ポルシェのフル電動スポーツカー「タイカン」のなかから、最強のトップパフォーマンスグレード「タイカン ターボS」を試乗、その圧倒的な加速を体感した。

東京・港区の虎ノ門ヒルズにある、ポルシェの電気自動車オーナー向けの急速充電施設「ポルシェターボチャージングステーション」にて。

日本でも「Audi e-tron GT」が発売になり、8speed.netでもハイパフォーマンスモデルの「Audi RS e-tron GT」を試乗することができた。そうなると気になるのは、同じJ1プラットフォームを採用するポルシェ タイカンの走り。そこで、タイカンのトップグレードであるタイカン ターボSを借り出してみることにした。

このタイカン ターボSは前後2基のモーターにより、最高出力460kW(625PS)、ブースト時には560kW(761PS)を発揮するモンスター。Audi RS e-tron GTの475kW(ブースト時)がかすんでしまうほどだ。0-100km/h加速は、Audi RS e-tron GTの3.3秒に対して、さらにコンマ5秒も速い2.8秒をマークするという。

Audi RS e-tron GTとはまるで異なるエクステリアデザインにより強い存在感を放つタイカンだが、インテリアデザインも大きく異なる。メーターパネルには、ポルシェらしい丸形3連メーターが備わることに加えて、物理スイッチが極力排除されているおかげで、より先進的に見えるのだ。

そうなると、使い勝手が心配になるが、走行中によく使うスイッチ(サスペンションの設定や車高調整など)がメータークラスターのスイッチで操作できるのでむしろ便利。エアコンはタッチパネルで操作するタイプで、エアコンの吹き出し口が調節できないのは驚いたが、実際に使ってみるとほぼクルマまかせで済む出来の良さで、使いにくさに苛立つことはなかった。

まずは「ノーマル」で走り出すが、Audi RS e-tron GTによりも乗り心地が良いことに驚く。以前試乗したAudi RS e-tron GTにはオプションの21インチタイヤが装着されていたが、このタイカン ターボSにも同じサイズで同じブランドのタイヤを履いていた。サスペンションの設定がしなやかなうえに、タイカン ターボSには標準でポルシェ セラミックコンポジット ブレーキ(PCCB)が奢られるからか、バネ下重量が軽い印象なのだ。

やや強めのクリープにより動き出したところで、軽くアクセルペダルを踏んでやると、2380kgのボディは軽々と加速を始める。アクセルペダルをあまり踏み込まなくても十分なトルクが得られるタイカン ターボSは、軽く丁寧にアクセルペダルを操作するかぎりは、実に上質なスポーツセダンという振る舞いである。

アクセルペダルから足を離すと、クルマはコースティング(惰力走行)を行う。一方、ステアリングホイールの左スポークにあるスイッチにより回生ブレーキを効かせる設定に変更することも可能。ただ、アクセルオフ時の回生ブレーキはさほど強くなく、いわゆる“ワンペダル”操作に対応していないのはAudi RS e-tron GTと同じである。

アクセルペダルを深く踏み込んだときの加速は圧巻。ノーマルモードでも鋭い加速を見せるが、スポーツモードなら上体がシートに押しつけられるほど。さらにスポーツプラスを選べば、ガツンと衝撃を受けるほどの過激さだ。

そのパワーを受け止めるべく搭載されたPCCBの制動力も安心のひとこと。ハンドリングの軽快さも期待以上で、低い重心と高いタイヤの接地感を確かめながら、ステアリング操作に間髪入れずすっと向きを変えるさまは、まさにポルシェのスポーツカーである。

Audi RS e-tron GTよりも過激な性能を秘めながら、ワンランク上のスポーツセダンとしての顔を併せ持つタイカン ターボS。そのオールマイティぶりにはただただ感心するばかりだ。

(Text & photos by Satoshi Ubukata)