。伸ばすことは容易だが、手で切ることは不可能なほどしっかりとした作りだ

この有用性を知ってしまうと、クルマを乗り換えたときの必須アイテムとなってしまうという。いちどでも愛車にボディコーティングを施工したことがあるオーナーであれば、自身の愛車が未施工のままだとモヤモヤする……。そんな経験はないだろうか。まさにこれと同じ心理だ。ペイントプロテクションフィルムは、オーナーに心理的安心感を与えてくれるのだ。

加えてコーティングは液剤をボディ表面に塗り広げて施工するが、こちらは文字どおりプロテクション「フィルム」だ。皮膜の厚みが圧倒的に違う。

ただし、そんなペイントプロテクションフィルムにも避けてほしいことがある。それは「高圧洗浄機を用いた洗車」だ。高圧洗浄機による高い水圧がペイントプロテクションフィルムに強い負荷をかけることで、ボディとの接着面にすき間ができる可能性があるという。その結果、すき間からゴミやホコリが侵入し、ペイントプロテクションフィルムがはく離したり、ボディ本体をキズつけることもあるという。この点は注意すべきポイントだ。

次回は「ペイントプロテクションフィルムの強みとは?」と題して、ペイントプロテクションフィルムならではの性能や強みに関する記事を予定している。

■XPEL JAPAN
企業名:エクセルフィルム株式会社
住所:〒252-0132 神奈川県相模原市緑区橋本台1丁目9-7
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(Text & Photos by Toru Matsumura)