日本仕様の概要については
今回、おもに試乗したのは、上の写真の右に写る「スポーツパッケージ」装着車。外見では標準の205/55R15タイヤに代えて215/45R16タイヤ+10スポークデザインのアルミホイールが装着されるのが特徴だ。写真の左は標準モデルである。
ルーフ全体が別色にペイントされる「コントラストルーフ」は8万円のオプション。3ドアより少し伸びたルーフを短く見せる効果があるというが、たしかに軽快さが感じられる演出だ。
そうそう、いい忘れたが、リアドアが追加されて後席の乗り降りが楽になったのは当然だが、それ以上にフロントドアが短くなったのはとても重宝する。駐車場など狭い場所で乗り降りするときに、長く重いドアをまわりに気遣いながら開け閉めしなくて済むからだ。元A1オーナーからみれば、これが一番うれしいことかもしれない。
ラゲッジスペースは3ドアのA1と同じ。ラゲッジスペース下にバッテリーとスペアタイヤなどが置かれるため、フロアが本来よりも1段高くなっているのも3ドアと変わらない。そのため、容量がやや狭いというのがA1とA1スポーツバックに共通の弱点だ。もちろん、リアシートを倒せばそれなりの広さが確保されるから、いざというときは心強い。
走りだして感じるのは......当然のことながら、3ドアのA1と同じ感覚だ。3ドアよりも20kg重量が増えたとはいえ、122psの1.4 TFSIと7速Sトロニックの組み合わせは、低回転から十分なトルクを発揮してくれて、加速も軽やか。街中では2000rpm以下をキープして大人しく走りながら燃費を稼ぐこともできるし、アクセルを深く踏み込めば流れをリードするのも簡単だ。
一方、高速でも余裕ある加速を見せてくれるので、合流や追い越しの場面で躊躇する必要はまったくない。スピードを上げても安定感は高く、長距離のドライブでも疲れ知らず。その落ち着き具合は、ひとクラス、いやそれ以上のサイズのクルマを運転するような感覚なのだ。
強いて3ドアとの違いを挙げるとすると、3ドアに比べて若干ボディ剛性が落ちているようにも思えるが、それでも依然として高いレベルを誇っているのは確かだ。
うれしいのは乗り心地の良さで、試乗したスポーツパッケージでもマイルドで快適なレベルだった。スポーティに引き締められてはいるが、不快な硬さはなく、フラットさがむしろ気持ちいいくらいだ。路面によってはタイヤが路面からのショックをコツコツと伝えることもあるが、嫌な感じはなかった。
短時間だが標準モデルを試すこともできた。こちらはスポーツパッケージよりもサスペンションの動きがしなやかで、さらにマイルドな印象。ただ、スピードを上げたときのフラット感はスポーツパッケージに分があり、フラット感を重視するならスポーツパッケージを、マイルドな乗り心地を求めるなら標準モデルを選択することをオススメする。
ということで、期待どおりの仕上がりを見せるA1スポーツバック。このスタイルが好きなら、もうためらう理由は何もない。
(Text & photos by Satoshi Ubukata)