※写真はAudi A4のものです。
CarPlayについては前回の記事でも触れましたが、地図(Apple純正マップ)をはじめ、音楽(ポッドキャストも)や電話など、iOSデバイスのエッセンシャルな機能が車載モニターで操作できるというものです。カーナビも音楽プレーヤーも手に入るということ。対応アプリをダウンロードすればクルマのスピーカーでインターネットラジオを聴けるようになるのもメリットですね。導入に際し、植村係長もAppleとの折衝にかかわったそうです。想像どおり、Appleの要求は高かったようで、CarPlay機能のモニター上の見せ方などはもちろんのこと、ボリュームや選曲などをするうえでCarPlayに関係あるという理由で、ステアリングスイッチの感触などもAppleのチェックが入るのだとか。iOS用アプリ開発者からもよく聞くことですが、交渉に時間がかかるんだそうです。相変わらずタフな相手ですね。
それはともかく、イグニスで電話やメッセージ、それにマップなどを試し、問題なく機能しました。ただし、イグニスでCarPlayを利用するには、オプションのメモリーカーナビを装着しなくてはなりません。つまりCarPlayによってカーナビが不要になるのに、そうするにはカーナビを買わなくてはならないのです。またCarPlayは音楽プレーヤーとしても機能するわけですが、それもオプションのカーナビに備わっています。「金を貯めようと思えば、まずお金を貯めなくてはならない」という枝雀の落語のまくらを思い出します。
正直、現状のままだと「イグニスにはCarPlay要らねーじゃん」ということになってしまっています。CarPlayが真価を発揮するのは、モニターとスピーカーとSiri用のマイクだけが付いているクルマですが、現状そういうクルマはありません。植村係長は「日本ではiPhoneやiPadが人気で、iPhoneはスマホのシェアを5割前後獲得しているとはいえ、残り5割の方々が使えないインターフェイスのクルマにするわけにはいきませんので、自前のカーナビや音楽プレーヤー機能も必要です」とごもっともなお答え。
Android Autoにも対応して初めてクルマ側のカーナビをなくすかどうかという判断をすることになるのでしょうが、それでもパケット通信料のこともありますし、カーナビをスマホに頼るという判断は将来的にもなかなかしにくいだろうとおっしゃっていました。
しかも、スマホのカーナビはガーミンなどのPNDに近いシンプルな機能です。日本のユーザーは高機能なカーナビに慣れているため、スマホのカーナビ機能をモニターに映すことができるだけという状態には満足しない可能性もあります。だからこそ、CarPlayは自前の日本用カーナビを用意しにくいインポーター向けといえます。「モニターだけならなんとか用意できるでしょと。そうすれば電装品の負担が軽くなるから、そのぶん早くディーゼル入れてくださいな。右ハンドル入れてくださいな」という感じです。こう書くとどこにいってるのか、わりと限定されてきますが。Apple製品ユーザーと輸入車ユーザーはそれなりに被ってそうですしね。
ちなみに、イグニスにiOSデバイスをつなぎ、マップ機能を利用すると、測位に使うのはデバイス内のGPSではなく、クルマ側のGPSに切り替わるそうです。このため、デバイスをグローブボックスやセンターパネルの下のほうなどに入れておいても測位に影響はありません。Bluetooth経由でCarPlayを使うことができれば、デバイスをカバンに入れっぱなしでも使えるので便利なのですが、現状はライトニングケーブルで有線接続する必要があります。
正直CarPlayは始まったばかりで中途半端な部分もあります。ただし現状では新車を買ったら当たり前のように高価なカーナビも買うことになるわけですが、そのあたりのオプションが広がるかもしれないという意味で、十分意味のある装備なんじゃないでしょうか。
(Text by Satoshi Shiomi)
VWは一部モデルで標準のモニター付き純正オーディオ「Composition Media」がCarPlayとAndroid Autoに対応しています。