さいわいAudi車のオーディオは標準でもバランスが良く、気持ちのいいサウンドが楽しめます。一方、さらに高いクオリティを求める人には、メーカーオプションとしてBOSE(一部モデルでは標準)やB&O(=バング&オルフセン)のサウンドシステムが用意されています。どちらも、標準オーディオを上回るクリアでメリハリのあるサウンドを特徴とし、そのクオリティの高さには聞き惚れてしまいます。
ただ、メーカーオプションのサウンドシステムは、それなりのエクストラを払わなくてはならないのと、オプションが受注生産の場合は納車まで時間がかかるため。注文を諦めた人は少なくないはずです。中古車でAudi車を手に入れる場合ならなおのことで、オプションのサウンドシステム付きのクルマが見つかればラッキーですが、そううまくいかないのが実情です。
そこで、ワンランク上のサウンドを楽しみたい人のために、アウディ ジャパンが純正アクセサリーとして用意したのが、「Audi純正JBLサウンドシステム」です。
日本でも、レコーディングスタジオや映画館、コンサート会場といったシーンでよく目にするほどプロの支持を集めていますし、一般の音楽ファンにとっても憧れのブランドであり続けています。
そんなJBLのカースピーカーシステムをAudi車用にアレンジしたのがAudi純正JBLサウンドシステムです。
まずはAudi A4用がリリースされるということなのですが、単に純正スピーカーをJBLに交換すれば済むという話ではありません。クルマにあわせて最適なスピーカーを選び、スピーカーの取り付け板(バッフルボード)をつくり、さらに、室内空間にあわせてチューニングする必要があるのです。そのすべてが上手くいってはじめて、高いクオリティのサウンドが生み出せるというわけです。
私自身、スピーカー交換の経験は何度もありますが、販売店で試聴したときと実際にクルマに装着したときの印象が違うことが何度もありました。また、かえってバランスを崩してしまうこともしばしば。なかなか思いどおりにいかないのがスピーカーのグレードアップです。
Audi A4では、前後ドアのウーファーと、フロントドアのツィーターの計6個をJBLに交換することで、純正の標準オーディオを超えるサウンドを目指したといいます。
さらに大変だったのが、クロスオーバー・ネットワークの製作でした。クロスオーバー・ネットワークとは、低音を担当するウーファーと高音用のツィーターの性能をフルに発揮するために、それぞれに見あった信号を送り込む一種のフィルターです。汎用のクロスオーバー・ネットワークも用意されていますが、中村さんはAudi A4に最適なオリジナルのクロスオーバー・ネットワークをつくりあげました。
開発にあたっては、さまざまな種類のコイルとコンデンサーを組み合わせて、試聴する必要があり、そのたびに、自らハンダごてを持ってクロスオーバー・ネットワークを組み立て、また分解するという作業を繰り返したそうです。
そういった地味な作業を1カ月半ほど重ね、ついに完成したのがこのAudi純正JBLサウンドシステムです。「バランス重視の純正オーディオに比べて、音数が多い、シャープな音が楽しめるはずです」とは中村さん。
まずは標準の10スピーカーシステムから。ポップス、ジャズ、ロックと、いろいろな音楽を再生しましたが、実にバランスよくまとまっています。これだけ聞いているかぎり、とりたてて不満はありませんが......。
Audi純正JBLサウンドシステムがインストールされたAudi A4に乗り換えると、その違いは明らかでした。まず、ひとつひとつの音がクリアで生き生きとしています。それらの音が、目の前に広がる感じでした。とくに、伸びのある高音、女性ボーカルの美しさが際立ちます。
また、これまで隠れていた音も聞こえるようになり、中村さんがいう「音数が多い」とはこのことかと納得。迫力を増しながら、こもることのない中低音も、厚みのあるサウンドにつながっています。ジュラルミン製のバッフルボードが使われていますが、音に硬さはなく、また、音の響きも申し分ありませんでした。
それぞれの音が主張を強めながらも、決してバラバラではなく、まとまりがあるのは、"中村チューニング"の賜物でしょう。
このAudi純正JBLサウンドシステム、気になる価格は17万5350円(税込、取付工賃別)。JBLファンはもちろん、ワンランク上のサウンドを楽しみたい人には見逃せないのではないでしょうか?
次回は、この冬を安心・安全に乗り切るために欠かせないアイテムを紹介します(2013年10月10日更新予定)。どうぞ、お楽しみに!
(Text by Satoshi Ubukata)