さいわい、300台が再上陸する今回は広報車が設定されたおかげで、念願の試乗が叶った。とはいっても、試乗は高速道路が中心で、このクルマが似合うシチュエーションでは試すことができなかったが。
さて、A4オールロードクワトロは、A4アバントの最低地上高を160mmにアップし、さらに元祖オールロードクワトロ同様、樹脂製のホイールアーチや前後バンパーガードを装着して、オフロードの走破性を高めたモデルだ。ちなみに全高は1495mmで、最低地上高の上昇分(40mm)がそのまま加わった数字となる。高さ1550mm制限のタワーパーキングに難なくアクセスできるのがうれしい。
一方、初代オールロードクワトロやA6オールロードクワトロのような車高調整機構=アダプティブエアサスペンションは持たず、A4アバントにオプションの可変減衰力ダンパーも用意されていない。そのぶん、ベースのA4アバント2.0TFSIクワトロに対して53万円高の589万円が実現できたのだろう。
運転席に収まると、そこには見慣れたA4アバントのインテリア。ウォールナットのデコラティブパネルが奢られる以外は、とくに変わったところはない。そして、最高出力211ps、最大トルク35.7kgmの実力を秘める2.0TSIエンジンや7速Sトロニック、前後トルク配分が40:60のクワトロもベースモデルと同じである。
ということで、案の定というか、あたり前の話だが、2.0TFSIが誇るパワフルな走りは、このA4オールロードクワトロにそのまま受け継がれている。低回転からグワーっと加速する様子は、2Lエンジンとは思えない力強さだ。高速中心のドライブならリッター10km台は軽くクリアするのもうれしい点だ。
となると、興味の行方は40mmアップされたサスペンションということになるが、結論からいえばその影響は最小限だ。確かに高速ではノーマルのA4アバントに比べて、多少揺れが気になる場面もあるのだが、それでもフラット感は十分なレベルで、決して不快な印象ではない。
むしろ気になるのは、ベースモデルから1インチアップされた18インチタイヤのほうで、オンロード専用とはいえインチアップで重くなったぶん、荒れた路面や段差を越えたときの乗り心地が多少悪化している。とはいえ、乗り心地はおおむね良好で、"オールロード化"に伴うデメリットはほとんど見つからない。
反対に、オールロード化のメリットは、ふだん街乗りに使う者にとっては、駐車場の輪止めを気にしなくて済むくらいなのだが、それでも、このA4オールロードクワトロの存在感あるスタイリングはとても魅力だ。
このデザインに惹かれるなら、迷うことなくディーラーに足を運んだほうがいい。なぜなら、A4オールロードクワトロの第2弾は、300台の限定販売だからだ。
(Text by Satoshi Ubukata)