2014年1月14日にデビューした「Audi A3 Sedan」を北海道で試す。

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通常この季節のプレス試乗会は、雪を避けて東京近郊で行われることが多い。しかし、アウディ ジャパンはあえて雪の北海道を選んだ。

Audi A3 Sedanには、FFの1.4 TFSI、1.4 TFSI cylinder on demandに加えて、4WDの1.8 TFSI quattroの3グレードが設定されている。詳細は
1月中旬のある日、とかち帯広空港に降り立った1to8.net取材班は、ベルーガブラウンの試乗車をピックアップ。タイヤは標準と同サイズのウインタータイヤに交換済みである。
運転席に乗り込むと、見慣れた眺め。それもそのはず、基本的にはSportbackと同じデザインが、Sedanにも受け継がれているのだ。
さっそく向かったのは「十勝スピードウェイ」。敷地内に試乗用の特設コースが設けられているのだ。

帯広空港から十勝スピードウェイまでの一般道はほぼドライ。北海道のなかでもこのあたりは雪が少ないそうだ。スポーツサスペンションが装着されているうえに、オドメーターの数字がまだ少ない1.8 TFSI quattroは乗り心地がやや硬めだが、quattroならではの高い接地感がすぐに伝わってくる。

180psを発揮する1.8 TFSIエンジンは、280Nmの最大トルクを1350rpmという低回転から絞り出すだけに、3名乗車でも加速には余裕がある。流れに乗って走るだけなら、2000rpm以下で十分まにあう。一方、5000rpmを超えても力強い加速を見せてくれるおかげで、遅いトラックを追い越すような場面でも躊躇する必要はない。

しばらく走り、十勝スピードウェイに到着する。さすがに一般道から脇道に逸れると雪道が待っていた。さらに進むと全面雪で覆われたメインパドックにたどり着いた。パイロンで設定されたスラロームコースは十分なマージンが確保されていて、quattroの実力を試すには打ってつけだ。


A3シリーズに搭載されるquattroは第5世代のハルデックスカップリングを使った4WDで、通常は前輪にほとんどのトルクを配分する一方、前輪にスリップが生じると後輪への駆動力を増やしてトラクションを稼いでいる。この手の4WDシステムは欧州車によく見られるものだ。

まずは、ESC(スタビリティコントロール)をオンのまま走り出すが、おとなしくアクセルペダルを踏むかぎりは4輪がしっかりと雪を捉え、ESCの出る幕はない。その安定感の高さはFFとは明らかに違う。

コースに慣れたところでペースを上げていくと......走行状況にあわせてリヤに駆動力が配分されるはずなのだが、その制御が実に巧妙なため唐突な動きはなく、よほど無理なスピードでコーナーに進入しないかぎりはESCのお世話になることもない。スムーズで安定感が高いドライブが楽しめるのだ。

そして、ESCをスポーツモードに切り替え、トラクションコントロールをオフに。この状態でアクセルペダルを深く踏み込むと、タイヤが派手に空転し、その様子からダイナミックにトルク配分が変化しているのが実感できる。いざというときにはESCが介入するが、その頻度が少ないのも、quattroの制御が優れている証だろう。

とにかく自然でスムーズ。Audiの長年にわたる4WDの経験が、このA3 Sedanにも生かされているというわけだ。


そんなA3 1.8 TFSI quattroだけに、十勝スピードウェイから一般道に戻る頃には信頼感が高まり、スノードライブへの不安は薄れていく。あえて脇道に逸れて雪道を選んでも、高い走行安定性のおかげで運転には余裕が生まれる。


もちろん、最新のウインタータイヤなら、FFでも安全に雪道を走ることはできるが、この安定感、そして、安心感はやはりquattroならではもの。もちろん、quattroはコンディションの悪い道路で安定感を発揮するだけでなく、クルマをスポーティに走らせる実力も兼ね備えている。

これが400万円をわずかに超える価格で手に入るというのは、まさに朗報である。


そうこうしているうちに日が傾き、試乗時間は終わりに近づいていく。せっかく北海道まで来たのだからもう少し試乗したい......というわけで、1to8.net取材班は、A3 1.8 TFSI quattroとともに東京を目指すことにした。

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Hiroyuki Oshima)