モータースポーツの幅広いカテゴリーにタイヤを供給しているヨコハマタイヤが、とくに情熱を注いでいるという日本のSUPER GT。その理由を、前回同様、ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル株式会社のお二人に伺った。 ----SUPER GTに賭ける理由は?

藤代:SUPER GTほどタイヤの戦いになっているレースは他にはありません。おそらく世界でもここが一番です。

----それは、なぜですか?

宮本:タイヤの選択が自由で、いろいろなタイヤメーカーが本気で戦っているのは、世界中でもこのSUPER GTだけなんですよ。

藤代:もちろん、自動車メーカーの戦いなのですが、このレベルの高いコンペティションを支えているのはタイヤなんです。実際、GT500ではタイヤの性能が如実に順位に現れていますからね。クルマも一流、ドライバーも一流、チームのスタッフも一流です。そういうパートナーと一緒になってタイヤを開発するのはある意味効率的です。それだけに、私どもにとってはとても魅力的な場所なのです。


---- SUPER GTで使われるタイヤにはどんな特徴があるのですか?

藤代:私どもにとって、ここSUPER GTに投入するのは最先端のタイヤです。勝つために、常に新しい技術にトライしてます。基本的にはGT500に主眼を置き、そこで得られた技術をGT300クラスに投入し、さらに市販車用やワンメイクタイヤへと応用していくという流れです。

----GT300クラス用のタイヤも他のレースとは違うのですか?

藤代:GT300のタイヤはGTマスターズやGTアジアと類似した構造です。しかし、タイヤの戦いでもあるSUPER GTでは、たとえばゴムは大きく違っています。

宮本:タイヤがワンメイクの場合は、どうしても安定性を重視する必要があります。一方、コンペティションの場合はギリギリまで追い込んでいかなければなりません。GT300用もギリギリ追い込んだ仕様なのです。


----Audi R8 LMS ultraに装着されるのは、どんなタイヤですか?

藤代:Audi R8 LMS ultraには、ポルシェ、マクラーレン、ランボルギーニと同じ、ミッドエンジン用タイヤを供給しています。

----専用ではないのですか?

藤代:基本的には1つのサイズにつき1つの構造を採用しています。実はこれ、技術的にはとても難しいんですよ。どのマシーンでも満足のいく高い性能を実現しなくてはならないわけですからね。しかし、このような供給を行いながら、GT300クラスでは、第1戦の岡山でヨコハマ勢が1-2フィニッシュをしています。クルマごとの専用設計ではなく、異なる車種に装着できる設計であっても、高いパフォーマンスを発揮できるように、私ども開発陣が日々努力しているのです。



----今シーズンからAudi Team Hitotsuyamaがヨコハマタイヤに変わりました。

藤代:彼らは昨年まで別のタイヤを使用していましたが、タイヤが変わるとマシーンのセッティングも大きく変わります。いまの段階では、マシーンをタイヤに合わせるという部分で時間が不足しているかもしれません。もちろん、マシーンは速いですし、ドライバーもふたりとも速いので、これからどんどん上に行くと思います。

----チームはどのようにタイヤを選択するんですか?

藤代:持ち込むタイヤに関しては、基本的には私どもからリコメンドさせてもらっています。それをフリープラクティスで確認して、予選に使うタイヤをチームが決定します。ちなみに富士には、ドライが硬めと柔らかめの2種類。さらにレインを3種類、インターミディエイトといって雨が少ないとき用を3種類用意しました。そのなかから、マシーン1台あたりドライが最大8セット、ウエットが最大10セット使用できます。


----Audi Team Hitotsuyamaに期待することは?

藤代:実は私自身、Audiオーナーですので、ヨコハマを履いたAudi R8が表彰台を獲得するのを見たいですね。

----Audi Team Hitotsuyamaとヨコハマの活躍に期待しています。

(Text & photos by Satoshi Ubukata)