フルモデルチェンジにより3代目へと進化した「Audi Q5」シリーズから、ハイパフォーマンス仕様のSモデルである「Audi SQ5 Sportback」を試乗。そのスポーティな走りをチェックした。
モデルチェンジでデザインも中身も一新
ポルシェと共同開発したPPC(Premium Platform Combustion)アーキテクチャーを採用する新型Audi Q5シリーズは、デザインも中身も一新され、まさに新時代のミッドサイズSUVにふさわしい進化を遂げている。
その概要については上記のニュースをご一読いただくとして、今回試乗したのはSUVクーペデザインを採用するSモデルのAudi SQ5 Sportbackだ。
アーチ状のルーフラインが特徴のSportbackのエクステリアは、SUVスタイルのAudi SQ5とは異なり、ルーフレールが省かれ、よりエレガントな雰囲気を放っている。一方、細かいところでは、ほとんどのSportbackにリヤワイパーが装着されないのに対して、このAudi SQ5 Sportbackには装着されるのが個人的にはうれしい点だ。
インテリアは、湾曲したMMIパノラマディスプレイとMMIパッセンジャーディスプレイが最新世代のAudiであることを強くアピールしている。
一番のハイライトはパワートレインで、この標準的なAudi Q5には2.0 TFSIまたは2.0 TDIが搭載されるのに対して、このAudi SQ5 Sportbackには3L V6直噴ターボとなり、最高出力270kW(367ps)、最大トルク550Nm(56.1kgm)を発揮する。AudiのSモデルは4WDのquattroを採用するのが原則であり、このAudi SQ5 Sportbackでもそのルールは受け継がれている。
ちなみに、今回の試乗車は、車両本体価格が1058万円。これに、ライティングパッケージ、パノラマサンルーフ、ラグジュアリーパッケージ、カラードブレーキキャリパーレッド、ダークAudi rings & ブラックスタイリングパッケージ、21インチアルミホイールといったオプション157万円分が装着されている。
デザインや装備については「Audi Q5 edition one」の試乗記をご覧いただくとして、Audi SQ5 Sportbackに乗り込むと、ダイヤモンドステッチが施されたファインナッパレザーのシートが私を迎え入れてくれる。
さっそくスタートボタンを押すと、エンジンがかからない……。ブレーキも踏んでいるのにおかしいなぁと思った次の瞬間、このAudi SQ5 Sportbackには「MHEV plus」と呼ばれる新しい48Vマイルドハイブリッドシステムが搭載されていることを思い出した。
エンジンが十分に暖機されているときなどは、システムを始動してもエンジンは止まったままで、発進もトランスミッション内にあるPTG(パワートレインジェネレーター)というモーターが担当するため、いわゆる“ストロングハイブリッド”に似た感覚なのだ。
まずはDレンジを選んでブレーキペダルから足を離すと、クルマはモーターのパワーだけでゆっくりと動き始める。ここから軽くアクセルペダルを踏んでやると、少し遅れてエンジンが目を覚ますが、3Lと余裕ある排気量だけに低回転から力強く、さらに、PTGによるアシストにより、アクセル操作に素早く反応するのが実に頼もしい。エンジンがかかっているあいだは、軽いノイズと振動がその存在をアピールし、このクルマがスポーツモデルであることを常に意識することになる。
パワーに余裕があるだけに、通常の走行ではアクセルペダルを強く踏み込まなくても、クルマの流れをリードできるが、高速道路への流入や追い越しといった場面でアクセルペダルに載せた右足に力を込めると、3.0TFSIエンジンは3000rpmあたりからさらに勢いを増し、レブリミットの6000rpm目指して一気に吹け上がる。もちろん、そういった場合でも4輪が路面をしっかり捕らえ、安定した加速が楽しめるのもquattroらしいところだ。
Audi SQ5 Sportbackの乗り心地は、標準に比べて1インチアップとなるオプションの21インチタイヤとホイールが装着されているせいか、目地段差を越えるときにショックを伝えてくるのが少し気になるが、アダプティブエアサスペンションスポーツのおかげで走行時はフラットな姿勢が保たれ、とくに高速道路を一気に走行するようなロングドライブは疲れ知らずだ。
ワインディングロードでも、コーナリング時のロールはきっちりと抑えられていて、パワフルなエンジンとあいまって山道でも楽しいクルマに仕上がっている。
MHEV plusを搭載するパワートレインは、巡行中にアクセルペダルから右足を離すと、条件が整えばエンジンが完全に停止し、そこから軽くアクセルペダルを踏むような状況ではモーターだけで走行することもしばしば。先行車の有無を判断し、先行車がいなければコースティング、一方、先行車がいる場合は適切な強さの回生ブレーキで車間を保つ「自動回生機能」もとても使いやすい。
燃費については、東名の東京インターから伊勢湾岸道路のみえ川越インターをほぼ制限速度で巡航したときに14.1km/Lをマーク。途中、計1時間半ほど渋滞に巻き込まれたのだが、15km/h以下でのろのろ走行する場面ではモーターだけで走ることも多く、燃費が大きく落ちるどころか、むしろ短時間なら燃費が向上するのには驚いた。14.1km/Lという数字も、Audi SQ5 Sportbackのパワーやサイズを考えると、実に優秀といえるだろう。今回は高速中心のドライブで、総平均燃費の12.5km/Lは十分に納得できる数字である。
これまで何台かPPC採用のAudiを試してきたが、いずれも完成度が高く、従来以上に魅力的なモデルに進化したことを実感しているが、このAudi SQ5 Sportbackも期待を裏切らない一台だった。
(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Satoshi Ubukata, Audi Japan)