ヨコハマタイヤとAudiとの協力は、モータースポーツの世界にとどまらない。私たちにとってより身近な量産モデルの分野でも両者の結びつきは強まっている。たとえば、このAudi S7 Sportbackにも、ヨコハマタイヤのテクノロジーが注ぎ込まれているのだ。 2010年に登場したAudiのラグジュアリー4ドアクーペ「Audi A7 Sportback」。これをベースに420psを誇る4L V8ツインターボエンジンの4.0 TFSIと7速Sトロニック、前後非対称ダイナミックトルク配分のquattro、リヤスポーツディファレンシャル、アダプティブエアサスペンションなどにより、極めてダイナミックな走りを手に入れたのが「Audi S7 Sportback」だ。


そのハイパフォーマンスを受け止め、走りのポテンシャルをフルに引き出すためにAudiが選んだのが、ADVANのフラッグシップタイヤ「ADVAN Sport」だ。

ドイツのアウトバーンを超高速で疾走することを考慮してつくられたADVAN Sportは、ドライ路面での卓越した性能に加えて、ウエット路面での確かなグリップ、さらに、乗り心地や静粛性を高い次元で実現するプレミアムスポーツカー向けタイヤなのだ。


そのサイドウォールには「AO」の文字が記されている。これは、「Audi純正承認タイヤ」、すなわち、標準装着タイヤとしてAudiが認めたことを表すもので、Audiが独自に定める基準をクリアした高品質のタイヤであることを意味している。

なお、RS 6 AvantやRS 7 Sportbackなど、quattro社が手がけるRSモデルでは、純正承認タイヤに「RO1」のマークが記され、そのひとつとしてADVAN Sportが名を連ねている。


Audiが工場から新車を世に送り出す際に純正承認タイヤを装着するのにはわけがある。たとえば、純正承認タイヤであれば、Audi車のポテンシャルをさまざまな状況下で引き出せるから。そのために、Audi純正承認タイヤはニューモデルの開発段階から企画され、ニューモデルと同時に開発が行われるという。つまり、そのモデルにもっともふさわしい性能を持つのがAudi純正承認タイヤというわけだ。

それほど重要な役割を持つAudi純正承認タイヤだけに、お墨付きを得るにはタイヤメーカーの基準に加えて、Audi独自の厳しい基準をクリアする必要がある。その数は最大50項目といわれており、たとえば、一般道において最長25,000kmに及ぶ長距離耐久テストを行ってドライとウェットの性能をチェックしたり、特別なコースでハイドロプレーニングのテストを行うなったりと、数々のテストが実施されている。

また、転がり抵抗や真円度なども厳しくチェックされ、燃費や乗り心地への影響を確認。さらに、Audiでは熟練のテストドライバーが乗り心地やハンドリングを自身の感性により評価し、Audiらしい走りが実現できているかどうかを総合的に判断するという。

こうしたチェックをパスしてAudi純正承認タイヤに選ばれたADVAN Sport。Audi向けの製品はすべて、愛知県にある横浜ゴム株式会社新城南工場で製造されている。

技術課課長の白土宏幸氏によれば、純正承認タイヤとしてAudiに提案される製品は、設計段階から高いスペックが与えられるだけに開発には時間がかかり、また、製造の段階でも通常の製品以上に厳しいチェックが行われるという。
しかし、そんなこだわりがあるからこそ、ADVAN Sportを装着したAudiのスポーツモデルはその本来の性能をさまざまなシチュエーションで発揮できるというわけだ。Audi純正承認タイヤに選ばれたADVAN Sportは、そのモデルにとってまさにベストマッチのタイヤなのである。

ドイツのAudiと日本のヨコハマタイヤが出逢うことで生まれた理想の走り。ADVAN Sportに記されたAOの文字は、ヨコハマタイヤが誇る優れたテクノロジーを象徴するものなのだ。


(Text by Satoshi Ubukata)