「Audi SQ6 e-tron」で東京から熊本まで、片道約1200kmのロングドライブに挑戦しました。今回のテーマはふたつ。ひとつは電費、そしてもうひとつは「途中、何分充電すれば熊本までたどり着けるのか?」です。最新の急速充電インフラを活用しながら、その答えを探ってみました。

「EVはロングドライブが苦手」はもう古い!?

ここ数年、新東名高速や山陽自動車道、九州自動車道には150kW級の急速充電器が次々と整備され、高速道路での充電環境は大きく改善しています。これをうまく活用すれば、EVでもエンジン車とほとんど変わらない感覚で九州まで走れるのではないか。そんな疑問を実際に確かめてみることにしました。

これをうまく活用すれば、EVでもエンジン車とほとんど変わらない感覚で九州まで走れるのではないか。そんな仮説を実際に検証してみることにしました。

ちなみに、今回のテストでは、いつもどおり走ります。エアコンを切って暑さを我慢したり、極端な低速で走って電費を伸ばしたりしても、多くの人の参考にはなりません。そこで、高速道路ではACC(アダプティブクルーズコントロール)を積極的に使い、設定速度は基本的に制限速度どおり。120km/h区間では100km/hを上限としますが、できるだけふだんどおりの感覚で走ることにしました。

ドライブモードは「Efficiency」を選択します。このモードではエアサスペンションの車高が下がるため、多少なりとも空気抵抗の低減が期待できます。ただし、そのままだとエアコンの効きが控えめになるので、空調だけはECO設定を解除しました。真夏の九州遠征で暑さを我慢するのは、さすがに現実的ではありません。

Audi SQ6 e-tronについては下記の試乗記事でも紹介していますが、PPEプラットフォームを採用したAudiの新世代EVで、800Vアーキテクチャーによる優れた急速充電性能を備えています。さらに、エアサスペンションによるしなやかな乗り心地や、高い静粛性も特徴で、長距離ドライブとの相性は抜群です。

高速道路の150kW急速充電器を最大限利用

今回決めていたルールは、「充電のためだけに時間を使わない」ことでした。東京から熊本までは、ほぼ高速道路を走行。道中では150kW急速充電器の空き状況をアプリ「高速充電なび」で確認し、休憩なら15分、食事なら30分という具合に、立ち寄る時間をそのまま充電時間に充てることにしました。

高速道路を走れば、どうせトイレにも行きますし、コーヒーも飲みたくなります。その時間を充電に充てれば、「充電のためだけに待つ時間」はほぼゼロになります。

しかも高速道路に設置されている90〜150kW級急速充電器は、もっとも勢いよく充電できる“ブースト状態”が続くのは開始から15分です。Audi SQ6 e-tronの場合、ブースト時には120kW超の出力が期待できます。

そこから先は充電速度が落ちるため、無理に長居するより次の充電ポイントへ向かったほうが、結果的に効率よく移動できます。

今回の充電結果は次のとおりです。

到着時出発時充電時間
[min]
充電量
[kWh]
走行距離
[km]
平均電費
[km/kWh]
SOC[%]Range[km]SOC[%]Range[km]
都内(出発)————100466————————
新東名・浜松SA(下)48240763991529.0270.55.4
新名神・土山SA(下)47222763851529.7157.85.6
山陽道・三木SA(下)55307714061517.3141.26.6
山陽道・小谷SA(下)29133492381818.9221.35.6
山陽道・下松PA(下)25113723643046.3113.75.3
九州道・北熊本PA(下)1677————————287.35.6
93141.21191.85.6

最終的に東京から北熊本PAまで1191.8kmを走行し、平均電費は5.6km/kWh、充電時間の合計は93分という結果になりました。

真夏ならではの想定外も

とはいえ、すべてが予定どおりだったわけではありません。想定外だったのは、真夏の暑さでした。

走行した日は昼間の気温が35℃前後まで上昇。人間だけでなく、どうやらAudi SQ6 e-tronも少し暑さがこたえたようで、三木SAと小谷SAでは充電出力が60kW台まで低下してしまいました。

バッテリー温度が十分に下がらなかったためなのか、それとも充電器側の保護制御なのか原因は断定できません。しかし、もし通常どおりの出力で充電できていれば、もう1回充電を減らせた可能性もありそうです。

それでも、充電時間の合計は93分。そのほとんどは休憩や食事の時間と重なっていたため、「充電待ち」を意識する場面はほとんどありませんでした。

EVだから長距離は時間がかかる……。そんなイメージは、高速道路の充電インフラの進化によって、少しずつ変わり始めているように感じます。

宿泊したホテルには6kWの普通充電器が設置されており、しかも事前予約が可能だったため、朝には100%充電された状態で出発できました。旅先で充電の心配をする場面はほとんどなく、安心して移動できたのも印象的でした。

疲れの少なさは予想以上

実際に1200km近く走ってみて、一番印象に残ったのは疲れの少なさでした。エンジン音や振動がないEVならではの静粛性がこれほど効いてくるのかとあらためて実感しました。エアサスペンションによる高い安定感も快適さに貢献しました。

熊本に到着したあとは、オートポリスでレース取材を行い、その後は佐賀や長崎まで足を延ばしました。

宿泊したホテルには6kWの普通充電器が設置されており、しかも事前予約が可能だったため、朝には100%充電された状態で出発できました。旅先で充電の心配をする場面はほとんどなく、安心して移動できたのも印象的でした。

熊本では阿蘇の「ミルクロード」を走る機会にも恵まれました。視界いっぱいに広がる鮮やかな緑を眺めながらのドライブは、心が癒やされます。

そのうえ、Audi SQ6 e-tronの走りも楽しいのひとことです。急な上り坂ではモーターが力強く車体を押し上げ、コーナーでは大柄なSUVとは思えないほど軽快な身のこなしを披露します。一方、長い下り坂ではBモードの強い回生ブレーキが頼もしく、ブレーキペダルに触れる機会はほとんどありませんでした。静かで力強く、そして思いどおりに走る。阿蘇の雄大な景色を味わうには、まさにぴったりの1台だと感じました。

EVで九州は、もう特別なことではない

帰りは長崎から東京まで一気に高速道路を走りました。こちらも往路と同様の走り方で、15分の充電を4回、30分の食事休憩を1回というペースで走破。特別な我慢をすることもなく、自宅までたどり着くことができました。

今回の電費は、

  • 往路:5.6km/kWh(1191km)
  • 九州滞在中:5.0km/kWh(425km)
  • 復路:5.2km/kWh(1190km)

という結果でした。

約2800kmを走り終えて感じたのは、「EVだから長距離は大変」というイメージは、そろそろ過去のものになりつつあるということです。

もちろん、エンジン車のように数分で満タンというわけにはいきません。しかし、休憩や食事の時間を上手に充電へ充てれば、移動のリズムはエンジン車とほとんど変わりません。

むしろ、Audi SQ6 e-tronの静粛性や乗り心地のよさのおかげで、快適さはエンジン車を超えています。

今回の九州遠征では、オートポリスでレースを取材し、阿蘇の雄大な景色に癒やされ、佐賀や長崎にも足を伸ばしました。それだけに、その直後に熊本地震が発生したことには胸が痛みます。一日も早い復旧・復興を願うとともに、またあの美しい景色の中を、好きなクルマで走れる日が来ることを祈っています。

(Text & Photos by Satoshi Ubukata)