アウディは2024年6月18日、Audi e-tron GT quattroの新しいバージョンにおいて、一充電航続距離、パフォーマンス、ハンドリングが大幅に向上し、充電時間がさらに短くなっていると発表。また、アウディ初となる電気自動車のRS performanceモデル「Audi RS e-tron GT performance」がデビューすると発表した。

AUDI AG取締役会会長 ゲルノート・デルナー氏は「Audi e-tron GTモデルは、パフォーマンスの新たな基準を設定します。充電容量の増加と電動4輪駆動システムにより、さらに長距離走行に適したクルマとなり、パフォーマンスも大幅に向上しています。新開発のシャシーは、快適性、乗り心地、ドライビングダイナミクスを、これまでにない範囲で実現しています」と述べている。

Audi e-tron GTシリーズの新しいバリエーションは、ブラックのマスクで縁取られた反転デザインを採用したシングルフレーム、グリルにエンボス加工が施される。また、シングルフレーム上部にボディカラーと同色のペイントストリップを設置することにより、さらにスポーティな外観を演出する。さらに、エアカーテンの形状に見直されたほか、リヤディフューザー上部にボディカラーと同色のインレイが装着される。このインレイは、ディフューザーとリヤバンパーをつなぐ役割を果たしています。

「Audi RS e-tron GT」の反転デザインを採用したシングルフレームは、RS専用の3Dハニカム構造を採用する。リヤエンドには、モータースポーツからフィードバックされた要素が取り入れられ、流線型のディフューザーには、リヤのL字型ブレードなど、フロントの立体的なデザインテーマを反映している。このブレードは標準でボディカラー同色となっている。エアロチャネル間に設置された垂直の赤いリフレクターもモータースポーツから採用されたディテールのひとつだ。

「Audi RS e-tron GT performance」は、電気自動車としてはアウディ初となるRS performanceモデルだ。マット仕上げのダークカーボンルーフ(オプション)とカーボンカモフラージュエレメント(オプション)を組み合わせることで、Audi RS e-tron GTと明確な差別化を図っている。これらのエレメントはRS performance専用部品である、アウディとして初採用となる。カーボンカモフラージュは、エンボス加工されたバンパー構造、ドアトリム、ディフューザーの一部、サイドミラーに採用される。

新しいコーポレートアイデンティティ(CI)もe-tron GTシリーズに採用される。フォーリングスエンブレムは、ラジエーターグリルとフロントエプロンの間に配置され2、次元デザインになった。ボディカラーは、ソリッドなアルコナホワイトに加え、メタリックまたはパールエフェクトカラーのアスカリブルー、デイトナグレー、フロレットシルバー、ケモラグレー、ミトスブラック、プログレッシブレッドの9色が用意される。

なお、ニンバスグレーは、Audi RS e-tron GTおよびRS e-tron GT performance専用カラーとして用意され、新色のベッドフォード グリーンはAudi RS e-tron GT performance向けに設定される。また、オプションのブラックオプティクスパッケージは、フロントとリヤのダークアウディリングス、エアインテーク、ドアミラーハウジング、ディフューザーエレメント(Audi S e-tron GT)が含まれる。

なお、RSモデルには、標準でダークアウディリングスが装備されており、ブラックオプティクスパッケージを選択すると、バンパーのL字型ブレードとディフューザーのエアロチャンネルがグロスブラック仕上げとなる。また、オプションで同じくグロスブラック仕上げのドアミラーハウジングも選択可能だ。

Audi S e-tron GTおよびRSモデルには、新しい20インチ マルチスポークホイールが用意される他、RS用に2つの新しい6ツインスポークホイールが追加されている。研磨加工された21インチ鍛造ホイールは、1991年発表のAudi Avus quattro studyに装着されていた「AVUSホイール」を彷彿とさせるデザインだ。なお、RS e-tron GT performanceはホイールの表面全体がマットダーク仕上げとなっている。

インテリアはアウディの新しいCIを反映

アウディの新しいCIは、新デザインのシート、ステアリングホイール、シルプレート、デジタルコンテンツにも反映されている。また、ドアを開くと地面に投影されるプロジェクションライトも変更されている。運転席のドアを開くと、赤い影がついた赤いダイヤモンドが投影される他、Sバージョンでは、赤い影がついた白いダイヤモンドが映し出される。さらに、Audi e-tron GTシリーズでは、自然なアンスラサイトバーチ材を使用した新しい木製インレイを選択できるようになっている。

