Audi A3シリーズの頂点に君臨するスポーツモデルはどんな走りを見せてくれるのか?
Audi S3のさらに上をいく至高のスポーツモデルが、ついに日本に上陸。その走りは痛快そのものだった。AUDI AGの100%子会社「quattro GmbH(クワトロ社)」が手がけるこの特別なスポーツモデルの概要については
注目はボンネットの下に潜むパワーユニット。quattro GmbHの"伝家の宝刀"というべき直列5気筒ターボは、搭載方法こそ縦置きから横置きに変わったとはいえ、quattroの名を世に知らしめた「Audi quattro」の伝統を受け継ぐものだ。
注目はボンネットの下に潜むパワーユニット。quattro GmbHの"伝家の宝刀"というべき直列5気筒ターボは、搭載方法こそ縦置きから横置きに変わったとはいえ、quattroの名を世に知らしめた「Audi quattro」の伝統を受け継ぐものだ。
この2.5 TFSIエンジンは、これまでもAudi TT RS Coupe/TT RS plus CoupeやAudi RS Q3に搭載されてきたが、最新版のAudi RS 3 Sportbackに積まれるのは最高出力270kW(367ps)、最大トルク465Nm(47.4kgm)の史上最強スペックを誇る。いうまでもなく駆動方式はフルタイム4WDのquattroで、S3の6速ではなく、湿式多板クラッチ式7速Sトロニックが組み合わされる。
ドアを開けるとヘッドレスト一体型の"RSスポーツシート"がドライバーの登場を待ち構えていた。ダイヤモンドステッチングが目を引くこのシートはメーカーオプションで、横方向のサポート性を高めながら、窮屈さとは無縁なのがうれしいところだ。
スライドやリクラインといった調整が手動になるのが玉にキズだが、10万円のエクストラを払うだけでこれが付くとなると、オーダーしない手はないだろう。
そのRSシートに身を預けると、レザーとアルカンターラを配したフラットボトムステアリングホイールや、フルスケール300km/hのスピードメーターが、いやがうえにも気分を昂ぶらせる。そして、赤で縁取られたボタンを押すと、"ブウォーン"という唸り声とともにに2.5 TFSIエンジンが目を覚ました。
さっそく発進すると、その瞬間から2L直列4気筒ターボとは段違いに強力なことを思い知らされる。アクセルペダルを軽く踏むだけで1560kgのボディが軽々と押し出される感覚は、なかなか味わえるものではない。
そのまま加速を続けると、Sトロニックは粛々とシフトアップを繰り返し、70km/hを超えるころには7速に。アクセルペダルを煽るたびに太いエキゾーストノートが耳に届き余裕ある加速が楽しめる一方、荒々しさはなく、洗練されたスポーツカーという印象が強い。
乗り心地は硬めといえ、身体の伝わるショックは角が取れており、街乗りでも十分許容できるレベル。高速で目地段差を超えるような場面でも巧みにショックをいなし、フラット感もまずまずだ。良い意味で予想を裏切る洗練度の高さである。
前が空いたところでアクセルペダルを深く踏み込むと、2.5 TFSIエンジンが本性を現した。3500rpmあたりからエンジンが発する音が明らかに変わり、5シリンダーならではのフウォーンという不協和音を伴いながら、一気にレブリミットの7000rpm超まで吹け上がる。この怒濤の加速は痛快そのもの! プレミアムコンパクトがモンスターに豹変する瞬間である。
2.5 TFSIのハイパワーを漏らさず路面に伝える絶大なトラクションはquattroの面目躍如。モンスターを手懐けるのは難しいことではなく、躊躇せずにアクセルペダルを踏みつけることができる。
ハンドリングは取り立てて鋭いわけではない一方でフロントヘビーな印象もなく、常に狙ったラインをトレースできるのがうれしいところだ。ロール自体は小さいものの、ストローク感があるサスペンションによりしっかりと路面を捉えるのも、気持ちの良いドライビングにつながっている。
ちなみに、DISによりチェックした燃費は、ワインディングロードを駆けぬけたときこそ4km/L台まで落ちたが、ストップ&ゴーの多い都内の一般道でも8km/Lを上回り、高速を法定速度で巡航したときには15km/L近い数字を示すなど、その性能を考えると驚くほど優秀だ。
ということで、非の打ち所のないスポーツモデルに仕上がっているAudi RS 3 Sportback。実用性を犠牲にせず、スポーツドライビングを楽しみたいという人にはベストの選択となるに違いない。
(Text by Satoshi Ubukata)