先週末、慣らし運転がてら高速を700kmほど走り、納車5日目にはオドメーターの数字が1000kmを超えたウチのA3 Sportback。まだ、"エンジン全開!"とはいきませんが、このあたりで軽くインプレッションなどしておこうかと思いまして......。 9月20日の午前、旧型A3 Sportback 1.4 TFSIでAudi世田谷に出かけ、新型を引き取ってきました。それだけに、新旧の違いが痛いほどよくわかりました。

発進してすぐに感じたのが、動き出しの軽さです。これは、同じ「MQB」コンセプトで設計された「フォルクスワーゲン・ゴルフ7」でも思ったことです。

A3 Sportback 1.4 TFSIどうしで比べると、新型は車両重量が60kg軽くなりましたが、それ以上にクルマの走行抵抗が小さくなったのが効いているように思えます。軽々と加速し、いかにもロスが少なそうな走りが爽快です。

軽さとともに印象的なのが静粛性の高さです。旧型A3 Sportbackはモデルサイクルの途中でフェイスリフトを行ったり、パワートレインを変更するなどしてその魅力を維持してきましたが、基本設計は変わらなかったため、静粛性はデビュー当時のままでした。それが、フルモデルチェンジでイッキに最新レベルに変わったわけですから、新旧のギャップはかなりのものです。
たとえば、エンジンがいままでよりも遠いところに置かれているように思えるくらい、その音量は小さくなりました。1.4 TFSIそのものも新設計されていますが、1000rpm台前半のやや唸るような音は残っています。それでも、新型A3 Sportbackではほとんど気にならなくなりました。キャビンに侵入するエンジン以外の音もよく抑えられていて、クルマがワンランク高級になった印象です。

乗り心地の良さも、A3 Sportback 1.4 TFSIの美点のひとつ。新型A3 Sportbackでは、1.4 TFSIにダイナミックサスペンションが、シリンダーオンデマンド付きの1.4 TFSIと1.8 TFSI quattroにはよりハードなスポーツサスペンションが、それぞれ搭載されています。このうち、ダイナミックサスペンションは、やや硬めとはいえマイルドな乗り心地を示し、走行時の挙動も落ち着いています。高速でもフラット感が高く、その快適さはこのクラスでは間違いなくトップレベルでしょう。

しかも、A3 Sportback 1.4 TFSIのサスペンションはハイパワーなグレードと同じ前:マクファーソンストラット、後:マルチリンクを採用することもあって、コーナーでの身のこなしはとても軽快。乗り心地とハンドリング性能を、旧型以上に高いレベルで両立しています。だから、街中を走っているときでさえ、ドライバーが退屈することはありません。スポーツモデルじゃなくても、運転の楽しさは十分に味わえるのです。

新開発の1.4 TFSIと7速Sトロニックの組み合わせは、以前に比べてさらにスムーズに。エンジンのレスポンスも向上し、アクセルペダルに載せた右足の動きに素早く反応してくれます。これには、新たに採用された電子制御ウェイストゲートバルブも貢献しているはずです。
旧型同様、1000rpmを超えたあたりから十分なトルクを発揮するこの1.4 TFSIエンジン、街中では早めのシフトアップを可能とし、通常は2000rpm以下で事足りてしまいます。高速道路への合流や追い越しなどの場面でも、豊かな低中速トルクのおかげでさほど回転を上げる必要ありません。

一方、可変バルブタイミングの採用により、5000rpmを超えてもスムーズに吹け上がるようになったのは見逃せません。高回転まで引っ張りたいときでも、これまで以上に気持ちよく回るようになっています。

アイドリングストップとエネルギー回生機能は標準搭載。旧型に比べて、エンジンの再始動のショックは多少小さくなり、動き出すまでの時間も短縮されています。ただし、最近試乗した「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI」や「ポロ・ブルーGT」が、ブレーキペダルをリリースするのとほぼ同時に動き出すのに対し、この1.4 TFSIと7速Sトロニックの組み合わせでは"1/2呼吸"くらい待たされる印象があります。

しかし、不満らしい不満はそのくらいで、走りに関しては、ほぼパーフェクトといえるA3 Sportback 1.4 TFSI。購入1週間でいうのもなんですが......このクルマを選んで正解でした!


(Text by Satoshi Ubukata)