2026年9月7日、Audiは新型電気自動車「Audi A2 e-tron」を発表した。かつて独創的なパッケージングと高い効率を追求したAudi A2の名が、電気自動車として復活する。

新型Audi A2 e-tronが掲げる大きなテーマは「効率」だ。最も効率に優れる仕様ではWLTP電費12.8kWh/100kmを達成し、Audiの量産車として過去最高を記録。最大航続距離は646kmに達する。

ドイツで開発され、Audiの本拠地であるインゴルシュタット工場で生産。欧州では2026年9月10日に受注を開始し、12月からデリバリーが始まる予定だ。ドイツでの価格は3万8200ユーロからとなる。

4つのグレードと3種類のバッテリーを用意

Audi A2 e-tronを理解するうえで、まず押さえておきたいのがグレード構成だ。

ラインアップはモーターの最高出力によって「Audi A2 e-tron 125kW」「Audi A2 e-tron 140kW」「Audi A2 e-tron 170kW」「Audi A2 e-tron 240kW」の4種類に分かれ、それぞれに組み合わされるバッテリー容量も決まっている。

Audi A2 e-tron 125kWには52kWh、Audi A2 e-tron 140kWには61kWh、Audi A2 e-tron 170kWとAudi A2 e-tron 240kWには84kWhのバッテリーを搭載する。

つまり、出力とバッテリー容量を自由に組み合わせるのではなく、用途や求める性能に応じて4つのグレードから選ぶ構成だ。

125kW、140kW、170kW仕様の最大トルクはいずれも350Nmで、最上位の240kW仕様は545Nm。0-100km/h加速は順に8.8秒、7.9秒、7.0秒、5.7秒となる。最高速度は125〜170kW仕様が160km/h、240kW仕様が200km/hだ。

モーターには出力に応じて最新世代の永久磁石同期モーター「APP350」または「APP550」を使用。パワーエレクトロニクスにはSiC(シリコンカーバイド)半導体を採用し、変換損失を抑えている。

駆動方式は全車後輪駆動。Audiは、加速時の荷重移動を生かして高いトラクションを確保できることに加え、駆動力がステアリングに影響しないことをメリットとして挙げている。

LFPとNMC、2種類のバッテリーを使い分け

3種類のバッテリーは容量だけでなく、セルの種類も異なる。

52kWhと61kWhのバッテリーにはLFP(リン酸鉄リチウム)セルを使用し、セルを直接ハウジングに組み込む「セル・トゥ・パック」構造を採用。一方、170kWと240kW仕様に搭載する84kWhバッテリーにはNMC(ニッケル・マンガン・コバルト)セルが使われる。

一般にLFPバッテリーはNMCバッテリーに比べてエネルギー密度が低い一方、熱安定性が高く、安全性や耐久性、コスト面でメリットがある。また、高い充電率での使用にも比較的強く、日常的に100%まで充電しやすいのも特徴だ。

一方のNMCバッテリーはエネルギー密度が高く、限られたスペースにより多くのエネルギーを搭載できる。Audi A2 e-tronでは、52kWhと61kWhにLFP、より大容量となる84kWhにNMCという使い分けがなされている。

WLTP航続距離は、52kWhのAudi A2 e-tron 125kWが最大423km、61kWhの140kWが最大515km。84kWhを搭載する170kWは最大646km、240kWは最大630kmとなる。

なかでも注目されるのがAudi A2 e-tron 140kWだ。オプションの「efficiency package」を装着した仕様では、WLTP電費12.8kWh/100kmを実現。Audiによれば、これは同社史上最も効率に優れた量産モデルとなる。

DC急速充電の最大出力は、125kW仕様が100kW、140kW仕様が105kW、170kWと240kW仕様が183kW。バッテリー残量10%から80%までの充電時間は、それぞれ24分、26分、29分、29分としている。

「効率」を軸に開発されたコンパクトEV

Audi A2 e-tronでは、単に大容量バッテリーを積んで航続距離を延ばすのではなく、車両全体の効率を高めることに重点が置かれた。

その象徴が空力性能で、Cd値は0.24とAudiのコンパクトモデルとして過去最高を記録する。

Audi A2 e-tronのボディサイズは、全長4320×全幅1790×全高1550mm、ホイールベース2770mm。全長4.3mほどのコンパクトなボディながら、ショートオーバーハングと長いホイールベースを組み合わせることで、広い室内空間を確保している。

通常の高速走行時には閉じる可変式冷却エアインテークや、ほぼ全面を覆ったアンダーボディ、専用エアロホイールなどによって空気抵抗を低減する。

さらにホイールアーチには、タイヤとホイールハウスの隙間を狭める「ギャップリデューサー」を組み込み、ホイール周辺の乱流を抑制。こうした細かな空力対策の積み重ねが、低いエネルギー消費につながっている。

