EV専用プラットフォーム「PPE」を採用するSモデル「Audi SQ6 e-tron」に試乗。その走りは?

プレミアムミッドサイズSUVタイプのBEV「Audi Q6 e-tron」シリーズには、Sモデルと呼ばれるハイパフォーマンス仕様が用意されている。それがAudi SQ6 e-tronだ。

Audi SQ6 e-tronの場合、あわせて360kWを発揮する前後2基のモーターにより4WDのquattroを構成し、0-100km/h加速はわずか4.3秒という駿足ぶりだ。駆動用バッテリーは100kWhの容量を誇り、一充電走行距離は672kmを実現する。

ちなみに、Audi SQ6 e-tronの車両本体価格は1320万円で、今回の試乗車は、アダプティブエアサスペンションスポーツや標準から1インチアップの21インチタイヤ&ホイールなど、あわせて197万円のメーカーオプションが奢られた豪華な仕様である。

最新デザインのコックピット

最新世代のプレミアムミッドサイズSUVであるAudi SQ6 e-tronは、運転席についた瞬間から、湾曲したMMIパノラマディスプレイと、オプションのMMIパッセンジャーディスプレイによって、Audiの先進性に触れることができる。それでいて、エンジン車から乗り換えても戸惑うことがないデザインにまとめられているのがうれしいところだ。

一方、物理スイッチを極力減らしたおかげで、すっきりとしたデザインに仕上がっているぶん、操作性が心配になるが、このAudi SQ6 e-tronにかぎりば、必要な機能は比較的簡単にアクセスできるとともに、湾曲したセンターパネルのおかげで運転席からは見やすく、タッチもしやすかった。

オプションの「ラグジュアリーパッケージ Sファインナッパレザー アラスレッドインテリア」が採用されるインテリアは、リサイクル素材を多用するスエード調の「ダイナミカ」がダッシュボードやドアの内張を彩り、また、ダイヤモンドステッチが施されたファインナッパレザーのスポーツシートが気分を高揚させる。

ただ、この仕様ではシートヒーターは装着されるものの、夏場に重宝するシートベンチレーションがないため、個人的にはシートベンチレーションが搭載される「ラグジュアリーパッケージ」を選びたい。

エアサスの効果は絶大

システム最高出力360kWを誇るAudi SQ6 e-tronだが、走行モードにかかわらず、アクセルペダルを軽く踏んで走るかぎりは、リヤモーターだけが加速を担う。それでも、発揮するトルクは余裕たっぷりで、2460kgのボディを軽々と加速させてくれる。一方、アクセルペダルを穏やかに操作すれば、クルマもそれに応えてくれるから、Sモデルといっても気難しさとは無縁である。

もちろん、アクセルペダルを強く踏み込めば圧倒的な加速が手に入るのだが、4輪すべてで加速を受け止めるquattroだけに、その挙動は落ち着き払っていて、涼しい顔で高性能を支配できるのがSモデルらしい。

回生ブレーキに関しては、DレンジとBレンジでは異なる動きを見せる。Dレンジでは、設定画面で「自動回生」を有効にすると、先行車との距離にあわせて自動的に回生ブレーキの強さを調整してくれるのが便利。ただし、先行車がいないとアクセルペダルから足を離しても回生ブレーキが働かないのが要注意だ。そういった場合は、パドルを操作することで一時的に回生ブレーキを利かせることもできる。「自動回生」を無効にすると、パドルを使って回生ブレーキの強さをコースティング、弱め、強めの3段階で調整が可能だ。さらに走行中はパドルを再操作しないかぎりは強さが保持されるので、自動回生ではなく、好みの強さで乗りたいという人には好都合だ。

一方、Bレンジでは、Dレンジの強めよりもさらに強い回生ブレーキを利かせることが可能なうえに、Audiのe-tronとしては初めて、いわゆる“ワンペダルドライブ”が使えるようになった。すなわち、アクセルペダルの操作だけで加減速が行え、さらにアクセルペダルから足を離せば、ブレーキペダルを踏まなくても車両を停止させることが可能だ。回生ブレーキは強めに利くが、それでも驚くほど急に減速することはなく、実に扱いやすい。

Audi SQ6 e-tronの走りは期待以上だった。前述のとおり、この試乗車にはアダプティブエアサスペンションスポーツが装着されていて、エアサスとしては多少硬めの印象である一方、21インチタイヤを履くにもかかわらず、乗り心地は実に穏やかで快適であり、目地段差を通過する際のショックも巧みにいなしてくれる。高速走行時のフラット感もきわめて高く、その洗練されたマナーには驚くばかりだ。

さらに高速道路を走行するなどの場面では、車高を低めることで空気抵抗を減らし、電費向上に貢献できるのも、アダプティブエアサスペンションの魅力である。

Audi SQ6 e-tronの電費は、カタログ値(WLTCモード)が158Wh/km(6.3km/kWh)、市街地が139Wh/km(7.2km/kWh)、郊外が151Wh/km(6.6km/kWh)、高速が173Wh/km(5.8km/kWh)であるのに対して、実測値は、空いた一般道を走行したとき(平均速度40km/h)が6.7km/kWh、高速道路をACCを使って100km/h巡航したときが5.5km/kWh、460kmを走行した総平均が5.1km/kWh。Audi SQ6 e-tronの高性能ぶりに加えて、当日の気温が35℃と高温で、遠慮なくエアコンを使用しての電費であることを考えると、実電費はかなり優秀といえるだろう。

急速充電に関しては、バッテリー残量が20〜70%の状態で150kW急速充電器を使用したときに120〜134kWを確認。充電性能の高さもこのクルマの見どころである。

試乗を終えて、あらゆる面で高い完成度を誇るAudi SQ6 e-tronは、実に魅力的なプレミアムミッドサイズEVと断言できる。このクラスのEVを検討している人は、選択肢からAudi SQ6 e-tronを外すわけにはいなかいだろう。

(Text & Photos by Satoshi Ubukata)