アウディのインゴルシュタット工場は2024年1月31日、同年1月1日からネットカーボンニュートラルな方法による生産を開始と発表した。

これにより、ブリュッセル(ベルギー、2018年)とジェール(ハンガリー、2020年)に続き、ネットゼロエミッションで稼働する3番目の工場となった。アウディは、Mission:Zero環境プログラムとして、2025年までに世界のすべての拠点でネットカーボンニュートラルを達成するという目標を設定しており、ネッカーズルムとサンホセチアパ(メキシコ)の生産拠点においても、その目標に向けた最終段階を迎えている。

AUDI AG生産およびロジスティクス担当取締役 ガード・ウォーカー(Gerd Walker)氏は、「環境保護に最善を尽くすことは、アウディの企業戦略の根幹となっています。私たちは、インゴルシュタット拠点のエネルギー源を再生可能エネルギーに切り替えることで、ネットカーボンニュートラルな車両を生産するという目標達成にさらに近づきました」と強調する。

この目標を達成するために、アウディは4つの柱から構成されるコンセプトを策定した。

●1.エネルギー効率の向上

2022年にはエネルギー管理対策により、インゴルシュタット拠点では、35,000メガワット時(MWh)を超えるエネルギーを節約し、5,000トン以上のCO2 排出量を削減した。

アウディが自社開発したEnergy Analytics(エネルギー分析)プラットフォームは、この目標の達成に大きく貢献。このEnergy Analyticsは、社内の生産プロセスにおけるさまざまな現場から大量のデータを収集し、オンタイムでコンパイル、プレパレーション、プロセッシングといった一連の処理を実行するソフトウェアベースの分析システムだ。

●2.拠点内で再生可能エネルギーを生成

インゴルシュタット工場の23,000mm2の敷地に太陽光発電モジュールが設置されており、今後数年アウディはすべての生産拠点で自ら生成するエネルギーの割合を増やし続ける予定だ。現在、本社工場では約41,000mmの太陽光発電モジュールの建設を計画中で、その一部は既に着工している。

●3.再生可能エネルギーの購入

2012年初頭から、インゴルシュタットでグリーン電力のみを使用して車両を生産している。アウディグループ環境保護責任者Dr. リュディガー・レクナゲル氏(Rüdiger Recknagel)は、「インゴルシュタット工場に隣接する製油所と都市廃棄物リサイクルプラントから、ネットカーボンニュートラルな廃熱が供給されています。さらに、ネットカーボンニュートラルな熱供給を確保するために、大量のバイオガスを確保しました」と説明する。

●4.CO2 排出量を相殺

インゴルシュタット拠点はエネルギー需要のほぼすべてを再生可能エネルギーで賄っているものの、まだ回避できていない排出量(従来のCO2 排出量の最大10%)は、Gold Standardなどの品質基準に従って認定されたカーボンクレジットを購入することで相殺している。

この独立機関による品質基準は、厳選された気候保護プロジェクトのみが適合されています。アウディはこれらの証明書を通じてCO2 排出量を相殺し、特にグローバルサウスにおける風力発電所の建設に投資している。

Mission:Zero:脱炭素のその先へ

環境プログラム Mission:Zeroの対策は、脱炭素化を超えて、水の再利用、資源の効率化、生物多様性の保護と保全という主要な活動分野にも取り組んでいる。アウディの目標は、プラスチック、水、その他の原材料などの資源を一定のサイクルの中で有効活用し、循環型の生産体制を構築することにある。

2023年、アウディはプレミアム自動車メーカーとして初となる責任ある水資源管理を行うための機関、Alliance for Water Stewardship(AWS)に参加。2035年までに世界中の生産拠点で、環境にとって重要な水の消費量を半減させることを計画している。

また「Biodiversity in Good Company」(ビジネスと生物多様性)イニシアチブのメンバーとして、すべての拠点で生物多様性の保護にも取り組んでいる。ミュンシュスミュンスター拠点の敷地外にあるオープンスペースは、自然の形に近い状態を維持するように設計され、約17ヘクタールのこの敷地は、多種多様な動植物の生息地となっている。

360factoryと持続可能な土地利用

アウディは持続可能な土地利用に関して、かつての工業用地を再活性化する取り組みを推進中だ。アウディは総合的で持続可能なアプローチの一環として、将来に向けて、既存の工場の近代化、デジタル化、変革を進めており、この360factoryのコンセプトを活用することで、生産における柔軟性と効率性の向上が期待できるため、新しい建物を建設のための新たな敷地の確保は不要となる。

(Text Toru Matsumura)