マイナーチェンジを機に、新たにラインアップに加わった「Audi A1 Sportback 1.0 TFSI」を試乗。1L直列3気筒エンジンの実力は?
このA1 Sportback 1.0 TFSIの価格は269万円。これまでエントリーグレードを務めてきたA1 Sportback 1.4 TFSIが301万円だったから32万円安く手に入ることになる。実際に購入するとなると、バイキセノンヘッドライトとMMIナビゲーションはほしいからナビキセノンパッケージを選んでプラス36万円。

あとはお好みでBOSEサラウンドサウンドシステム(14万円)やコンビニエンスパッケージ(アドバンストキーとアウディパーキングシステムの組み合わせ)などのオプションを選べばいい。エントリーグレードであっても、オプションの選択肢が多いのも見逃せない点だ。


注目のエンジンは実にコンパクトだ。ボア×ストロークが74.5×76.4mm、排気量が999ccの3気筒エンジンは、「フォルクスワーゲンup!」の1Lエンジンを直噴ターボ化したもので、最高出力95ps/5000〜5500rpm、最大トルク160Nm(16.3kgm)/1500〜3000rpmのスペックを誇る。

トランスミッションは7速Sトロニックが組み合わされる。JC08モード燃費は22.9km/Lを達成。これはAudiとしては過去最高の燃費である。

そうなると心配なのが、「1Lで気持ちよく走るのか?」。どんなに燃費が良くても、ふだんの走りでストレスが溜まるようではAudiらしくない。


というわけで、さっそく試乗をスタート。プッシュスイッチを押してエンジンを始動すると、3気筒特有のエンジン音と振動がキャビンに伝わってくる。といっても、とくに気になるレベルではなく、また、耳障りな音じゃないのが助かる。

アクセルペダルを軽く踏むとクルマはすんなりと動き出した。さすがに1.4 TFSIに比べると動きは穏やかだが、走り出してしまえば2000rpm以下でも余裕あるトルクを発揮し、予想以上に爽快な加速を見せてくれる。街中でちょっと加速したいような場面でももたつくことはないし、エンジンをあまり回さなくても十分な加速が得られるので、運転に余裕が生まれるのがうれしいところ。なかなかいいじゃないか!


高速でも余裕ある走りは変わらず、100km/hの巡航を7速2200rpmでこなす一方、合流や追い越しで必要に迫られれば、最大トルクを発揮する1500〜3000rpmを超えてもなおスムーズに吹け上がる1.0 TFSIが、A1 Sportbackのコンパクトなボディを素早く加速してくれるのだ。

そして、ワインディングロードの登りでも、まったく不満のない性能を見せてくれる。試乗中、ストレスを感じるような場面に遭遇することはなく、むしろこのA1 Sportbackにはこの1.0 TFSIエンジンがベストのマッチングと思えるほどだ。

従来のA1 Sportback 1.4 TFSIよりも80kg軽いA1 Sportback 1.0 TFSIは走りも軽快。それでいてノーマルサスペンションは落ち着きのある乗り心地を示し、快適性とフラットライドをバランス良く実現している。


ちなみに、試乗時の燃費は、高速を流れにまかせて走った区間が23.6km/L、地方の一般道を走った区間が15.6km/L、山道を含む一般道が12.3km/Lという結果で、期待に違わぬ低燃費である(いずれも車載コンピューターの数値)。

Audi S1のようなスポーツモデルも楽しいが、このA1 Sportback 1.0 TFSIのように軽快感あふれるクルマもまた楽しい。しかも、ベーシックグレードであってもAudiが誇る上質なドライビング体験ができるのがこのA1 Sportbackなのだ。

それだけに、コンパクトカーであっても妥協はしたくないと考えるクルマ好きにはぜひ試してほしい1台だ。そして、この1.0 TFSIの投入でこれまで以上にAudi A1/A1 Sportbackに注目が集まるのは確実だろう。

Audi A1 1.4 TFSIの元オーナーの私からも、自信を持ってお勧めできるクルマである。

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Masayuki Arakawa)