さて、あらためてQ3を眺めると、SUVらしい強い存在感を放つ一方、Q5よりもひとまわり小さなボディが見るからに扱いやすそう。日本で使うには、Q5よりQ3のほうが気楽に運転できそうだ。
Q5に比べて全長が250mm短いQ3だが、前席、後席ともに十分なスペースが確保されている。荷室の奥行きもQ5に比べて約50mm短いという程度。全長が短くなったとはいえ、さほどキャビンが圧迫されていないのがうれしいところだ。パッケージングに優れる"横置きエンジンレイアウト"を採用するのが、その秘訣だ。
インテリアは、2段構えのデザインにシャープなラインが施されたダッシュボードが、Q3に新鮮な雰囲気をもたらしている。
前置きはこのくらいにして、いざ走り出すと、Q3は期待を裏切らなかった。SUVというと、どうしても重たいイメージがあるが、このQ3はほぼ同じサイズのフォルクスワーゲン・ティグアンよりも30kg軽く、ほぼ同じパワートレインを積むA3スポーツバック 2.0 TFSI クワトロと比べても70kg重いにすぎない。ボンネットやテールゲートにアルミを使い、そのほかの部分でも軽量高剛性のスチールを多用するのが効いているのだろう。
これに、わずか1800rpmから30.6kgm(300Nm)の最大トルクを発揮する2.0 TFSIエンジンと、7速Sトロニックが組み合わされるのだから、スタートは思いのほか軽快。しかも、ふだんは前輪にほぼすべてのトルクを配分するQ3のクワトロは、発進時は積極的に後輪へトルクを振り分けるので、スムーズで安定した出足を実現する。残念ながら、今回は乾燥路のみの試乗だったが、雨で滑りやすい状況なら、さらにクワトロの恩恵を感じるはずだ。
走り出しても、力強いエンジンの印象は変わらない。この日は、箱根の山道や新東名を走ることができたが、ワインディングロードの登りでもストレスなくスピードを上げていくし、高速巡航も余裕のひとこと。さらに、高速道路の直進性は抜群で、一方、ワインディングロードではSUVとしてはロールの少ない安定したコーナリングを見せてくれる。まさに、オールラウンドにその性能を発揮するクルマなのである。
このQ3には、235/50R18のピレリ・スコーピオン ベルデが装着されている。このタイヤがやや硬めの感触を示すものの、乗り心地は快適で、走行時のフラット感も高いレベルにある。A3と同じ......とまではいかないが、SUVよりもむしろセダンやハッチバックに近い走りを実現しているのは確かだ。
それでいて、少し高めのアイポイントのおかげで先がよく見とおせるので、ドライバーは余裕をもって運転できるし、そのぶん安心感も高い。
というわけで、第一印象がとても良かったアウディQ3。気になるのは街中での走りや使い勝手ということになるが、このあたりはあらためてクルマを借り出してチェックすることにしたい。S-lineパッケージやアウディ ドライブセレクトが装着されたクルマも、機会があれば試してみようと思う。
(Text by Satoshi Ubukata)