Audi A4シリーズに新設定された「Audi A4 1.4 TFSI sport」をドイツで試乗。1.4 TFSI+7速Sトロニックの走りをチェックする。 新型のデビューから8カ月あまり、Audi A4のラインアップが出揃った。Sedan、Avantとも、発売時は2.0 TFSI(190ps)を搭載するFFと、252psの2.0 TFSIを積むquattro、そして、そのそれぞれにデザインや走りがスポーティな"sport"を設定。ラインアップは次のとおりだった。

Audi A4 Sedan/Avant 2.0 TFSI
Audi A4 Sedan/Avant 2.0 TFSI sport
Audi A4 Sedan/Avant 2.0 TFSI quattro
Audi A4 Sedan/Avant 2.0 TFSI quattro sport

その後、クロスオーバーのallroad quattroが加わり、さらに、スポーツモデルのS4、そして、新たなエントリーグレードとして、1.4 TFSIを採用するFFが登場。代わりに2.0 TFSI系のsportが廃止されたが、ラインアップは一気に充実する。以下が最新のラインアップである。なお、2.0 TFSI系ではFF、quattroともにS lineパッケージを選ぶこともできる。

Audi A4 Sedan/Avant 1.4 TFSI
Audi A4 Sedan/Avant 1.4 TFSI sport
Audi A4 Sedan/Avant 2.0 TFSI
Audi A4 Sedan/Avant 2.0 TFSI quattro
Audi A4 allroad quattro
Audi S4 Sedan/Avant


なかでも見逃せないのがAudi A4 Sedan/Avant 1.4 TFSI sport。500万円を切るプライス(Sedanの場合)と、スタイリッシュなエクステリアにより、幅広い層を取り込むことが期待される重要なグレードだ。概要は
私を含め、このクルマに対する最大の関心事は「1.4Lで大丈夫か?」。B8と呼ばれる先代には1.8Lが搭載されたことがあるが、1.4Lは過去最小の排気量である。その一方で、最高出力150ps、最大トルク250Nmという数字が自然吸気2Lに匹敵するスペックであることを考えると、心配は要らないのかもしれない。

さっそく走り出すと、予想と違ってモッサリとしておらず、意外に軽い動きを見せる。FFの2.0 TFSIよりもさらに90kg軽いことや、最終減速比が大きいことなどが貢献しているのだろう。余裕こそないものの低回転域でもトルクは必要十分だ。エンジン回転を上げていくと、2000rpm手前あたりから力強さが感じられるようになり、2300rpmを超えた頃にはさらに活発さを増す印象である。

7速Sトロニックとの組み合わせでは、80km/hあたりで7速に入る。このときのエンジン回転数は1400rpm弱。ここからスッと加速するような場面では、やや大きめにアクセルペダルを踏み、シフトダウンを誘う必要があるが、それでもSトロニックの動きはスムーズで、多段化のわずらわしさはない。このようなシチュエーションでは、この1.4 TFSIはやや大きめのノイズを発するが、それも慣れの問題で、もちろん巡行に戻ればキャビンは十分静かである。


ドイツといえばアウトバーンを走る機会も多いが、本線への合流や追い越しの場面でも加速は十分。アクセルペダルを踏みつけてやれば5000rpmあたりまで勢いが続き、シフトアップを繰り返すことで160km/hくらいまでは不満のない加速を見せるから、車線変更をためらうこともなかった。

130km/hを超える速度域でもAudi A4 1.4 TFSI sportの直進安定性は優れており、安心して高速を保てるのがうれしいところ。スポーツサスペンションにより高速域でのフラット感も上々だ。試乗車には標準より1インチ大きな245/40R18サイズのタイヤが装着されていたが、比較的スムーズなドイツの路面ではバタつくこともなく、終始快適な乗り心地を示した。

それだけに、速度制限が100km/hの日本の高速道路なら、加速でも走行安定性でも、余裕が生まれるに違いない。


ということで、エンジンは1.4Lでも十分な動力性能を備えているAudi A4 1.4 TFSI sport。手頃な価格でAudi A4を手に入れたい人にとって、日本への導入は朗報となるはずだ。

一方、日本仕様の場合、Audi A4 Sedan/Avant 1.4 TFSI、および、Audi A4 Sedan/Avant 1.4 TFSI sportにはアダプティブクルーズコントロール(ACC)やアクティブレーンアシストが標準では装着されず、"セーフティパッケージ"として追加すると前者では69万円、後者でも43万円のエクストラが必要だ。そうなると、Audi A4 Sedan/Avant 2.0 TFSIとほぼ同じ価格になってしまうのが悩ましいところ。ACCなどが不要という人には断然1.4 TFSI搭載グレードをオススメするが、ACCがほしいという人は初めから2.0 TFSIを狙ったほうがいいかもしれない。

いずれにしても、魅力的な選択肢が増えたのは事実で、これまで価格の点でAudi A4の購入に二の足を踏んでいた人は、この機会にAudiディーラーに足を運んでみてはいかがだろうか。

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Audi Japan)