箱根で開かれた試乗会で、Audi A3 Sportback 1.8 TFSI quattroをチェックしました! 新型Audi A3 Sportbackのうち、9月17日に発売されたのは、1.4 TFSI(以下1.4T)と1.8 TFSI quattro(以下1.8Tq)の2グレードです。試乗会に用意されたのもこのふたつで、当然今回は1.8 Tqのチェックがメインです。

1.4Tと1.8Tqの外観はほとんど同じ。違いはというと、アルミホイールが17インチの5アームデザインに変わることくらいです。厳密には、スポーツサスペンションを装着する1.8Tqは最低地上高が15mm低い130mmになっていたり、テールパイプフィニッシャーがクロームだったりするのですが(笑)


一方、1.8Tqのインテリアは、ステアリングホイールが3スポークタイプになり、よりスポーティな印象に。ステアリングホイールにはパドルシフトとマルチファンクションスイッチも標準装着です。標準のシートは、"ラリークロス"柄のスポーツシートにグレードアップ。ちなみに試乗車にはオプションのミラノレザーが装着されていました。

また、1.8Tqにはアウディ ドライブセレクトが標準装着されています。アウディ ドライブセレクトは、モードを切り替えることで、エンジンやトランスミッション、パワーステアリングなどの特性を簡単に変えられる機能で、すでに上級モデルではおなじみのものです。

ただし、A3 Sportback 1.8 Tqには可変ダンパーの"アウディ マグネティックライド"が用意されないため、減衰力の特性を切り替えることはできません。

新型A3 Sportbackでは、「コンフォート」「自動」「ダイナミック」「効率」の4モードが用意され、このうち効率を選ぶと、"コースティング機能"が働きます。これは、アクセルをオフにしたときに、Sトロニックのクラッチを切り、惰力走行を行うというもの。エンジンブレーキがかからないのでスピードが落ちにくくなり、状況によっては燃費向上につながります。

旧型の1.4Tにはコースティング機能がありましたが、新型の1.4Tにはアウディ ドライブセレクトが付かないため、この機能は省かれています。

デコラティブパネルなどは1.4Tと1.8Tqに違いはなく、 グレードの違いがあまり感じられないのは、Audiのいいところ!?

しかし、走りっぷりは明らかに違っています。1.4Tオーナーには目の毒かも......。


搭載される1.8 TFSIエンジンは、旧型に積まれた1.8 TFSIと排気量は同じですが、最高出力は+20psの180ps、最大トルクは+30Nm(3.1kgm)の280Nm(28.6kgm)にそれぞれ向上しています。これに大きく貢献しているのが可変バルブタイミング&可変バルブリフト機構で、最大トルクだけみると、旧型の2.0 TFSIエンジンと同じ数字を達成しています。

当然、1.4Tを上回る力強さがこの1.8Tqにはあるわけで、1.4Tに力不足は感じていないとはいえ、さらに豊かなトルクを発揮する1.8Tqには心動かされます。とくに、1800rpmを超えたあたりから実感できる太いトルクと5000rpm後半まで勢いの衰えない力強さがとても印象的でした。

しかも、エンジンのスムーズさもこの1.8Tqのほうが一枚も二枚も上手です。全般的にエンジン音は控えめで、物静かに仕事をこなすタイプ(笑) 湿式6速のSトロニックも実にスムーズな動きを見せます。

1.4Tに比べると低回転でのレスポンスが多少遅く感じられますが、あくまでそれは比較級の問題で、実用上困るレベルではありません。


一方の走りも、軽快さが魅力です。1.4Tに比べると乗り心地は引き締まっていて、路面によっては多少ゴツゴツとショックを伝えることがありますが、快適さは十分に合格レベルです。直進時の安定性やフラット感も優れています。

そして、コーナーではその軽快さが際立ちます。それでいて、タイヤの接地感が高く、安心してコーナーを駆け抜けられるのがいいところ。コーナーの途中でアクセルペダルを踏んでいくと、ふだんはFFに近いトルク配分をするquattroが、適切に後輪にトルクを振り分けるおかげで、フロントのグリップが不足することがなく、素早く、しかも、アンダーステアに見舞われることなくコーナーを脱出できるのです。


このように、quattroによる安定したドライビングだけでなく、スポーティにも走ることができる1.8 Tqですが、あまりに洗練されていて、そのぶん刺激が足りないのが玉にキズ!? だから、個人的には、この1.8TqだけでもS-lineを設定するとか、アウディ マグネティックライドが選べるようにすると、そのスポーティさが強調されていいのではないか......と思うんですが、いかがでしょう?

そのうち、試乗車を借り出して、日常での使い勝手をチェックしたいと思います。

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Audi Japan)