世界最大級のエレクトロニクス・家電見本市「CES 2017」が、2017年1月4日から8日まで米国ラスベガスで開催された。 まず会場前のモノレール駅を降りると、青空を突き刺さすようにディスプレイされたAudi Sportの「フォーミュラE」が迎えてくれた。同チームの専属技術パートナーであるサプライヤー、「シェフラー」のパビリオンだ。

ちなみに期間中は、市内ホテルを会場にシミュレーターを用いたフォーミュラEの仮想レースも開催された。
さて、Audi本体の出展である。昨2016年にはパビリオン内にブースを設けてらいたが、今年は屋外にコーナーが構えていた。半導体企業「NVIDIA」とのAI(人工知能)搭載自動運転技術デモンストレーションのためである。

用意されたのは、Audi Q7「ディープラーニング・コンセプト」だ。

解像度2メガピクセルの「モービルアイ」社製フロントカメラが、NVIDIA Drive PX2プロセッシング・ユニットと連携。工事現場などに使われる臨時信号を認識し、的確な自動ステアリング操作を行う実演である。

"生"ドライバーの運転によって、あらかじめ正しい周回ルートを記憶したAudi Q7ディープラーニング・コンセプトは、目前に現れる臨時信号を感知。迂回路に自ら入ってゆく。

ドライバーズシートに人間不在のまま来場者を乗せてアウディが周回する姿はかなり印象的だったようで、連日多くのメディアが押しかけた。


参考までにAudiとNVIDIAの協力のスタートは2005年に遡る。車両としては2007年Audi A4にNVIDIA製チップが搭載されて以来の関係である。さらに今回のCES基調講演では、NVIDIAのジェンスン・ファンCEOが、Audiとのさらなる長期パートナーシップを表明した。

なお、2017年中に発表される新型Audi A8にも、ディープラーニング技術の一部が初搭載される。Audiによると、ディープラーニングは、開発段階での障害物などを想定した認識セッティングが大幅に簡略化できるメリットもあるという。

その新型Audi A8は、こちらもNVIDIAの協力による「トラフィック・ジャム・パイロット」を搭載する。 SAEインターナショナルが定める自動運転段階のうちレベル3(加速・ブレーキ・ステアリング操作をシステムが制御し、必要なときのみ運転者が対応)を実現する。作動範囲は時速35マイル(約56km/h)以下だ。

蛇足ながら前述の会場デモ、臨時迂回信号の出し入れは毎回スタッフの手作業に頼っていた。車輪こそ付いているものの、米国スタイルなので大きさが半端ではない。

Audi Q7「ディープラーニング・コンセプト」の同乗試乗会は、最終日などは前日から満員になる盛況ぶり。次々とビジターが訪れて、信号移動係のお兄さんは休んでいる暇がない。


10℃を切る気温のもと、写真にも写っているお兄さんはさぞ寒かっただろう。

AUDI AG様、次は臨時信号の出し入れも、ついでに自動化してあげてください。

(文と写真=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)