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今年スタートしたFIA世界耐久選手権(WEC)の1戦が、富士スピードウェイで開催された。富士では1982年から1988年まで世界耐久選手権が行われ、多くのスポーツカーファンを魅了してきた。その伝統のレースが24年ぶりに復活したのだ。
WECは、4大陸8カ国で開催されるシリーズ戦で、伝統のルマン24時間レースもその1戦として組み込まれている。マシーンはLMP1、LMP2、LMGTE(さらにPro=プロとAm=アマチュアの2クラスにわかれている)にクラスわけされており、このうち最も注目を集めるのがアウディやトヨタが参戦するLMP1クラスだ。事実上、アウディとトヨタの真っ向勝負となるLMP1では、過去6戦のうちアウディが5勝を挙げ、早々にマニファクチュアラーズタイトルを決めている。
その一方でトヨタの戦闘力が着実に上がっているのも事実で、第5戦のサンパウロではアウディにつけいる隙を見せず、初優勝を飾っている。そして、地元日本、聖地・富士スピードウェイでの勝利はトヨタの悲願であるだけに、アウディにとってはこれまで以上に厳しい戦いになることが予想されていた。
13日には予選が行われ、#7のトヨタを駆る中嶋選手が1分27秒499のトップタイムをマークしポールポジションを獲得。2番手は#1のアウディのトレルイエ選手で1分27秒639。その差はわずかコンマ14秒だ!
3番手は#2のクリステンセン選手で1分28秒370をマークしている。
そして迎えた14日の午前11時、6時間耐久レースの火蓋が切られた。
レースが動いたのは中盤のこと。ロッテラーからドライバー交代したトレルイエが、ラピエールの乗る#7に迫り、78周目にこれをパス。ついにトップに躍り出たのだ。その後は、ピットストップの違いからアウディとトヨタが順位を入れ替える。トヨタに比べて燃費の良いアウディはピットストップが1回少なくて済むため、このままならアウディの勝利は濃厚であった。
ところが123周目のダンロップコーナーで、LMGTEのマシーンと接触し、フロントカウルを破損。これに対応するためにピットストップを余儀なくされた。さらに、この接触事故がアウディによるものと判断され、ストップ&ゴーペナルティが科されることに。これにより、アウディの#1は3位にポジションを落とす。
一方の#2も、途中、LMP2のマシーンと接触し、フロントカウルを損傷。しかし、チームはそのまま走らせることを決断した。
そして終盤、ふたたび#1のステアリングを握ったロッテラーが#2のクリステンセンをパスして2位に浮上し、トップとの差を縮めていく。
残り時間が30分を切った時点で、#7のトヨタと#1のアウディとの差はおよそ40秒。アウディは最後のピットストップを終えていたが、トヨタはもう一度ピットストップをする必要があった。そして、レース終了20分前に#7が最後のピットストップ。これで#1のロッテラーが先行すると思われたが、トヨタは給油のみの作業で再スタート。かろうじてトップのままコースに復帰してしまった。
トヨタとの激しいバトルを終え、アウディモータースポーツのウルリッヒ代表は「今日は、非常に良いレース展開でした。ゼッケン1号車の修理やストップ&ゴーペナルティを受けてもなお、トップとの差はわずか11秒でした。これは、アウディR18の基本的なパフォーマンスがいかに優れていたかを証明するものです。私たちは勝利に向けて果敢に戦い、あと一歩のところまで来ましたが、残念ながらすべて順調というわけにはいきませんでした。トヨタはこのサーキットでとても強く、ホームレースを制しました。心から祝福したいと思います」とコメントした。
最終戦の上海は2週間後の10月28日に決勝が行われる。日本での借りを中国で返すことができるのか? アウディの活躍に期待したい。
(Text & Photos by Satoshi Ubukata)