初代A2を彷彿とさせるシルエット

エクステリアは、効率を重視しながらAudiらしいデザインにまとめられた。

フロントでは、運転支援システム用センサーとメインヘッドライトをブラックパネル内に収め、その上に細身のデイタイムランニングライトを配置する。

Aピラーからルーフへと滑らかにつながるアーチ状のシルエットもAudi A2 e-tronの特徴だ。ルーフは後方に向かって緩やかに下降し、最後はスポイラーへとつながる。空気をきれいに剥離させる機能的な形状だが、そのプロポーションにはかつての初代A2を思い起こさせるところもある。

リヤには横方向に伸びるLEDライトを採用し、ワイド感を強調する。

ドアハンドルもユニークだ。機械式ではなく、センサーを使った完全電動式を採用。軽く引くだけでドアを開けられ、センサー部分を軽く押すと施錠できる。車載電源にトラブルが生じた場合でもドアを開けられるよう、ドア内部には独立したエネルギー貯蔵ユニットが備わる。

エクステリアには標準仕様に加えて、専用バンパーやハイグロスブラックのサイドスカート、スポーティなディフューザーなどを備える「S line」も用意される。

ライティングにもAudiらしいデジタル技術

オプションではマトリクスLEDヘッドライトを用意する。対向車や先行車の部分だけを遮光しながら、それ以外のエリアを照射することで夜間の視認性を確保する。

デイタイムランニングライトには4種類のデジタルライトシグネチャーを用意。このうち3種類は固定パターンで、残るひとつは光が動くアクティブデジタルライトシグネチャーとなる。この動的なライトシグネチャーは昼間だけでなく、Audiとして初めて夜間にも使用される。

リヤにはオプションの「LED rear lights pro」を設定。ダイナミックターンシグナルはライトストリップの幅いっぱいに光が流れる仕組みとなっている。

コンパクトなボディに広い室内空間

室内でも「効率」というテーマが貫かれている。

インテリアデザインの中心となるのが「ソフトラップ」と呼ばれるファブリック仕上げのソフトな表面だ。ダッシュボードからドア、さらに後席まで連続させることで、室内を包み込むような雰囲気をつくり出す。

オプションでは約1.6㎡という大型パノラマガラスルーフも選択可能。特殊コーティングによって紫外線や熱の侵入を抑える。

シフトセレクターをステアリングコラムに移したことで、センターコンソールには大きな収納スペースを確保した。Qi 2.2規格に対応するスマートフォン用ワイヤレス充電スペースには2台を置くことができ、最大25Wで同時充電が可能。マグネットによって走行中もスマートフォンを固定する。

ラゲッジ容量は通常396Lで、後席を倒せば最大1336Lまで拡大する。さらにAudi A2 e-tron 170kWとAudi A2 e-tron 240kWには13Lのフロントトランク(フランク)も標準装備される。

「Fidlock」を標準採用

収納まわりでユニークなのが、マグネットと機械式ロックを組み合わせた「Fidlock」固定システムだ。Audiによれば、プレミアム自動車メーカーとして初めて標準装備する。

センターコンソールには3カ所のFidlockアダプターと専用カップホルダーを標準装備。カップホルダーや充電ケーブルバッグ、固定ストラップなどをワンタッチで着脱できる。

規格に対応した自転車やアウトドア用のFidlock製品も利用でき、オプションではラゲッジルームにも3カ所の取り付けポイントを追加できる。

11.9+12.8インチのMMIパノラマディスプレイ

コックピットには「MMIパノラマディスプレイ」を標準装備する。

11.9インチのアウディバーチャルディスプレイプラスと12.8インチのMMIタッチディスプレイを曲面デザインで組み合わせ、ドライバー側へ向けて配置。オプションではAR(拡張現実)ヘッドアップディスプレイも設定される。

Audi assistantにはAIを統合。自然な音声で車両機能やナビゲーションなどを操作でき、車両に関する質問には取扱説明書の情報をもとに回答するほか、一般的な質問にはクラウド上のAIモデルを利用する。

「Audi connected work」ではMicrosoft OutlookやMicrosoft Teamsと連携し、AIベースのWork Agentを利用してメールを作成したり、予定を読み上げたり、Teams会議に参加したりすることも可能だ。

サウンドシステムは3種類。標準の7スピーカーに加えて、220W/8スピーカーのAudi sound system、さらに660W/14スピーカーのSonos premium sound systemが用意される。

クルマを「蓄電池」として使える双方向充電

Audi A2 e-tronは双方向充電にも対応する。

「Vehicle-to-Load(V2L)」を利用すれば、ラゲッジルームのコンセントや充電ポートに接続するアダプターを介して、e-bikeやアウトドア用品などの電気製品へ電力を供給できる。

さらにドイツ、オーストリア、スイスでは、対応するDCウォールボックスとの組み合わせにより「Vehicle-to-Home(V2H)」にも対応。車載バッテリーを家庭用蓄電池として利用できる。

