日本人として2人目のルマンウィナーであり、プライベートでアウディ RS6を所有するレーシングドライバー、荒聖治選手に8speed.netがインタビューしました!!4年ぶりに望んだルマン24時間レース、今シーズン絶好調なスーパーGT選手権、そして愛車RS6について等、いろいろな話しを伺ってきました。まず今回は6月に行われたルマン24時間についてです。
日本人として2人目のルマンウィナーとなった荒選手。今年、4年ぶりにサルトサーキットに帰ってきた。2004年のチャンピオンチームであるチーム郷と自動車専門誌『NAVI』がジョイントしてLMP2クラス制覇を目指した。結果についてはすでにご存知の方も多いと思うが、残り1時間15分を残してまさかのリタイアだった。

インターネット上で見つけた動画でクラッシュシーンを確認した。サルトサーキット名物のロングストレートの途中にあるシケインの手前で、急に車体が左に曲がりクラッシュ。そのままシケインにあるタイヤバリアにリアから突っ込んでいった。あれだけ壮絶なクラッシュにもかかわらず、荒選手は怪我一つ無かった。「僕は2つラッキーだったと思うんです。一つ目は、クルマが事故でも安心できるポルシェ(スパイダー)だったこと。しっかりとしたクルマだったので助かったと思います。もう一つはクラッシュした時に車体が宙に浮かなかったこと。この2つのおかげで怪我も無く無事に済んだと思いますね。」(注:日本で活躍しているB・トレルイエ選手は今年のルマン24時間レースで、高速クラッシュを喫した際に車体が宙を舞いマシンは大破した。)

今回のクラッシュは、荒選手として初めての300km/hオーバーのクラッシュだったそうだ。「でも冷静でしたよ。クルマが左を向いてサイドウォールに突っ込みそうになった時、ステアリングを握ってた手をとっさに放しました。 その直後ぶつかった衝撃とともにステアリングが外れた。放してて良かったと思いました。次にクルマが宙を浮いてしまうのではと思い、両手を胸の前でクロスしてシートのバックレストに押し付けて踏ん張りました。幸い宙を舞うことはなかったので良かったです。最後にクルマのリアからタイヤバリアに突っ込むことに気づき、首を守るようにしたんです。」動画で確認したところわずか8秒前後の出来事だ。冷静に対処した荒選手の話を聞いて鳥肌が立った。

4年ぶりのルマンはどうでしたか?「レースのオーガナイザーもスタッフも、そして観客の人たちも、『2004年のチャンピオンがルマンに帰ってきた』と大歓迎してくれたんです。正直驚きつつも、とても嬉しかったです。」やはり伝統と格式のあるレースだけあり、チャンピオンに対する尊敬の念は忘れることは無いのだろう。
クラス2位が目前だっただけに、今回の結果はもちろん悔しいはずだろう。「やっぱり悔しいですが、久しぶりに参戦していきなり勝てるほどルマンは甘く無いですね。ブランクのある人間を、そう簡単にルマンは認めてはくれないですよ。でも今回の結果で来年以降もチャレンジしたいと燃えてきました。もし今回4年ぶりに参戦していきなりクラス2位の結果だったら、ここまでルマンに対しての想いも強くならなかったと思う。今回の結果がルマンに対する想いを更に強くしました。」

1923年から続く伝統のレース、ルマン24時間レース。ワークスもプライベーターも無く、誰もがそこで走ることを夢見る。良いクルマを入手したからと言って簡単に勝てるほど甘くない。練習走行から予選・決勝まで、いかにミスをしないで走りきるかが勝負の分かれ目になる。荒選手の言葉の端々からルマンで勝つことの難しさがひしひしと伝わってきた。と同時に、冷静に今年のレースを振り返りながら、来年に向けての熱い想いを語る荒選手を見てると、来年のルマンでの活躍を今から期待してしまう。

次回は、今期好調のスーパーGT選手権と、愛車であるRS6についてです。

◆撮影協力:Life

(Text by M.MAKIMURA)