なぜいまジュラルミン?
新素材というのはお客さまに夢を与えますから、私たちとしてもいろいろな研究を続けているのですが、やはり実際にモノになるのは金属ですね。たとえば、マグネシウム、チタンはレースホイールとしては開発を続けていますが、今後、マグネシウムは伸びる感じがしません。なぜならレースでも使われなくなる傾向ですから。世界的に見てもF1とWECのLMP1ぐらいになってきている。そんななかで選択肢として浮かび上がってきたのがジュラルミンです。ずいぶん前、F3のレースで使ったこともあり、本格的にジュラルミンに取り組みはじめて3〜4年になりますね。
ジュラルミンの魅力とは?
いま私どもは、6000系、6061というアルミを使って鍛造ホイールをつくっています。これは非常に扱いやすくて、なおかつ強度も上げやすい、靱性もしっかりしている。一方、このジュラルミンの7075は、通常のアルミ合金に比べて飛躍的に強度は上がるので薄肉化ができますし、それにより軽量化を進めることができるのです。
これまで市販ホイールに使われなかった理由は?
レース用としては経験があるんですが、実際に市販ホイールとなると、ジュラルミンは難易度が高いんです。アルミのいち素材なんですけど、長所がある一方で、万人が扱えるほど簡単な素材ではないんですよ。たとえば熱処理自体も手間がかかりますし、硬いですから成型するときにも面倒です。たとえると、ジュラルミンが剛速球を投げるピッチャーだとしたら、球はいいんだけど、コントロールに難がある。それに対して6061は優等生でコントロールもスピードも備えている、という感じでしょうか。
その剛速球のピッチャーをいよいよ実践に投入する?
商品化までにはまだ時間がかかるんですが......。東京オートサロン2015に参考出品したのが「VOLK RACING TE37 CONCEPT FOR S-SUV 22" 7075 FORGED」です。スーパースポーツSUVをターゲットにしたもので、22インチでつくりました。そして、2015年の秋ぐらいにはプリプロトタイプを出すことができそうな段階です。
この商品のターゲットは?
実際の商品は「Audi RS 5」あたりのハイエンドモデルをターゲットとしていて、20インチにサイズを絞り込んで開発しています。6本スポークは間違いないですが、ターゲットが異なりますので、デザインはまったく別モノになると思いますが、コンセプトでご覧いただいたようにスポークを貫通する穴というのもやってみようと思っていますし、さらにいろいろな技術を投入したいと考えています。そういう意味で、リアルレーシングというよりもスポーツハイエンドというポジションを狙っています。
22インチとは思えない、驚くほどの軽さ!
強さに加えて軽量化を追い求めるという意味では必要な取り組みだと思います。ジュラルミンは通常のアルミ合金よりも1.5倍くらいの強度があるといわれていますが、安全マージンを含めて考えると2割程度の軽量化が図れると思います。これがビジネスになるかはどうかはまだわかりませんが(笑)、お客さまがワクワクするような商品を目指していますので、ぜひご期待ください。
(Reported by Satoshi Ubukata / Photos by Masayuki Arakawa)