Audiのラグジュアリー4ドアクーペ、Audi A7 Sportbackがマイナーチェンジ。何が変わったのか、プレス試乗会でさっそくチェックした。 すでに
アイビスホワイトのボディカラーがまばゆい試乗車には、オプションの20インチアルミが奢られていて、新デザインのヘッドライトやワイドになったシングルフレームグリル、そして、左右のエアインテークがシングルフレームグリル下で連結されたデザインのフロントバンパーなどと相まって、マイナーチェンジ前に比べより精悍な印象になった。

Audi A8に装着されて話題となった「マトリクスLEDヘッドライト」は2.0 TFSI quattroにオプション、この3.0 TFSI quattroでは標準装着である。


リヤからの眺めも、リヤLEDテールライトやバンパーのデザインが変更になったことでスポーティな雰囲気を強めている。その一方、Audi A7 Sportbackの特徴といえるエレガントなフォルムはそのまま受け継がれており、これからも多くの人を魅了するに違いない。


インテリアには大きな変更はないが、シフトレバーが新しいデザインになるなど、細かいところで改良が行われている。ちなみに、試乗車には「ビューフォートウォールナット」と呼ばれるオプションのデコラティブパネルが装着されていて、ヌガーブラウンのミラノレザーシートとは抜群のコンビネーションだった。


「これを待っていた!」という人が少なくないのが、新しいリヤシート。これまでは2人掛けだったが、Audi A7 Sportbackでは3人掛けに改められ、乗車定員が5名になったのだ。一方、Audi S7 SportbackとAudi RS 7 Sportbackは乗車定員はこれまでどおり4名である。


そして、Audiが誇るインフォテインメントシステムの「MMI」が進化したのも見逃せないポイントだ。最新のAudi A7 Sportbackでは、すでにAudi A3に導入されている「Audi connect」と呼ばれるテレマティックサービスが利用できるようになった。モバイルネットワーク(ソフトバンクの3G回線)を使って駐車場や天候の情報が入手できたり、Google Earthが利用できる。

また、車内でWi-Fiが利用できるのも特徴のひとつだ。さらに、コンシェルジュサービスの「Audi connect Navigator」を使えば、オペレーターとの会話により、目的地設定やホテル/レストランの予約が簡単に行える。


また、マイナーチェンジ後は、メーター内の液晶ディスプレイに地図を表示することが可能になった。細かいところでは、センターコンソールにUSB端子が用意され、Audi製の専用ケーブルを使わずにiPhoneやiPodが接続できるようになったのもうれしい点だ。
搭載される3.0 TFSIエンジンは、最高出力が310psから333psにアップ。さらに、直噴の噴射圧を200Barに引き上げるとともに、マルチポイントインジェクション(MPI)を併用することで、効率の向上などを実現している。

組み合わされる7速Sトロニックも、アクセルをオフにしたときに自動的にクラッチを切り惰力走行するコースティングモードを搭載したり、クルマが完全停止する前(2km/h)にアイドリングストップする機構を採用することで、さらなる低燃費を目指した。実際、Audi A7 Sportback 3.0 TFSI quattroの燃費(JC08モード)は11.0km/Lから12.6km/Lに向上している。


......というように、実はいろいろ細かいところが変わっていたAudi A7 Sportback 3.0 TFSI quattro、運転してすぐに感じたのがその静粛性の高さ。とくに高速走行時の風切り音が低く抑えられていることに気づいた。それもそのはず、今回のマイナーチェンジでは、フロントおよびフロントサイドウインドーに「アコースティックガラス」を採用し、とくに風切り音として耳障りなノイズを低減したのだという。

これにquattroが誇る優れた走行安定性が加わることで、高速走行時のスピード感が低く感じられ、ゆったりリラックスして運転できるのは、長距離ドライブには好都合だ。乗り心地はマイルドで、高速走行時のフラット感もまずまず。ただ、個人的にはもう少しダンピングを効かせた味付けのほうが好みかもしれない。ちなみに、日本仕様のAudi A7 Sportbackの場合、アダプティブエアサスペンションの設定がなく、アウディ ドライブセレクトでサスペンションの特性を変更できないのが惜しいところだ。


3.0 TFSIエンジンは相変わらず力強く、1000rpmを超えたくらいからすでに豊かなトルクを発揮する。1900kgのAudi A7 Sportback 3.0 TFSI quattroが相手でも、あらゆる場面で十分な加速を見せてくれるのだ。心なしか、アクセルペダルを踏み込んだときのレスポンスが向上しているようで、燃料噴射システムの変更が効いているのかもしれない。

スーパーチャージャー付きとはいえ、低中回転ばかりではなく、高回転が得意なのもこの3.0 TFSIのいいところで、4000rpmからの吹け上がりは気持ちいいのひと言。そのエンジンパワーをしっかりと受け止め、路面に吸い付くような感覚のquattroの走りが、安心感を高めてくれる。

残念ながら、今回の試乗ではマトリクスLEDヘッドライトの効果を試す機会はなかったが、どんなシチュエーションでもエンジンに余裕があり、安心して走れるAudi A7 Sportback 3.0 TFSI quattroの実力を確かめることができた。余裕あるキャビンと広いラゲッジスペースも自慢のAudi A7 Sportbackだけに、長距離ドライブに連れ出すには、格好の一台といえるだろう。

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Hiroyuki Ohshima)