「フェイスリフトではなく、プロダクト・インプルーブメントを実施した」とアウディがいうニューアウディA4に試乗。その進化のほどは? アウディ社内では、マイナーチェンジを「PI=プロダクト・インプルーブメント」と呼ぶらしい。それは、だた単にちょこちょこっとデザインのディテールをいじるだけでなく、中身もしっかりつくり込んできたり、場合によっては、「こんなことフツーはマイナーチェンジじゃしないでしょう?」なんて大がかりな変更を詰め込んでくることを意味する。だから、つくり手としては軽々しく"フェイスリフト"なんて呼ばせたくはないのだろう。

そんな彼らの自信作にさっそく試乗することができた。今回、ステアリングを握ったのは、人気のA4アバントのなかでもアウディらしさ溢れるクワトロの「アウディA4アバント 2.0 TFSI クワトロ」。しかも、試乗車は僕の大好きな(!?)Sライン仕様である。乗る前からテンションは上がり気味だ(笑)


プロダクト・インプルーブメントの概要はすでに
MMIコントローラーまわりのデザインも大きく変更された。ボタンの数が減り、また、ボリュームのつまみは左右に動かすと選曲/選局ができるようになった。シフトパターンも変更されていて、Dレンジからシフトレバーを手前に引くだけで(シフトレバーのボタン操作は不要)SモードとDモードの切り替えが簡単にできるようになった。
しかし、機能面でもっとも注目されているのは、新たに搭載されたスタート ストップシステム(アイドリングストップ)だろう。さらに、減速時に積極的に充電するようオルタネーターを制御するブレーキエネルギー回生機構とともに、実用燃費の向上に一役買うはずだから、これはうれしい!
一方、2.0 TFSIエンジンや7速Sトロニック、クワトロといった部分は、すくなくともカタログ上の変更はない。でも、実際に走り出すと......

相変わらずごく低回転から力強いトルクを発揮する2.0 TFSIエンジンは、車両重量1730kgとちっぴり重めのA4アバントをこともなげに発進させる。見逃せないのは、エンジン自体も、クルマの動きも、これまで以上にスムーズになったように思えること。数字には表れない進化......。これだから、最新版から目が離せないのだ。走り出しても、どっからでも十分なトルクをもたらす2.0 TFSIには余裕が感じられ、また、その気になれば瞬く間にスピードリミットまで速度を上げてくれるのがなんとも頼もしい。

専用のSラインサスペンションと1インチアップの245/40R18タイヤが組み込まれた試乗車は、最近のSラインの傾向どおり、街中からハイウェイまで、超フラットな乗り心地をもらたしている。少し硬めの味付けながら、ゴツゴツとショックを伝えることはなく、快適さとスポーティなハンドリングを見事に両立しているのだ。ホント、最近のSラインのセッティングには感心する。

個人的な関心は、マイナーチェンジのタイミングで変更されたパワーステアリング。従来の油圧アシストから電動アシストに変わったのだ。ふつうなら、マイナーチェンジでステアリングシステムを変えることはないだろう。しかし、油圧よりも電動のほうが燃費が良くなるし、アクティブセーフティでもいろいろな制御が可能という理由から、あえて大がかりな変更をやってのけるアウディには脱帽だ。

それはさておき、新たに採用された電動パワーステアリングは、フィールが乏しいといった"電動パワステ臭さ"は薄められており、低速でほどよく軽く、高速でほどよく重いセッティングもまずまず。試乗車には「アウディ ドライブセレクト」が未装着のため、可変ステアリングギアレシオの「ダイナミックステアリング」の感触は試せなかったが、すくなくとも標準仕様の電動パワーステアリングには十分合格点がつけられる。


それにしても、見た目も走りもこれまで以上に洗練されたニューA4は、確かにプロダクト・インプルーブメントという言葉にふさわしい進化を遂げていた。ますます魅力的になったアウディA4アバント......。お世辞抜きでほしいクルマである。

(Text by Satoshi Ubukata)