2012年6月4日に日本発売になった「アウディA1スポーツバック」にさっそく試乗。待望の5ドアは、期待どおりの仕上がりを見せてくれた。 コンパクトで扱いやすいボディにアウディらしさがギュッと詰まったアウディA1。興味を寄せてはいるものの、「自分のライフスタイルを考えるとやはり5ドアがほしい......」という人は多かったはず。その待望の5ドア版であるアウディA1スポーツバックが、ついに日本でも発売になった。

日本仕様の概要については
今回、おもに試乗したのは、上の写真の右に写る「スポーツパッケージ」装着車。外見では標準の205/55R15タイヤに代えて215/45R16タイヤ+10スポークデザインのアルミホイールが装着されるのが特徴だ。写真の左は標準モデルである。

ルーフ全体が別色にペイントされる「コントラストルーフ」は8万円のオプション。3ドアより少し伸びたルーフを短く見せる効果があるというが、たしかに軽快さが感じられる演出だ。

インストルメントパネルのデザインは、基本的に3ドアと同じ。このクラスとしてはトップレベルの高い質感や緻密なつくりは、このA1スポーツバックにもそのまま受け継がれている。
ちなみに、スポーツパッケージを選ぶと、パドルシフトが付くのはうれしい点。ほかにも、ホールド性の高いスポーツシート(ランバーサポート調整も付く)や、リーディングライトなどがLEDになるLEDインテリアライトパッケージが付いてくる。
スポーツシートやドアトリムのカラーは、ブラックのほかに、写真のブラック&ワサビグリーン、ブラック&チタニウムグレーが選べるので、スポーツパッケージのプラス15万円は意外にリーズナブルだ。
ここまでは3ドアのA1とほぼ同じ話だが、当然リアシートはA1スポーツバック専用になる。ドイツでは2人乗りと3人乗りが選べるリアシートは、日本では3人乗りだけが用意される。実際に使うことは少なくても、いざというときのことを考えると安心だ。
リアシートのスペースは、余裕たっぷりとはいかないものの、大人でも必要十分な広さが確保されている。写真は、身長163cmの女性が座ったときのもの。身長168cmの僕が座っても、拳が縦に入るだけの余裕があった。一方、足元は前席の下に無理なく爪先が入ることもあり、とくに窮屈な思いはしなかった。
そうそう、いい忘れたが、リアドアが追加されて後席の乗り降りが楽になったのは当然だが、それ以上にフロントドアが短くなったのはとても重宝する。駐車場など狭い場所で乗り降りするときに、長く重いドアをまわりに気遣いながら開け閉めしなくて済むからだ。元A1オーナーからみれば、これが一番うれしいことかもしれない。

ラゲッジスペースは3ドアのA1と同じ。ラゲッジスペース下にバッテリーとスペアタイヤなどが置かれるため、フロアが本来よりも1段高くなっているのも3ドアと変わらない。そのため、容量がやや狭いというのがA1とA1スポーツバックに共通の弱点だ。もちろん、リアシートを倒せばそれなりの広さが確保されるから、いざというときは心強い。


運転席に戻り、エンジンを始動。A1スポーツバックでは「アドバンストキー」が標準装着されるため、エンジンの始動はダッシュボードのボタンで行う。ちなみに、3ドアのA1では8万円のオプションだ。
走りだして感じるのは......当然のことながら、3ドアのA1と同じ感覚だ。3ドアよりも20kg重量が増えたとはいえ、122psの1.4 TFSIと7速Sトロニックの組み合わせは、低回転から十分なトルクを発揮してくれて、加速も軽やか。街中では2000rpm以下をキープして大人しく走りながら燃費を稼ぐこともできるし、アクセルを深く踏み込めば流れをリードするのも簡単だ。

一方、高速でも余裕ある加速を見せてくれるので、合流や追い越しの場面で躊躇する必要はまったくない。スピードを上げても安定感は高く、長距離のドライブでも疲れ知らず。その落ち着き具合は、ひとクラス、いやそれ以上のサイズのクルマを運転するような感覚なのだ。

強いて3ドアとの違いを挙げるとすると、3ドアに比べて若干ボディ剛性が落ちているようにも思えるが、それでも依然として高いレベルを誇っているのは確かだ。

うれしいのは乗り心地の良さで、試乗したスポーツパッケージでもマイルドで快適なレベルだった。スポーティに引き締められてはいるが、不快な硬さはなく、フラットさがむしろ気持ちいいくらいだ。路面によってはタイヤが路面からのショックをコツコツと伝えることもあるが、嫌な感じはなかった。

短時間だが標準モデルを試すこともできた。こちらはスポーツパッケージよりもサスペンションの動きがしなやかで、さらにマイルドな印象。ただ、スピードを上げたときのフラット感はスポーツパッケージに分があり、フラット感を重視するならスポーツパッケージを、マイルドな乗り心地を求めるなら標準モデルを選択することをオススメする。

ということで、期待どおりの仕上がりを見せるA1スポーツバック。このスタイルが好きなら、もうためらう理由は何もない。


(Text & photos by Satoshi Ubukata)