まもなくドイツでデリバリーが始まるAudi最速のAvant、「Audi RS 6 Avant」に試乗。短時間の試乗ながら、Audi S6とは異なる世界を垣間見ることができた。

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Audi RS 6 Avantに試乗できたのはラッキーだった。

試乗したのは"ヴェルターゼー"からミュンヘンに向かうルート。ヴェルターゼーとはオーストリアの湖で、ここでは毎年5月に「GTIミーティング」が行われ、ゴルフGTIをはじめ、さまざまなフォルクスワーゲンやAudiが集結する。そのイベントの帰りの足として、quattro GmbH(クワトロ社)がAudi R8やRS 5、そして、このRS 6 Avantを用意してくれていたのだ。

僕が選んだのは、日本未導入のAudi RS 6 Avant。もちろん、これが初試乗だ。ただ、実際にドライブできたのはオーストリアのアウトバーン(130km/hの速度制限あり)で、距離も数10kmのチョイ乗り。おまけに、途中からは雨に見舞われ、残念ながらその実力の半分も確かめられなかったと思う。それでも、S6とは別の世界を体感できた。


Audi RS 6 Avantは、初代が2002年、2代目が2008年にデビュー。2013年に登場した最新版は3代目ということになる。2代目ではAvantに加えてセダンが用意されたが、3代目は初代同様Avantのみのラインアップだ。

モデル概要は
コックピットを覗くと、ハニカム状のステッチが施されるスポーツシートがスポーティかつ豪華な雰囲気を高めている。フラットボトムのステアリングホイールも、スポーツモデルには欠かせない演出のひとつだ。
さっそくスタートボタンを押してエンジンを目覚めさせ、パーキングエリアからアウトバーンに合流する。ドライバーとパッセンジャー、そして2人分の荷物を合わせて2100kgを超えであろうRS 6 Avantだが、アクセルペダルをわずかに踏むだけで軽々とその巨体を加速させる。エキゾーストノートは思いのほか大人しく、S6同様、A6シリーズのラグジュアリーモデルという印象を受ける。

ところが、アクセルペダルを深く踏み込んでやると、4.0 TFSIエンジンからは一気に極太のトルクが溢れだし、みるみる先行車に近づいていく。トルク特性はほぼフラットで、どの回転からでも怒濤の加速を味わうことができるのもこのエンジンのすごいところ。とくに2800rpmから上では、勇ましいエキゾーストノートがキャビンに響きわたり、ドライバーのスポーツ心を刺激する。

ちなみに、アウディ ドライブセレクトでダイナミックモードを選ぶと、さらに低い回転から野太いエキゾーストノートを楽しむことができる。


アウディ ドライブセレクトでオートモードを選択するかぎり、やや硬めとはいえ、乗り心地は十分快適なレベルに保たれる。一方、ダイナミックに切り替えると、明らかにハードな印象に変わり、オーストリアのアウトバーンでは、荒れた路面から伝わるショックが気になった。サーキットやワインディングロードでのスポーツドライビングに適した設定なのだろう。まあ、オートモードが優秀なぶん、スポーツモードはこれくらい性格に差があったほうがいい。

21インチタイヤを履くため、路面の影響を受けてステアリングが取られることもあった。「ただ速くて安楽なクルマではない。なめてかかるなよ!」と、RS 6 Avantが主張しているかのようだ。


アウトバーンだけのドライブだったため、果敢にコーナーを攻めるチャンスはなかったが、前後非対称トルク配分のquattroとリアスポーツディファレンシャルがもたらすハンドリングにアンダーステアの文字はない。

S6の延長ではなく、別次元のスポーツ性を手に入れたRS 6 Avant。骨っぽいところが一番の魅力ではないだろうか?

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Volkswagen Group Japan)