エッガーはアウディデザインの組織を再編するとともに、新しい方向性を示しました。第一に、モデルシリーズ間で、より明確な差別化が図ること。第二に、未来のモデル世代は、テクノロジーをデザインにより積極的に表現すること。さらに、エクステリアとインテリアにより密接な関係を持たせることなどです。この新しい戦略的を具現化したのが、コンセプトカーのアウディ クロスレーンクーペでした。
新しいデザイン戦略では、テクノロジーとデザインの間に強力な関係を構築することに焦点を当てています。エッガーは、「デザインと技術が完璧に噛み合ってこそ、アウディの自動車は説得力を持つ」と信じています。テクノロジーはもはや閉じ込める対象ではなく、表に提示すべき存在となっています。今回はじめて、テクノロジーとデザインが調和することによって、内在する技術的要素を強く示唆するものとなり、本物の価値を備えた製品としての新たな次元を生み出します。
純粋なテクノロジーと素材の革新的な組み合わせは、アウディ クロスレーンクーペのデザインに反映されました。デザイナーと軽量構造の専門家が協力してつくり上げたマルチマテリアルスペースフレームは、このコンセプトカーにおいて、シングルフレームグリル、ボンネットのインテーク、ドア解放時に現れるシル、Aピラー、コックピット内のカーボンストリップなど、各所に顔を覗かせています。
インテリアに採用された明確でクリーンな表面と、数を抑えたコントロールスイッチによって、ドライバーは運転に集中することができます。キャビンは、ドライバーを中心に設計されています。「アウディデザインが採用する最新の戦略は、明確さを強調し、基本的な要素に焦点を当てています」と、エッガーは総括しています。
ミュンヘンに設置されたコンセプトデザインスタジオは、先駆的な試みとして、才能溢れるクリエーターの作業プロセスに、かつてない自由度を与えています。自動車デザイナーとプロダクトデザイナーは、お互いの創造的なアイデアから刺激を受けます。かつて自動車工場があった場所で、デザイナーたちはアイデアを自由に追求します。ここでは、ビジョンが現実の形に変化しているのです。
ミュンヘンのスタジオで大きな効果を上げたこのスタジオ哲学は、インゴルシュタットのデザインスタジオにも移植されることが決定しました。ヴォルフガング・エッガーのスタジオコンセプトにより、自動車デザインの3つのセグメント、すなわちインテリア、エクステリア、カラー＆トリムという各分野は、インゴルシュタットのアウディAG本社においてより緊密な連携を取るようになるでしょう。そのために、初期のクリエイティブな段階において、全体論的な視点に基づいて自動車の形が決定されます。
「インゴルシュタットのデザインスタジオにとって、ミュンヘンのコンセプトデザインスタジオは、ときには挑発的に機能し、革新的なデザインを生み出す可能性を刺激する衛星のような役割を持っています」と、ミュンヘンにあるコンセプトデザインスタジオの責任者であるスティーブ・ルイスは語っています。この新たな哲学によって、ひとりのデザイナーでは決して生み出すことのできない、新しいニュアンスを創出する絶え間ない流れが誕生しています。
「最高のアイデアを生み出すことができるのは、チームなのです」と、エッガーは述べています。コンセプトカーであるクロスレーンクーペは、ミュンヘンのデザインスタジオと、インゴルシュタットにあるスタジオの共同作品であり、アウディのQファミリーの将来像も示唆するものとなっています。
このような各要素を反映させ、A、R、Qの各モデルシリーズ間の差別化が進められます。デザインチームは、まずQファミリーに集中的な作業を進めています。このモデルシリーズは頑丈で、他車と異なる独特な外見を備えています。アウディデザインは、すべてのQモデルを特徴づけるパワフルな存在感を強調するため、シングルフレームグリルをさらに立体的に変更しています。彫刻のような外観を備えた3次元のシングルフレームグリルは、Qファミリーのエクステリアデザイン全体において中心的な要素です。
このシングルフレームグリルは、パリモーターショーで展示されたコンセプトカー、アウディ クロスレーンクーペに採用されました。脱着式のセンタールーフエレメントも大きな特徴で、アーバンSUVがオープントップのオールラウンダーへと変化します。
（アウディ ジャパンのプレスリリースをもとに作成）