4代目に生まれ変わった「Audi A3」シリーズから、1L直列3気筒ターボエンジンと48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載する5ドアハッチバック「Aud A3 Sportback 1st edition」を、箱根で行われた報道試乗会でチェックした。

2021年4月21日にジャパンプレミアを果たした新型Audi A3シリーズが、ついに発売になった。主力モデルのフルモデルチェンジだけに、この日を心待ちにしていた人は多いだろう。

新型Audi A3シリーズの概要は上記のニュースをご覧いただくとして、今回試乗したのは、1L直列3気筒ターボエンジンと48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載する5ドアハッチバック「Audi A3 Sportback 30 TFSI advanced」をベースに、装備を充実させた限定車「Audi A3 Sportback 1st edition」。カタログモデルには設定のないルーフレールが装着されるのが、この限定車の特徴である。

他にも、「コンビニエンス&アシスタンスパッケージ」「ナビゲーションパッケージ」「テクノロジーパッケージ」といったオプションが標準装着されるほか、ブルーのアクセントが鮮やかなスタンダードシートやダークアルミのデコラティブパネル、18インチアルミと225/40R18タイヤ、マトリクスLEDヘッドライトなど、さまざまな装備が追加された魅力的なモデルである。

さっそくコックピットを覗いてみると、その変貌ぶりに驚くばかり。なかでもセンターコンソールは大きく変わり、これまで存在感を示していたシフトレバーが小さなスライドスイッチに変更されたことで、その眺めが一変してしまった。

MMIナビゲーションもこの新型からタッチパネル式に変わり、ドライバーからより近い位置にディスプレイが設置されるようになり、また物理スイッチも廃止されている。

一方、エアコンの操作パネルは独立しており、操作も物理スイッチが用意されるので、直感的に使えるのがうれしい。

ちなみに、コンビニエンス&アシスタンスパッケージが装着される場合、電動パーキングブレーキには停車時にブレーキから足を離しても停止状態を維持するアウディ ホールドアシスト機能が備わるが、そのオン/オフは物理スイッチではなく、車両設定画面で行う。

後席は旧型とほぼ同じレベルの広さを確保する。167cmの私が運転席の調整して後席に移ると、ヘッドルームは約10cm、ニールームも約20cmとスペースは十分だ。

ラゲッジスペースも、後席を使用する状態で奥行き80cm弱を確保。フロアの高さが2段階に変えられるのも従来どおり。カタログモデルでは、「ラグジュアリーパッケージ」を選んだ場合にリヤシートがセンターアームレスト付きの3分割式になるが、この1st editionでもその仕様になる。

さて、新型Audi A3一番の関心事が、新たに搭載される1.0 TFSIエンジンと48Vマイルドハイブリッドシステムだ。果たしてどんな走りを見せてくれるのか、期待を胸にエンジンを始動した。

さっそく走り出すと、思いのほか動き出しは軽やかで、1Lという排気量から想像する以上に、低回転から十分なトルクを発揮してくれる。マイルドハイブリッドのない1.0 TFSIとは別物の仕上がりだ。アクセルペダルの操作に対してエンジンの反応も鋭く、物足りなさを感じることもなかった。これは48Vマイルドハイブリッドシステムによる部分が大きく、加速時にモーターがエンジンをアシストすることで、とくに低回転域で頼もしい性能になっているのだろう。

3気筒エンジンだけに、ノイズや振動が心配だったが、Audi A3との組み合わせでは不快なエンジン音や振動はうまく抑えられていて、言われなければ3気筒であることに気づかない人は多いのではないだろうか。

比較的低い回転で走る一般道では十分なパフォーマンスを示すこの1.0 TFSIだが、試乗したワインディングロードでも、パンチこそないが、力不足を感じることはなかった。アクセルペダルを深く踏み込めば、2500rpmあたりから力強さを増し、その勢いは6000rpmまで続く。

走行中にアクセルペダルから足を離すと、40km/hを上回っていれば回転計の針がすとんと0まで落ち、エンジンがストップするという現象が頻繁に起こる。これも48Vマイルドハイブリッドシステムによるもので、頻繁にエンジンを停止することで燃料の消費を低減。アクセルペダルを踏めば、スムーズかつ即座にエンジンはスタートする。アイドリングストップからのエンジンの再始動も実にスムーズである。

ただ、走行中にエンジンが停止する設定では、いわゆるエンジンブレーキが効かないので、必要であればパドルでギヤを選択したり、あるいはSモードに切り替えることが必要だ。

一方、1L直列3気筒を搭載するAudi A3 Sportback 1st editionの走りは、とても動きが軽快で、ひとまわり小さいクルマを運転しているような感覚だ。これまで以上にしなやかな動きをみせるサスペンションも実に好ましい。

ただ、ベースとなるモデルに対して1インチアップとなるタイヤとホイールは、トーションビームリヤサスペンションを採用するこのクルマにはやや荷が重いようで、荒れた路面ではショックを伝えがちなのが気になる。乗り心地を重視したい人は、通常のカタログモデルのほうが好みにあうかもしれない。

とはいえ、クルマ全体の仕上がりは期待どおりで、元祖“プレミアムコンパクト”の面目躍如といったところ。残念ながら1.0 TFSIと48Vマイルドハイブリッドシステムによる燃費はチェックできなかったが、機会を見てその実力をたっぷりと試してみたいと思う。

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Satoshi Ubukata, Audi Japan)