たとえば自宅の太陽光発電で得た電力をAudi A2 e-tronに蓄え、必要に応じて家庭へ戻すといった使い方が可能になる。

ワンペダル走行にも対応

回生ブレーキはステアリングのパドルで3段階に切り替えられる。D1が-0.6m/s²、D2が-1.0m/s²、D3が-1.5m/s²の減速度となる。

さらにセレクターを「B」にすると、停止まで減速するワンペダルドライビングが可能だ。

サスペンションにはコンフォートサスペンションとスポーツサスペンションを用意し、仕様によって電子制御ダンパーも選択可能。Audi A2 e-tron 240kWでは電子制御ダンパーが標準装備となる。

Audi drive selectには「comfort」「balanced」「efficiency」「dynamic」の4モードを設定。ホイールは18〜20インチが用意され、最も効率に優れる組み合わせとして、専用エアロホイールを使用する19インチ仕様が用意される。

上級モデル並みの運転支援機能

AudiはA2 e-tronについて、フルサイズクラスに匹敵する運転支援機能を備えるとしている。

標準装備にはアダプティブクルーズコントロール(ACC)をはじめ、エマージェンシーブレーキアシスト、回避アシスト、アテンションアシスト、パーキングシステムプラス、リヤビューカメラ、サイドアシストなどが含まれる。

オプションの「エマージェンシーアシスト機能付きアダプティブクルーズアシスト」は、最高210km/hまで車線維持と速度・車間距離制御を支援。発売後には、高速道路でウインカーを操作すると自動で車線変更を行う機能も追加される予定だ。

さらに赤信号を検知すると、停止線まで自動的に減速して停止する機能も採用する。

駐車支援も充実しており、最大5種類の駐車操作を学習して再現する機能や、myAudiアプリを使って車外から駐車操作を行うリモート機能などを用意。さらに、35km/h以下で走行した約50mの経路を記憶し、そのルートをたどって自動的に後退するリバースアシストも設定される。

300点以上の部品にリサイクル素材

Audi A2 e-tronが追求する効率は、エネルギー消費だけにとどまらない。

仕様によっては300点以上の部品にリサイクル素材を使用し、そのうち100点以上には使用済み製品を原料とする「ポストコンシューマーリサイクル材」が含まれる。

インテリアでも、オプションのSoftwrapや3種類のスポーツシートに用いられるファブリックには100%リサイクルポリエステルを使用する。

さらに将来のリサイクルを容易にするため、ひとつの部品に使われる素材の種類を減らし、単一素材の使用を増やす取り組みも進めている。

インゴルシュタットでAudi A3と混流生産

Audi A2 e-tronはドイツ・インゴルシュタット工場で生産される。

開発プロセス自体も効率化され、Audiによれば、同等の従来モデルに比べてコンセプトから量産までの期間を21カ月短縮したという。

生産設備についても既存資産を積極的に活用。Audi A3と同じラインでボディを生産し、1200点以上の既存生産設備と、他モデルの生産ですでに使われていた約250台のロボットを利用する。

さらにインゴルシュタット工場では、顧客からの注文順序を組み立て開始6日前に固定し、その順序を生産工程全体で維持する「pearl chain」と呼ばれる生産方式を初めて導入する。部品の保管や順序管理に必要なスペースと作業を減らし、生産効率を高める狙いだ。

つまりAudi A2 e-tronにおける「効率」とは、12.8kWh/100kmという電費の良さだけを指すものではない。パワートレイン、空力、室内空間、素材、開発期間、さらには生産設備まで、クルマづくり全体を貫くテーマなのである。

ドイツでは3万8200ユーロから

ドイツでは2026年9月10日に受注を開始し、12月からデリバリーを開始する予定だ。

Audi A2 e-tron 125kW(52kWh)の価格は3万8200ユーロ(約691万円)から。Audi A2 e-tron 140kW(61kWh)は4万1900ユーロ(約758万円)から、Audi A2 e-tron 170kW(84kWh)は4万8900ユーロ(約885万円)、最上位のAudi A2 e-tron 240kW(84kWh)は5万1200ユーロ(約927万円)となる。

現時点で日本への導入時期や仕様、価格については明らかにされていない。

初代Audi A2は、コンパクトな車体に高い空間効率を盛り込み、軽量化や低燃費を徹底して追求したモデルだった。その名前を受け継ぐAudi A2 e-tronもまた、最大646kmの航続距離や12.8kWh/100kmという電費だけでなく、空力や空間設計、素材、生産方法に至るまで「効率」を追求している。

時代とパワートレインは変わっても、効率を突き詰めるという考え方はA2からA2 e-tronへと受け継がれた。Audiがこのニューモデルに「A2」の名を与えた理由が見えてくる1台といえる。

(Text by 8speed.net Editorial Team / Photos by AUDI AG)
※本記事はプレスリリースをもとに、一部AIツールを活用して作成。編集部が専門知識をもとに加筆・修正を行い、最終的に内容を確認したうえで掲載しています。