2025年7月に日本上陸を果たしたプレミアムアッパーミドルサイズの電気自動車(EV)「Audi A6 e-tron」シリーズから、シリーズ初の後輪駆動を採用するAudi A6 Sportback e-tron Performanceを試乗。その走りは?

後輪駆動もSportbackもシリーズ初

「Audi 100」の流れを汲むアッパーミドルセグメントが「Audi A6」シリーズ。最新版では内燃機関を搭載する「Audi A6」とEVの「Audi A6 e-tron」との二本立てになり、後者が日本でも発売されたのはご存じだろう。

AudiとPorscheが共同で開発するEV専用プラットフォーム“PPE(Premium Platform Electric)”を採用するAudi A6 e-tronにはステーションワゴンのAvantとともに、A6としては初めてとなるファストバックのSportbackが用意される。今回試乗したのは後者のAudi A6 Sportback e-tron Performanceで、A6シリーズとして初めての後輪駆動モデルということで、長年Audiを見てきた人にとってはちょっとした驚きかもしれない。

Sportbackのボディは、4ドアクーペらしいアーチ型のルーフラインによって特徴づけられる。Cd値はAudi史上最高の0.21を実現しており、さらにオプションのバーチャルエクステリアミラーが装着されることで、空気抵抗の低減に貢献している。新世代のバーチャルエクステリアミラーはカメラ性能の向上やモニター位置の変更などにより、従来よりも格段に見やすくなったのが見逃せない。

セダンとは異なり、大型のテールゲートを備えるのもSportbackの特徴のひとつで、大きな開口部のおかげで、502Lの広いラゲッジスペースは荷物の出し入れが簡単なのがうれしい。

EV化とSportbackボディに加えて、一新されたコックピットデザインもAudi A6 Sportback e-tronの見どころである。湾曲したMMIパノラマディスプレイと、オプションのMMIパッセンジャーディスプレイによって、デジタル化の新たなステージに入ったAudi A6 Sportback e-tronのコックピットは、Audiの先進性を強く感じ取ることができる一方、従来のAudi車から乗り換えても戸惑うことがないデザインにまとめられている。

物理スイッチを極力減らすことですっきりとしたデザインに仕上がっているが、必要な機能に簡単にアクセスできるセンターディスプレイは、湾曲した形状によりドライバーから見やすく、タッチもしやすいのもうれしい。

洗練された走り

シフトレバーでDレンジを選び、ブレーキペダルから足を離すと、Audi A6 Sportback e-tronは静かにクリープ走行を始める。そこから軽くアクセルを踏むだけで、2260kgのボディが信じられないほどスムーズにスピードを上げていく。最高出力270kWを発生するモーターは、アクセル操作に過敏すぎず、市街地での細かな加減速も実にコントロールしやすい。

アクセルを強めに踏み込むと、瞬時に力強い加速を見せる。フロントよりもワイドなリヤタイヤが大トルクをしっかり受け止めてくれるため、安心して右足に力を込めることができる。

印象的だったのは、乗り心地の良さだ。オプションのアダプティブエアサスペンションを備えた試乗車は、驚くほどマイルドで快適。舗装の継ぎ目や段差をほぼ完璧に吸収し、上質な乗り味を実現している。ただ、状況によっては軽いピッチングを感じることもあり、個人的には少し硬めの設定になる走行モードのほうが好ましく感じた。

ハンドリングは、従来のAudiとは少し異なる印象を受けた。後輪駆動らしい素直な動きがありつつ、直進安定性やコーナリング時の安心感はしっかりAudiらしい。しなやかさと安定感を両立した、そのバランスの良さが印象的だ。

BEV専用設計の恩恵で室内空間は広く、さらに大型のテールゲートを備えるSportbackボディは、荷物の出し入れもスムーズ。セダンとは一線を画す実用性とスマートさを兼ね備えている。

このように、すべてが新しいAudi A6 Sportback e-tronは、まさにAudiの新時代を告げる1台といえる。

(Text by Sdatoshi Ubukata / Photos by Audi Japan)