いまや定番のクロスオーバーモデル「Audi A4 allroad quattro」を試乗。ultraテクノロジーを導入した新開発のquattroもチェックする。 すでにニュースでもお伝えしたとおり、Audi A4 Avantがベースのクロスオーバーモデル「Audi A4 allroad quattro」 がモデルチェンジし、日本でも2016年9月から販売が開始された。

日本においては、先代のAudi A4 allroad quattroは2010年11月に限定車として販売され、その後も何度か限定販売されたのちにカタログモデルとなった歴史を持つ。その人気ぶりから、新型は最初からカタログモデルとして導入されることになった。


その概要は前述のニュースをご覧いただくとして、コントラストカラーのホイールアーチや縦のバーを強調したシングルフレームグリル、udi A4 Avantよりも余裕のあるグランドグリアランスなど、ひと目でallroadとわかるルックスを受け継いだ新型は、以前にも増してその存在感を強めたように思える。

一方、インテリアは基本的にはAudi A4と変わらない。試乗車は、標準の"ダイヤモンドペイントフィニッシュ"のデコラティブパネルに代えて、Audi exclusiveのウォールナットブラウンパネルが装着されシックな印象。バーチャルコックピットはオプションである。


細かいことをいえば、センタークラスターにAudi A4 Avantとの違いが発見できる。ヒルディセントコントロールのスイッチが追加されているのだ。アウディ ドライブセレクトのメニューに「Offroad」が加わっているのもAudi A4 allroad quattroの特徴である。

ところで、新型Audi A4 allroad quattroでは、ultraテクノロジーを導入した新開発の4WDシステムが採用されたのが気になるところ。Audi A4/A4 Avantのquattroが機械式センターディファレンシャルを採用するのに対して、このAudi A4 allroad quattroでは電子制御油圧多板クラッチを搭載している。

このquattroは前輪には常にトルクを伝える一方、後輪には電子制御油圧多板クラッチにより必要なトルクを伝達。状況によっては、この油圧多板クラッチとリヤディファレンシャルに内蔵したクラッチをリリースすることで完全に前輪駆動として走行できる。

また、アウディ ドライブセレクトにより、quattroの特性を変更することが可能で、たとえばダイナミックモードではより早く4WDに切り替わるし、オフロードモードなら常時4WDでの走行が可能になる。


この新しいquattroがどんな走りをもたらすのか、そのあたりもチェックしながら、さっそくクルマを走らせることにしよう。

Audi A4 allroad quattroに搭載されるのは、最高出力252ps、最大トルク37.7kgmの2.0 TFSIエンジン。これはAudi A4/A4 Avantのquattroと同じスペックで、50kg重量が嵩むとはいえ余裕ある加速を見せるのは容易に予想できる。

案の定、Audi A4 allroad quattroは、アクセルペダルを軽く踏みながらの発進でも十分に力強い。2.0 TFSIは1000rpmを超えたあたりからすでに豊かなトルクを発揮し、ふだんの運転なら2000rpm以下で事足りてしまうほど。一方、ラフにアクセルペダルを踏めば勢いよく加速するが、そんな場面では前輪だけでなく後輪がよく踏ん張り、ホイールスピンやESCの作動とは無縁なのがquattroらしいところだ。

さらにアクセルペダルを踏んでいけば、1680kgのAudi A4 allroad quattroを気持ちよく加速させ、胸のすく加速は6000rpm超の高回転まで続く。毎度のことながら、これで2Lとは......TFSIエンジン恐るべし!

しかもこのAudi A4 allroad quattro、高速巡航時にはDIS(オンボードコンピューター)の平均燃費は17km/L台を示している。JC08モード燃費の14.6km/Lを上回る数字である。最新のAudi A4には、優れたエアロダイナミクスのほか、さまざまな効率化技術が投入されているのが功を奏しているのだろう。

さらに、状況に応じて、前輪のみを駆動する新しいquattroシステムもこの低燃費に貢献しているに違いないが、実際に運転していても前輪駆動と4WDの切り替えの際にショックやギクシャクした動きなどが発生することはなく、ドライバーがFFか4WDを意識することもない。このあたりは、長年4WDに向き合ってきた経験が物を言うのだろう。


一方、ハンドリングは従来の縦置きquattroとは少し印象が異なる。素直な動きを見せるものの、基本的には前輪駆動に近い感覚。これまでの縦置きquattroのように、アクセル操作で積極的に曲げていく感覚とは異なるものだ。もちろん、特性は違っていても、高速道路での高い安定感や、滑りやすい路面を通過したときに挙動の乱れが少ないといったquattroのアドバンテージは失われてはいない。

最低地上高が30mmアップしたAudi A4 allroad quattroなら、写真のようなラフロードでも躊躇なく踏み入れられるのがうれしいところ。さらにquattroのおかげで、この程度の道なら走破性に不安はない。

反面、Audi A4 Avantに比べるとロールやピッチングといった動きが気になる場面があり、また、目地段差を超えるようなときにはショックを遮断しきれないこともある。それでも、乗り心地の快適性には合格点が与えられるのだが......。

ちなみに、ドイツで試乗したAudi A4 allroad quattroには、ダンピングコントロール付きサスペンションが装着されていて、高速でのフラット感を確保しながら、さらに快適な乗り心地を示していた。日本ではダンピングコントロール付きサスペンションの設定がないが、ぜひとも選択できるようにしてほしいものだ。


多少気になる部分はあるものの、全体としてはとても魅力的な仕上がりを見せるAudi A4 allroad quattro。同じエンジンを積むAudi A4 Avant 2.0 TFSI quattroとの価格差がわずか32万円ということもあり、どちらを選ぶか大いに悩みそうだ。

(Text & Photos by Satoshi Ubukata)