フェルディナント・ヤマグチでございます。最新のポルシェ911カレラ・カブリオレに乗る機会を得ましたので、今回はそのレポートを。

「なるべく素の911に乗りたい」とポルシェジャパンにリクエストを出したのですが、なにしろ現行の911である992型の発売から既に5年が経過していますからね。何も“役”が乗っていない、所謂“素のポルシェ”の試乗車が用意されていない。そこで「もっとも素に近いクルマ」ということでご用意いただいたのが、このカブリオレだった、という訳です。

「なるべく素の911に乗りたい」というリクエストに対するポルシェジャパンの回答はこちらのカブリオレ。

せっかくのカブリオレですから、可能な限り屋根を開けて走らなければもったいない。

ということで早速開けてみましょう。油圧シリンダーで作動するソフトトップの開閉は、スイッチを押してから僅か12秒で完了します。しかもこれが時速50km/hまでなら走行中でも作動する。ひと目の多いところでイキりたい、目立ちたがり屋の貴兄もこれなら大満足。

私も地元の駅前でオラオラと試してみたのですが、こういう時の周囲の反応がまた実に興味深い。家族を駅に迎えに来ているのでしょうか、何台かの輸入車組(具体的にはAUDI A5、メルセデス・ベンツEクラスセダン、同じくGクラス)は一瞬チラッと見た後、決してこちらを見ようとしません。「見たら負け」と思っているのでしょうか。

国産車のお迎え組は口をあんぐりと開けて素直に視線を送る。そして客待ちのタクシーはいかにも不快そうな目で見ています。「こっちは仕事なのに、チャラチャラしやがって……」というところでしょうか。

街中をノンビリ流して環状八号線へ。幹線道路に出て速度を上げても、風の巻き込みは極小で、髪が乱れることはありません。用賀から東名に入り、いよいよ時速100km/hの世界へ。
オープンとクローズドボディのクルマは、高速領域で見えてくる景色がまったく違うのです。
まず“速度感”が違う。オープンはクローズドの何倍も“速く”感じます。
そして当たり前ですが“景色”が違う。追い抜くクルマ、特にトラックなどの背の高いクルマをパスするときの圧迫感が文字通り桁違いに違うのです。
そしてこの“違い”がオープンの得も言われぬ開放感と爽快感に繋がるのです。

オープンの状態で高速道路を走ると、見えてくる景色がクーペモデルでは味わえない"別世界"であることもカブリオレの魅力。

高速道路をフルオープンで走るとさすがに風の巻き込みが始まりますが、窓を閉め、座席後部のウインドディフレクターを立てれば風の流入はピタリと止まります。簡易な膜一枚で、ここまで風の流れが変わるものかと驚嘆します。さすがポルシェ。本当によくできています。

御存知の通り、オープンボディのクルマは屋根で剛性を作ることができないので、Aピラーから下側で剛性を作り込まなければなりません。その分、車重が重くなる。
911でもそれは同じで、ノーマルのカレラと比べると70kgほど重くなっています。

70kg……。スポーツカーにとっては、かなりのハンディです。しかしその分、ボディはしっかりと作り込まれておりまして、ワインディングを攻めてもクーペの911と比べても何ら遜色のない走りを楽しめます。いいなぁポルシェ。乗ったクルマを片端から欲しくなってしまいますホント。でもデートした女性と片端から結婚する訳にも行きませんからね。難しいところです。

あ、女性で思い出しましたが、実は今回妙齢女性と一緒にドライブデートに出かけるはずだったのですが、直前に「手足口病に感染して死にそう」と泣きのメールが入り、一人寂しい試乗となっております(編集部補足:「手足口病は、口の中や、手足などに水疱性の発疹が出る、ウイルスの感染によって起こる感染症です。子どもを中心に、主に夏に流行します。」※厚生労働省のホームページより抜粋)。

なんでも4歳になるお子さんから感染したらしいのですが、大人になっても手足口病って伝染するんですね。なにか密かに流行中らしいですから、読者諸兄もお気をつけください。ものすごく痛いらしいです。

(Photo & Text by Ferdinand Yamaguchi)