よく世間では「最新の911が最良の911」なんていいますが、今回もそうなんでしょう、間違いなく。最新が最良って、ほとんどのクルマはだいたいそうなんですが、911にそれをいわれたら「この印籠が目に入らぬか!」といわれた町民や悪代官よろしく、「ははぁー」と頭を下げるしかありません。僕ももちろん、手に持っていた農具を捨て、頭に巻いていた手ぬぐいを外し、鈍く光るポルシェクレストにひれ伏したのでした。
実際、クルマの出来については、売れっ子評論家の海外試乗記を読んでください。僕はまだ知りません。ただ、スペックを見ると、これほどまでに効率=燃費に気を使った911はなく、まず軽量化(ボディはわずかに大きくなったにもかかわらず、先代より35〜40kg軽くなっている)、コースティング機能(負荷が少ない場合に走行中でもニュートラルに入って惰性で動かす機能。再加速の際には素早くギアがつながる)、アイドリングストップなど、さまざまな燃費改善策が採用されました。そもそもMTもPDKも7速になったこと自体が、燃費改善への並々ならぬ取り組みといえるでしょう。
今後、燃費の悪いクルマは法的にも社会的にもどんどん売りにくくなっていきます。ハイパフォーマンスカー対燃費規制は、技術対環境であり、同時にメーカー対行政でもあります。30年後、スポーツカーを含むクルマのほとんどがモーターを積んでいるのか、それとも素材面でブレイクスルーが起きてクルマの重量が今の衝突安全性を保ったまま500kgくらいになって、半分くらいはエンジンだけで動いているのか......ワクワク、ドキドキする話です。
(Text by Satoshi Shiomi)