世界的に見ても世界第4位のタイヤシェアを誇るコンチネンタルなのだが、同社の売り上げに占めるタイヤの割合は3割ほど。実は自動車関連部品の比率が高く、部品サプライヤーとして、自動車メーカーにはなくてはならない存在である。
いま話題のゴルフ7にも、たくさんのコンチネンタル製のパーツが使われている。たとえば、シャシーやセーフティ関連では、エアバッグをはじめとして、ブレーキブースター、電動パーキングブレーキ、ESCなど。パワートレインでは、エアフローセンサーやタイミングベルト、ギヤボックスの制御ユニットなど。また、インテリアでは、インストゥルメントパネルや各種コントロール用のコンピューターなど、名前を挙げればきりがない。
そのコンチネンタルがハノーファー北部にある自社のテストコース「Contidrom」で、技術プレゼンテーションを開催した。Conidromがオープンしたのは1967年。当時でも70haの広さを誇ったが、1993年には160haにエリアを拡大。最大傾斜58度のオーバルコースをはじめ、スキッドパッドやハンドリング路、オフロードコースなどを備え、すべてあわせるとその長さは22kmにも及ぶ。私自身、一度は訪れてみたかった場所である。
走りだすと、あらかじめ決められた速度で道路を道なりに進んでいく。ステアリング操作は意外にスムーズ。速度標識があるとそれを確認して自動的にスピードを調節する。また、人間優先の設定なので、ドライバーがステアリングを操作すると、普通の手動運転に切り替わる。
これだけだと、最新のアダプティブクルーズコントロールとあまり変わらないじゃないか......と思われるかもしれない。実際、最初のうちは私もそう思った。
いくつかコーナーを抜けると、前方に30km/h制限の標識があり、さらにその先に道路工事のサインが並べられているのを発見。サインの列の間隔はそれほど広くない。果たしてドライバーはどうするのか? ところが、ドライバーはステアリングホイールから手を離したまま。パサートは自動運転で狭いサインのあいだを巧みにすり抜けていく。見事な腕前だ。どうやらパサートの自動運転を侮ってはいけないようだ。
しかし、パサートにとって、この程度のことは朝飯前。さらに難しい状況が待ち構えていたのだ。
やれやれ、と胸をなで下ろすのも束の間、運転席のスタッフから「次はもう少しスピードを上げてみるよ!」の声。いったいどうなるのだろう。その答えは次の動画で!
速度が高く、止まりきれないと判断すると、自動運転システムがステアリングをまずは左に、そして、すぐさま右に切り返して、いわゆる"ダブルレーンチェンジ"をやってのけたのだ。なんてことだ! 人間よりも上手(うわて)である。さすがの私もこれには驚いた。
もちろん、この危険回避はテストコースという特殊な条件だから無事できたわけで、いますぐに現実の世界に持ち込むわけにはいかないだろう。クルマが避けた先に別のクルマや歩行者がいたら......。けれども、研究の先に、より安全なクルマづくりをサポートする技術があるのは確かだ。
コンチネンタルは、2025年までに段階的にクルマの自動化を進めていく考えだ。まずは2016年以降、30km/h以下のストップ&ゴーをサポート。次に2020年以降、30km/h以上の高速走行を目指す。ただし、いずれもドライバーが道路状況に気を配らなければならず、高速での完全自動運転は2025年以降というのが彼らのロードマップだ。これには各国の法環境が整うことも必要だが、事故防止や環境負荷を下げるという点からも、ぜひ前向きな対応を期待したい。
自動運転以外にも興味深いテクノロジーが目白押しだ。そのすべてを伝えることはできないが......。
たとえば、このアウディA3スポーツバック。コンチネンタルの技術を使って、プラグインハイブリッド化したものだ。フロントはエンジン駆動、一方、リアは追加したモーターで駆動する電動quattroである。満充電で50kmのEV走行が可能。うまく使えば、ふだんは給油せずに済んでしまいそうだ。
こちらは48Vバッテリーとそれに対応するコンポーネントを装着することで、現在のスタート/ストップシステムやブレーキエネルギー回生という省燃費技術をさらに発展させようとする試作車だ。
このようなパワートレインの電動化を自動車メーカーの要望にあわせて提供できるのがコンチネンタルの強み。もちろん、高性能タイヤの供給も自動車メーカー、そして、エンドユーザーにとっては大切なことで、この日はウェットのハンドリング路で、ContiSportContact5と他のハイグリップタイヤの性能を比較することができた。濡れた路面で唐突にグリップを失い、また、水たまりで横滑りが発生する某社のタイヤに対し、ContiSportContact5は絶対的なグリップが高いうえにグリップの変化が緩やか。ハイドロプレーニングの発生も少ないため、おのずとペースが上がってくる。ウェットでも安心して飛ばせるスポーツタイヤだ。
そんなこんなでコンチネンタルの明日を垣間見ることができたTechShow 2013。タイヤだけでなく、クルマづくりの多くに関わるコンチネンタルだけに、その進化は自動車の未来そのものといえるだろう。
次はどんな技術が私たちのカーライフを豊かにしてくれるのか? コンチネンタルの取り組みに注目したい。
(Text by Satoshi Ubukata)