2026年5月6日、Audi Traditionは、1935年に世界最速記録を樹立した伝説のレコードカー「Auto Union Lucca」を現代に蘇らせたと発表した。1930年代のAuto Union黄金期を象徴するこのレーシングカーは、当時として驚異的な326.975km/hを記録したマシンであり、今回、約3年をかけて忠実に再現された。
Auto Union Luccaは、1935年2月15日に城壁の街として知られるイタリア・ルッカ近郊のアウトストラーダで速度記録に挑戦した特別なモデルである。当時のAuto Unionは、Mercedes-Benzとの熾烈な速度競争を繰り広げており、グランプリや世界記録挑戦は国家的な注目を集めていた。
1934年、Auto Unionは750kgフォーミュラに対応した「Type A」でグランプリ参戦を開始。同年にはハンス・シュトゥックのドライブにより複数の世界記録を樹立した。しかし、その後Mercedes-Benzのルドルフ・カラツィオラが316.592km/hという記録を打ち立てたことで、Auto Unionはさらなる高速化に取り組むことになる。
開発陣は、ベルリン=アドラースホーフ航空研究所の風洞実験を活用し、空力性能を徹底的に追求。密閉式コクピットや流線形ボディ、大型フィン状テール、ティアドロップ型ホイールアーチなどを採用した。そのスタイルは単なる機能美に留まらず、“速度の美学”とも呼べる独特の存在感を放っていた。
搭載されたのは、約5L仕様へ拡大された16気筒スーパーチャージャー付きエンジンで、最高出力は343PS。当時のグランプリカー譲りのミドシップレイアウトと軽量構造を組み合わせ、圧倒的な高速性能を実現した。
記録挑戦の舞台は当初ハンガリー・ジュール近郊だったが、悪天候や路面状況の問題により計画を変更。最終的にイタリア・ルッカ近郊のアウトストラーダが選ばれた。この区間は約5kmにわたりほぼ完全な直線で、高速走行に適した路面を備えていたという。
そして1935年2月15日午前9時、ハンス・シュトゥックがステアリングを握り挑戦がスタート。ラジエーター開口部を最小限に絞るなどさらなる空力改良を施した結果、フライングスタート1マイルで平均320.267km/hを記録。さらに計測区間では326.975km/hという最高速度を叩き出し、「世界最速のレーシングカー」と称された。
この記録は大きな話題を呼び、ほぼ同時期に開催されていたベルリン・モーターショーにも同型車両が展示された。ポスターには“世界最速のロードレーシングカー”として326.975km/hの最高速が大きく掲げられ、Auto Unionの技術力を強烈に印象付けたという。
その後、「Auto Union Lucca」は1935年5月のAVUSレースにも投入されたが、過酷なレース環境のなかで完走は果たせなかった。それでも、このマシンで得られた知見は以後のAuto Unionレーシングカー開発に大きく貢献したとされる。
今回の復元プロジェクトは、英国の名門レストア会社クロスウェイト&ガーディナーが担当。歴史写真や設計資料をもとに、ボディやシャシー、コクピットに至るまで手作業で再現された。なお、実車には耐久性向上のため「Auto Union Type C」由来の6L V16エンジンが搭載され、最高出力は520PSに達する。車重は960kgで、Cd値は0.43を記録した。
Audi Tradition責任者のシュテファン・トラウフ氏は、「Auto Union Luccaは、1930年代にAuto Unionがどのように“Vorsprung durch Technik”を実現していたかを示す存在だ」とコメント。技術革新、空力性能、軽量構造、そして美しさを兼ね備えた“工学の傑作”だと語っている。
完成した「Auto Union Lucca」は、2026年7月9日から12日に英国で開催されるGoodwood Festival of Speedで初の動態公開が予定されている。伝説のシルバーアローが現代のファンの前を走る姿は、大きな注目を集めそうだ。
(Text by 8speed.net Editorial Team / Photos by AUDI AG)
※本記事はプレスリリースをもとに、一部AIツールを活用して作成。編集部が専門知識をもとに加筆・修正を行い、最終的に内容を確認したうえで掲載しています。