そしてAudi RS e-tron GT performanceでは、エクステリアに合わせたマット仕上げのカーボンカモフラージュも利用可能だ。なお、新しいインテリアの装備にはバナジウムが採用され、照明によって見え方が異なるアンスラサイトカラーのエフェクトの仕上げとして使われている。このバナジウムは、Audi S e-tron GTではオプションとして選択可能で、RSモデルは標準装備となる。

Audi e-tron GTシリーズでは、ステアリングホイールの上下がフラット仕上げになる。RSモデルの場合、ステアリングホイールにはレッド仕上げの2つの赤いコントロールパネルが配置され、オプションで12時の位置にマーキングを追加することも可能だ。シートもアップグレードされ、照明付きロゴを備えた一体型インレイが採用される。なお、Audi S e-tron GTには、14段階調整機能付きのスポーツシートプラスが標準装備される。これにレザーフリーデザインパッケージを組み合わせると、コントラストカラーのオレンジのステッチが施される。さらにRSモデルの場合、オプションでマッサージ機能付きのシートを選択することが可能だ。RS performanceモデルには、専用の新しいデザインパッケージ(サーペンタイングリーンのステッチが施されたベッドフォードグリーン仕上げ)が用意され、オプションで18段階調整機能付きのシートを選択することもできる。

インテリアには、環境に優しいマイクロファイバー素材のDinamica(ダイナミカ)とファブリックのCascade(カスケード)が採用される。Dinamicaは、ほぼ半分がリサイクルされたポリエステルで構成されており、その一部はアウディが使用したファブリックの残布となっている。しかも、シート、ステアリングホイール、バーチャルコックピット上部のフード、ドアミラー、センターコンソール、ウィンドウトリムの37~45%はDinamica製だという。

RSモデルには、ディープブラックのDinamicaが採用され、Cascadeは15%のセルビッチと35%のリサイクルされたポリエステルで作られている。この素材は、環境保護の観点から染色はされていない。このCascadeは、シートやドアミラーにも採用される。なお、カーペットおよびフロアマットは、Econyl(エコニール)製で、生産廃棄物、ファブリックやカーペットの残布、古い漁網などから100%リサイクルされたナイロン繊維素材が用いられている。

アウディバーチャルコックピットおよびスマートパノラミックルーフ

アウディバーチャルコックピットは、バッテリー温度に関する情報を提供し、充電可能な最大出力をリアルタイムで表示する。そしてAudi RS e-tron GTには、RS専用コンテンツを表示するディスプレイが装備される。例えば、RS e-tron GT performanceでは、MMI経由でホワイトのパワーディスプレイとスピードメーターを選択することも可能だ。これは、ホワイトのアナログメーターを採用していた、1994年モデルのAudi RS 2 Avantのオマージュだ。

オプションの追加アップグレードとして、パノラマガラスルーフも選択可能だ。このパノラマルーフに使用されているスマートガラスは、直射日光を最小限に抑え、ボタンを押すだけで不透明になる。これは、透明から不透明に変化させることが可能な、ポリマー分散液晶(PDLC)と呼ばれるテクノロジーによって実現している。このルーフは、MMIディスプレイを介して「デジタルカーテン」のように個別に制御することが可能で、4つのプリセットから選択することができる。

電動4輪駆動

Audi S e-tron GTおよびRS e-tron GTのフロントアクスルには永久磁石同期モーター(PSM)が搭載されており、出力は、どちらも176kW(239ps)を発揮する。なお、追加機能として、Audi RS e-tron GT performanceでは、フロントアクスルのパワーエレクトロニクスが見直され、さらに高い放電電流を実現するために改良されたパルスインバーターが採用される。

リヤアクスルに搭載されている、新開発の電気モーターも永久磁石同期モーター(PSM)は、Audi RS e-tron GTおよびAudi RS e-tron GT performanceのPSMと同じサイズで、軸長192mm、直径230mmとなる。モーターなどの部品は、プレミアムプラットフォームエレクトリック(PPE)と共に供給され、この電気モーターの出力は、415kW(564ps)を発揮する。Audi S e-tron GTの駆動システムの最高出力は500kW(679ps)、RS e-tron GTは630kW(856ps)、そしてRS e-tron GT performanceは680kW(925ps)に達する。

