SUVクーペスタイルの「Audi e-tron Sportback」に続き、SUVスタイルの「Audi e-tron」が日本上陸。バッテリー搭載量が少なめの「e-tron 50 quattro」の実力は?

日本では導入の順序が逆になってしまったが、Audiの量産電気自動車の第1弾は、よりSUVらしいデザインのAudi e-tronだ。

このAudi e-tronのエントリーモデルが日本に導入されるとともに、Audi e-tron Sportbackにもエントリーモデルが追加されたのは、すでにニュースでお知らせしたとおりだ。

その概要は上記をご覧いただくとして、今回試乗したのはスポーティな内外装を纏うAudi e-tron 50 quattro S lineである。

試乗車は、オプションの21インチアルミホイールと265/45R21タイヤにより1インチアップが図られるとともに、バーチャルエクステリアミラー、サイレンスパッケージ、パワークロージングドア、インテリアパッケージが追加され、オプション価格が97万円、車両本体価格の1108万円とあわせて1205万円という金額になる。

SUVスタイルのAudi e-tronとは初対面ということで、まずはラゲッジスペースをチェックすることに。テールゲートを開けると、Audi e-tron Sportbackとほぼ同じサイズの空間が目に入る。スペック表を見ると、後席を使用した場合のラゲッジ容量はAudi e-tron Sportbackの616Lに対し、Audi e-tronが660Lと44L広い。荷室のフロア長や幅はほぼ同じなので、ボディ後端の形状の違いがこの差を生んでいるようだ。

細かいところでは、荷室の“目隠し”が、Audi e-tron Sportbackが2つ折りのハードボードを使用しているのに対し、Audi e-tronはロールタイプのトノカバーを備えている。また、Audi e-tronには荷室から後席を倒せるレバーがあるので、簡単な操作で荷室を広げることができるのも見逃せない。

ちなみに、後席を倒した場合の荷室の容量は、Audi e-tronの1665Lに対し、Audi e-tronは1725Lで、その差は60Lと、見た目から想像するほど違いがない。また後席も、大人が座っても余裕あるスペースが確保されているが、ヘッドルームはAudi e-tronのほうが数センチ余裕があるので、長身の人が座る場合は、Audi e-tronのほうがより快適に過ごせるだろう。

さっそく走り出すと、以前試乗したAudi e-tron Sportback 55 quattroよりも140kg軽いAudi e-tron 50 quattroだが、動き出しはやや大人しい印象。e-tron 55 quattroが95kWhのバッテリー容量を搭載し、システム最高出力300kW、システム最大トルク664Nmであるのに対し、このe-tron 50 quattroはそれぞれ71kWh、230kW、540Nmとなるぶん、全体的にトルクが抑えられている印象である。

とはいえ、2400kg強のボディをスムーズに加速させるには十分なパフォーマンスで、スピードが上がるにつれて活発さも増してくる。

巡航時はいうまでもなく、加速時でもキャビンの静粛性が高いのはAudi e-tronの美点のひとつ。乗り心地も快適で、終始落ち着いた挙動を示すのもうれしいところだ。一方、直接比較したわけではないが、バッテリーを多く積むぶん車両重量が重く、最低地上高も15mm低いAudi e-tron Sportback 55 quattroのほうが挙動はさらに落ち着いているようで、ボディ形状とバッテリーの量が多少なりとも走行時の挙動に影響を及ぼしているのは確かだ。

気になる“電費”だが、カタログ上はAudi e-tron Sportback 55 quattroの245Wh/kmに対し、Audi e-tron 50 quattroは237Wh/km。これを1kWhあたりの走行距離に計算し直すと、前者が4.08km/kWh、後者が4.22km/kWhとなり、Audi e-tron 50 quattroのほうが3%強、電費が良いことになる。

今回は電気自動車にとっては電気が厳しい高速道路を中心に走行したが、流れにあわせて平均90km/hで走行したときが4.7km/kWh、少しペースを落として平均75km/hで走行したときが5.4km/kWhをマーク。同じ条件で走ったわけではないが、Audi e-tron Sportback 55 quattroを電費で若干上回るようだ。

より素早い加速を望むならe-tron 55 quattro、バランスの良い性能を望むならe-tron 50 quattro。ボディ形状はお好みで……というのがAudi e-tron/e-tron Sportbackの選び方といえるだろう。

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Satoshi Ubukata, Audi Japan)