「エンジンの差が大きいんじゃないの?」と思われるかもしれません。確かに211ps/35.7kgmを誇る2.0 TFSIは低速からトルクが太く、高回転まで気持ちよく吹け上がるエンジンでした。ただ、クワトロならまだしも、FFモデルなら、そこまでパワフルじゃなくても十分楽しめるのではないか......という気がしていました。
実際にTT 1.8 TFSIを運転してみると、160ps/25.5kgmの1.8リッターエンジンで、気持ちよく走ります。最大トルクが25.5kgm(=250Nm)に抑えられたおかげで、Sトロニックが湿式多板クラッチの6速から、乾式単板クラッチの7速に変更できたのも、軽快な加速に貢献しているのでしょう。
試乗車はS-line仕様で価格は452万円になりますが、ベースモデルでもパドルシフトが装着されていますし、バイキセノンヘッドライトやSDナビも標準です。414万円でTTのある生活が始められるとはうれしいですね! もう少し早く発売されていたら......と考えてしまいます(笑)
で、ここからが本題ですが、アウディというとどうしてもクワトロのイメージが強く、このTT 1.8 TFSIのようなFFモデルはあまり魅力がないのではないか......と想像する人が案外多いのではないでしょうか? でも、FFにはFFの良さがあって、たとえばTT 1.8 TFSIはTT 2.0 TFSIクワトロにはない軽さが、TT 2.0 TFSIクワトロとはまた別のスポーティさをもたらしてくれるんです。
現行のTTは、アルミとスチールとを組み合わせたハイブリッド構造の「ASF」が特徴のひとつです。もちろんその目的は軽量化と高いボディ剛性の両立です。それだけに、FFを採用して、より軽く仕上がったTT 1.8 TFSIは、TTの良さが最も現れているグレードといってもいいでしょう。実際、TT 1.8 TFSIの軽快感は走り出せばすぐにわかります。しかも、その軽快さはスピードを上げなくても感じられますから、どんな道でも、どんなスピードでも、TTの魅力である軽快な動きを堪能することができるんです。
FFのTTは楽しくない、スポーティじゃない......という先入観を持ってる人にこそ、ぜひ試してほしいTT 1.8 TFSI。爽快な走りをもたらすこのエントリーグレードこそ「ベスト・バイ」ではないでしょうか?
(Text & Photo by Satoshi Ubukata)