永ちゃん初の「やめちゃえ」か?
〜日産GT-R LM NISMOのWEC LMP1参戦取りやめについて〜

アフリカだったか、ひとたび祈り始めたら必ず雨天を晴天に変えることができる祈祷師がいるという。なぜなら晴れるまで祈りをやめないから。
日産がFFのレーシングカーによるWEC LMP1参戦を取りやめるという。「最初からダメだと思ってた」って人がたくさん出てきている。当初何もいわず、戦況がはっきりしてきた段階でこうした意見をいいだす人が出てくるのはよくあることだが、今回の場合、ほとんどの人が最初から懐疑的だったので、日産の計画自体がホントに間違っていたのかもしれない。現時点でやめるのならば。

「ほかと似ていないことは、それだけで価値である」といったのは、かの有名な......誰だっけ? 今思いついて適当に書いただけだが、こういう意味のことは昔から大勢がいってるはず。そういう意味で、僕はGT-R LM NISMOをカッコいいと思うし、好きだ。Audi R18はもっと好きだが。


判断の失敗を"損切り"する決断もあるだろうが、"ナンピン買い"することもできるはず。このまま意地でFFのレーシングカーによる参戦を続け、何年かかってもいいから、戦えるところまでもっていくという判断は、あらゆる見方をもってしてもないのだろうか。

まともにやったのでは難しいのであれば「FFの場合、レース後に50ラップボーナス加算!」とか、クイズダービーの「さらに倍!」的演出も真っ青の"性能調整"を寝技で獲得することはできないのだろうか? 欧州が得意なやつ。

この国の黎明期のモータースポーツに欠かせない「第2回日本グランプリで、たった1周だけスカイラインがポルシェの前を走った(しかも事前の約束で決まってた)」というエピソードは、その後いったい何年間日産にプラスに作用したか。

とはいえ、会社は社員だけじゃなくすべてのステイクホルダーのものだから、やったりやめたりを繰り返すのも仕方ないのかもしれない。けれど、すぐやめちゃう覚悟だから何度挑戦しても勝てないのかもしれない。なにしろ晴れるまで祈り続ければ成功率100%なんだから。やったりやめたりを繰り返すことによってかたまる印象面でのリスクをあまり軽んじない方がいいんじゃないだろうか?


そうやってなんとか頑張って、ゲテモノとかキテレツという現段階での評価を、後年出る責任者の自叙伝の第1章「サーキットでも社内でも笑い者」の材料としてほしい。「学校から帰ってきた息子が『机に〈やーいFF〉って書かれてた。お父さんFFって何? 悪いことなの?』といわれたときはさすがにやめようかと思った」とか。

典型的な"いうは易し"かな? ま、いうのが仕事だし、年末なのでお許しいただきたい。みなさん、よいお年を!

(Text by Satoshi Shiomi)