ミラノ・デザインウィーク2024におけるアウディのインスタレーション4月15日から28日まで公開された。

リフレクション×アクション

今回は2024年4月に開催された「ミラノ・デザインウィーク」にアウディ、そして同じフォルクスワーゲングループであるドゥカティが、どのようにアプローチしたかを紹介する。

10年以上の参加歴を誇るアウディが選んだのは、2023年と同じ5つ星ホテル「ポートレイト・ミラノ」のピアッツァ(広場) であった。

今回のテーマは「リフラション」だ。ReflactionとはReflectionとactionの合成語である。個人のあらゆる行動actionがいかに自分の存在を映し出し、後世に痕跡を残す鏡(refrection)となるかを考えるよう促すものという。インスタレーションを担当したのはデンマークの「レゴ・ハウス」を手がけたことで知られる建築家ビャルケ・インゲルスが率いる「BIG(Bjarke Ingels Group)」である。

アウディのシルバー・フォーリングスにちなんで広場を10✕1.2✕9.5メートルの鏡面パネルで4分割。上空から見た「+」型は、「より多く」やプログラミングの世界を想起させることを意図したと解説されている。

Reflactionの俯瞰図。(Immage:Audi)

順路は左回りだ。最初は何本もの木を伴った空間「コミュニティ」である。アイディアの交換とリラクゼーションのためのスペースという。それに続くのは、会議や洞察のための「ナレッジ」と名付けられた円形劇場だ。

第三の区画である「デジタルライト/テクノロジー」のセクションでは、アウディが常に先駆的な役割を果たしてきた照明工学における卓越性が展開されていた。

最後のエリア「パフォーマンス」は、今回世界で初めて一般公開した「SQ6 e-tron」2台との出会いに充てられていた。

アウディ SQ6 e-tron(手前)

筆者が訪れた日には、アウディの照明デザイン責任者セザール・ムンターダが、前述の「ナレッジ」スペースでトークセッションに臨んだ。席上、彼は火のついた棒を降るジェスチャーとともに「古来から人間は“のろし”を使ってコミュニーションをとってきた」とし、自動車のイルミネーションがさらに興奮をともないながら進化してゆく可能性を熱く語った。

アウディの照明デザイン責任者セザール・ムンターダ氏(中央)がトークセッションに臨む。

2輪デザイナーの語りを聞く

フォルクスワーゲングループでアウディと同じビジネスユニットに属する二輪ブランド「ドゥカティ」は、国立科学技術博物館に仮設パビリオンを建てて参加した。

こちらのタイトルは「フォルマ(Forma=形状)」だ。ボローニャ県ボルゴ・パニガーレにある同社デザインセンターで「パニガーレV4」がどのようなデザインプロセスをたどったかを示すものであった。

すべてのビジターへの解説は、第一線で働くデザイナーが担当。筆者が訪れたときは、チーフデザイナー/アドバンスド・デザイン責任者のアンドレア・アマート氏と、デザイナーのアクシャイ・パルデシ氏があたってくれた。普段の彼らは新型車開発のほか、フェイスリフトなど20数プロジェクトを同時進行しているのに加え、ドゥカティ・ブランドのカジュアルウェアや電動キックスケーターなどのデザインにも参画している。にもかかわずチームは計7名。4輪車のデザイン開発体制と比較すると、まさに少数精鋭だ。

会場で最初に人々がくぐるのは、無数のスケッチが木の葉のごとく吊り下げられたスペースである。デザイナーたちはファッション、建築、古いモーターサイクル、動物、さらには自動車から、たびたびインスピレーションを得るという。

次の部屋にはさきほどのスケッチをスキャン&データ化し、3Dプリンターで製作したスケールモデル3台が並んでいた。

露出する機構のパッケージング、耐候性、車両全体の大きな挙動、エンジンノイズとの駆け引き......と、4輪車デザインとは異なる点が数々ある。しかし、それらを解決してゆくからこそ2輪デザインには魅力があると彼らは語る。聞けば実際、アマート/パルデシ両氏とも他の2輪ブランドからの移籍組であった。

生産型ドゥカティ・パニガーレV4

このようにアウディ、ドゥカティとも、デザイン現場で働く人々のトークに触れられる貴重なチャンスを提供した。派手なインスタレーションやパーティーに走りがちなデザインウィークにおいて、原点回帰ともいえる良企画であった。

アクシャイ・パルデシ氏(左)と、アンドレア・アマート氏(右)。

(report:大矢アキオAkio Lorenzo OYA・photo/image:大矢麻里 Mari OYA/Akio Lorenzo OYA/Audi)