AudiのプレミアムコンパクトSUV「Audi Q3」がマイナーチェンジ。そのフィーリングを試乗会でチェックした。 派手さはないし、Audi A1やAudi A3よりも高価格であるにもかかわらず、「My First Audi」として選ばれることが多いというこのAudi Q3。そんな"隠れた"人気モデルがマイナーチェンジし、日本にも上陸した。

マイナーチェンジの内容は
エクステリアで見逃せないのがテールライト。デザインが変更されたうえに、ウインカーが流れるように点滅する「ダイナミックターンインディケーター」を採用したのだ。Audi Q3はリヤだけだが、ルームミラーで後続車をチェックしていると、乗員が指を差しているのをよく目にしたから、その注目度はかなり高いようだ。
それに対してインテリアの変更は控えめだ。エアコンの吹き出し口下にピアノブラックのパネルが装着されたり、吹き出し口の開閉ダイヤルにメッキパーツが追加されたり、空調の温度設定スイッチのデザインが変わったり......と、マイナーチェンジ前の車両とよく見比べなければ気づかないレベルだ。

ただ、相変わらずインテリアの質感は高く、コンパクトSUVといってもAudiの上質さが楽しめるのがうれしいところだ。ダッシュパネルに設置されたMMIの操作スイッチも使いやすく、個人的にはタッチパッドよりもこちらのタイプのほうが好ましいほどだ。


さて、今回試乗したのは、フルタイム4WDモデルの「Audi Q3 2.0 TFSI quattro 180PS」。2.0 TFSIエンジンには180psと220psという2つのチューンが存在するが、今回はパワーが小さいほうだった。最高出力180ps/4000〜6200rpm、最大トルク32.6kgm/1400〜3900rpmの実力を持つ。これに7速Sトロニックとquattroが組み合わされる。

さらに試乗車にはS lineパッケージが装着され、タイヤが標準の235/55R17から235/50R18にインチアップされるなど、よりスポーティなクルマに仕立てられている。


さっそく運転席に着くと、乗用車ベースのコンパクトなSUVだけに、乗り降りは苦労しない......というより、むしろ普通の乗用車よりも乗り降りは楽なくらいだ。少し高いアイポイントと開放的なキャビンのおかげで運転席からの眺めも抜群。全幅が1830mmと決してスリムではないのだが、ボディ幅は把握しやすく、全幅1785mmという愛車のAudi A3よりもコンパクトに思えるほどだ。

パーキングでチケットを取ったり、料金を支払う際も、自動精算機にちょうど手が届く高さということもあり、街中での使い勝手もいい。地上高が少し高めなだけに、段差を越えるときや輪留めに当てて駐車する場面でも気を遣わずに済むのもうれしいところ。そう考えると、Audiの現行モデルでは、実はこのAudi Q3が最も運転しやすいクルマかもしれない。

そんなことを思いながらアクセルペダルを軽く踏むと、軽々としかもスムーズにAudi Q3は発進した。低回転からトルクの豊かな2.0 TFSIと7速Sトロニックの組み合わせが1620kgのボディ重量を忘れさせ、こう見えて小気味よい走りをもたらしてくれるのだ。高速道路の合流や追い越しでも、十分に力強い加速を発揮してくれて、180PS版の2.0 TFSIでも不満を抱く場面はまったくなかった。

S lineということで乗り心地はやや硬めで、高速道路の継ぎ目などでは多少ショックを伝えてくるが、それでも十分に許容できる快適さが確保されている。quattroだけに高速走行時の直進性は抜群で、シャキッとした足まわりのおかげで不快な上下動はきっちりと押さえ込まれている。A3 Sportbackから乗り換えても、アイポイントが少し高いことを除けば、違和感なく運転できるのがいい。


強いて不満な点を挙げるとすれば、"流行の"自動緊急ブレーキやアダプティブクルーズコントロールが装着できないことだが、それを差し引いても余りある実力の持ち主であるAudi Q3。後席や荷室も十分な広さが確保されているし、オプションのオートマチックテールゲートを装着すれば、身長の低い女性などでもテールゲートの開閉が簡単になるなど、日常の場面でなにかと使いやすいのもこのクルマの魅力である。

機会があればFFモデルに試乗してみたいと思うが、今回の試乗だけでもAudi Q3が「My First Audi」にふさわしい取っつきやすさや扱いやすさを持ったクルマであることが再確認できた。今回のマイナーチェンジで、これまで以上に人気が高まりそうな予感である。

(Text by Satoshi Ubukata)