加速性能は、Audi S e-tron GTは、0-100km/hが3.4秒、RS e-tron GTは2.8秒、そしてRS e-tron GT performanceは2.5秒となる。そしてAudi S e-tron GTの最高速度は245km/h、RSモデルの最高速度は250km/hだ。

Audi S e-tron GTのブレーキシステムには、標準のスチールディスクとブラックキャリパーを組み合わせた大型ブレーキシステムが搭載されている。なお、キャリパーは、オプションでレッドも選択可能だ。RSモデルに搭載されているタングステンカーバイドコーティングされたブレーキディスクは、Sモデルではオプションとなっている。ブレーキキャリパーは、ブラック、レッド、オレンジから選択可能。なお、すべてのAudi e-tron GTシリーズは、カーボンファイバー セラミックディスクを選択することも可能だ。このディスクでは、10ピストンキャリパーが標準となり、カラーはアンスラサイトまたはレッド(オプション)となる。

新しいブースト機能を標準装備したことにより、Audi RS e-tron GTおよびAudi RS e-tron GT performanceは、走行中に70kWに及ぶパワーアップを実感することが可能だ。このブースト機能は、ステアリングホイールの左側のコントロールスイッチを押して起動することができる。ブースト機能は10秒間有効になり、メーターパネルにはカウントダウンが表示される。

航続距離は最大609km

高電圧(HV)バッテリーは、HVバッテリーの重量は9kg削減され、総重量は625kgとなった。なお、HVバッテリーの総容量は105kWh(正味容量97kWh)となる。さまざまな改良に加えたことにより、33個のセルモジュール全体のエネルギー容量が12%増加している。

これにより、新しいAudi e-tron GTシリーズの回生システム(回生ブレーキ)から得られるエネルギーも、従来の290kWから400kWに増加。ドライバーは、MMIを介して、回生システムを手動または自動に切り替えることが可能だ。また、シフトパドルを使用して、回生レベルを3段階で変更できる。

10分間の充電で280km走行可能

Audi e-tron GTシリーズに搭載されるHVバッテリーは、急速充電(HPC)ステーションを利用すると、わずか18分で10%から80%まで充電することが可能だ。また、わずか10分間の充電で、最大280km走行できる。新しいHVバッテリーは、気温が低い環境でもより早く高出力ができる状態に到達し、15度という低温でも高い充電性能を実現。また、オプションとして、最大22kWでAC(交流)充電することもできる。

アウディバーチャルコックピットプラスには、バッテリー温度、急速充電予測、プレコンディショニング状態など、HVバッテリーの現在の動作状態に関する包括的な情報が表示される。アウディバーチャルコックピットプラスは、急速充電ステーションを含むナビゲーションが有効になっている場合、プレコンディショニングの状態も表示される。これにより、ドライバーは、充電時の予測パフォーマンスを事前に確認することができるようになる。

アクティブサスペンションと個別に設定可能なRSモードを備えたアウディドライブセレクト

サスペンションは、2チャンバー/2バルブテクノロジーを採用した新開発のエアサスペンションが標準装備されるほか、新しいアクティブサスペンションもオプションとして用意される。

アウディドライブセレクト ダイナミックハンドリングシステムにより、ドライバーは車両の特性を変化させることが可能だ。システムには、エフィシェンシー、コンフォート、ダイナミックの3つのプロフィールが用意されており、Audi S e-tron GTでは個別のモードを設定することも可能だ。さらにRSモデルには、個別に設定可能なRS専用モード(RS1とRS2)が用意されている。Audi RS e-tron GT performanceには、専用機能として、サーキット走行で最適なセットアップを実現する、パフォーマンスモードを選択することも可能だ。

通常の走行時、特に凹凸のある道路を走行しているときに、アクティブサスペンションは車体の振動をほぼ完全に中和される。アウディドライブセレクトを介してカーブティルト、スタート、およびコンフォートブレーキ機能を有効にすると、サスペンションがピッチングとローリングを補正し、加速感を軽減。そしてアクティブサスペンションには、車両が停止しているときに乗降をサポートする、エントリー機能も用意される。この機能を利用すると、停止時の車高に応じて、数秒のうちに55~77mmの範囲で車高を上昇することが可能だ。

またオプションで、以前のAudi e-tron GT quattroよりもダイレクトなステアリングレシオを採用した、オールホイールステアリングが用意される。このオールホイールステアリングにより、最小回転半径が約0.6m減少している。

(Text Toru Matsumura)