アウディA6アバントの試乗会へ参加した塩見です。
とにかく売れて仕方ないアウディ。「2011年、世界では130万台、日本では2万1000台を記録しました」と広報さんは誇らしげ。「ワールドワイドの販売台数で初めてメルセデス・ベンツさんを抜いて、BMWさんの背中が見えてきました」と鼻息が荒いです。
アウディは2011年から「Big&Small」というキャッチフレーズを掲げていますが、文字どおり小さなA1が台数を押し上げ、A6、A7、A8といったハイエンドモデルが高い利益を生み出したようです。2012年はA6、A7、A8のSモデルが出るほか、A1スポーツバック、それにコンパクトSUVのQ3をローンチし、台数、利益ともに前年超えを目指すのでしょう。
さて、A6アバント。2.8L V6に試乗しました。アウディA6アバント、まあセダンも含めA6シリーズは、メルセデスEクラス、BMW5シリーズとガチンコ対決をしなくてはいけないクラスです。つまりはメーカーにとって一番売れなくてはいけないクルマです。ヨーロッパのカンパニーカーなんか、このクラスが選ばれることが多いですから、3モデルともメーカーの屋台骨といっても過言ではありません。
このクラスが日本に入ってくる場合、複数のモデルが投入されます。はっきりいえば速い方と遅い方(絶対的には遅くない)、もっと身も蓋もないいい方をすれば高い方と安い方(絶対的には安くない)を輸入するのがパターンです。アウディの場合、現段階で入ってきたのは、V6、3Lスーパーチャージャーエンジンを搭載した3.0 TFSI クワトロと、V6、2.8L NAの2.8 FSI クワトロ。Eクラスも5シリーズも遅い方、安い方は4気筒+過給器のエンジンを採用していますから、安い方もV6というのが新型アウディA6の特徴のひとつといえるでしょう。
「A6にも本国には5種類くらいのガソリンエンジンを取り揃えていて、2.0 TFSIなど、小排気量+過給器のエンジンもありますから、日本仕様にどれを選ぶか、迷いました」と、アウディ ジャパン商品企画部の天野一登さん。安い方同士をざっくり比べると、V6のA6の方が、Eクラスや5シリーズよりフィーリングがいい代わりに、パワーの絶対値と燃費では若干不利なわけです。ただ、パワーも不足しているわけではなく、燃費もJC08モードで11.8km/Lと絶対的に悪いわけではありません。その証拠に日本のエコカー減税及び補助金を獲得してますから。だからこそ、フィーリングを重視したんだと思います。
A6ではこの点が一番気になっていたので、今回のアバント試乗会では2.8 FSIの方を希望しておきました。乗ってどうか。エンジンの回転フィーリングにおいては、Eクラスや5シリーズの直4エンジンよりも明らかにスムーズで、静粛性も高く、音のチューニングもよく、シリンダー数が増やして得られるものをすべて得ています。一方で、燃費を確認する時間はありませんでしたが、パワーはそれなりです。Eクラスや5シリーズの直4エンジン搭載車よりも競走したら遅いでしょう。しかし、僕はV6の上質感を得られるなら(なおかつエコカー減税や補助金が適用されるなら)、こっちもアリだなと思います。
V6か直4過給器か。この比較は、どちらを選ぶか考え方次第、好み次第です。世の中には考え方次第、好み次第ではなく、◯☓△□や@$%&など、明らかに同価格帯のライバルに比べて劣っていたり、不当に高いクルマもありますが、A6アバント 2.8 FSI クワトロ、E250ブルーエフィシェンシー・ステーションワゴン、BMW523iツーリングの3モデルは一長一短、どれを選んでも、それが試乗していったん納得した結果であれば、後悔しないと僕が保証します。もしもこれを読んで、3モデルに試乗し、よく考えて選んだけれども後悔したという方がいらっしゃったら、編集部を通じて僕に連絡をください。メールで謝罪しますから!
これだけ背中を押せば、今週末にいずれかのディーラーへ行く決心がついたでしょ? この3ブランドなら、貴方がこれだ!と思ったモデルを買えばいいんです。僕の過去記事「悩ましきかな、ドイツ車の購入」なんか読んじゃだめですよ。決断できなくなるから。最後に、天野さんは「燃費を最重要視する方には我々も将来A6にハイブリッドを投入する計画もありますから」とおっしゃってました。←これでまた決断鈍るー!
(Text by Satoshi Shiomi)