レーシングカーさながらのカラーリングが施されたデモカーは、約370ps/500Nmという圧倒的なパフォーマンスの持ち主だ。
そうなると、「扱いにくいクルマではないか?」という不安が頭をよぎるが、実際はその逆。フルバケットシートに身体を預けてスタートすると、アクセルペダルに軽く足を載せるかぎりはいたってジェントルに振る舞う。エギゾーストノートも常識的なレベルで、助手席どころか後席のパッセンジャーとも不自由なく会話できるほどだ。
とはいえ、アクセルペダルに載せた右足にわずかに力を入れただけで、ゴルフRの2.0 TSIエンジンは低回転から豊かなトルクが即座に湧き上がり、あたかも大排気量エンジンを扱っているような頼もしさが伝わってくる。さらにアクセルペダルを踏む込むとどんな世界が待っているのか? 期待は高まるばかりだ。
タイミングを見計らって2.0 TSIに鞭をくれると、「これがゴルフか?」と驚くほどの鋭い加速に見舞われ、バリッという音とともにDSGがシフトアップ。ノーマルのゴルフRとは異次元の速さである。しかも、ターボとは思えない素早いレスポンスと圧倒的な加速をどの回転数からでも楽しめるのだ。
にもかかわらず、挙動は安定しきっており、躊躇せずにアクセルペダルを全開にできるのは、フルタイム4WDの4MOTIONによるところが大きい。
もちろん、最終的にそのパワーを余すところなく受け止めているのはタイヤなのだが、このクルマにはRacingLineの8.5J×19インチとともにSportContact6(235/35ZR19)が装着されている。
SportContact6といえば、ニュルブルクリンク北コースでFF最速を記録した「シビック タイプR」に装着されたことでも話題になったタイヤ。残念ながらFF最速の称号はフォルクスワーゲンの「ゴルフGTIクラブスポーツS」に奪われたものの、SportContact6への興味は募るばかりだった。
それだけに、SportContact6を試す日を心待ちにしていたわけだが、その実力は期待以上のものだった。
走り出してすぐに感じたのは、しっかりと路面を捉える高いグリップ。もともと4MOTIONということで接地感の高いゴルフRなのだが、それが輪をかけて高まった印象なのだ。しかも、標準の18インチから1インチアップしたにもかかわらず、足元がバタつくことがなく、また、タイヤ自体にスポーツタイヤにありがちなザラつきもない。ロードノイズも、標準装着の18インチよりもむしろ静かで、インチアップにともなう悪影響はほぼないといっていいだろう。
デモカーには「Track Sport」と呼ばれるRacinLineのサスペンションキットが装着されている。サーキットでのパフォーマンスを重視しながらも、ストリートでも使えるというこのサスペンションは、ノーマルよりもやや硬めとはいえ、SportContact6との組み合わせでは一般道でも許容できる乗り心地を確保。ちなみに、RacinLineには「Streetsport Plus」も用意されているが、こちらはTrack Sportに迫るパフォーマンスを持ちながら、ストリートでの快適性がより高められており、そのバランスの高さに舌を巻いた。
カンジンのワインディングロードだが、ハンドリングもノーマルとは異次元の仕上がりだった。硬めとはいえストローク感を残した味付けのチューンド・ゴルフRは、ゴルフRというよりもむしろゴルフGTIに近い軽快さを手に入れていた。ステアリングを切ると、その動きに忠実にSportContact6がコーナリングフォースを発揮。ステアリングをジワッと操作すればジワッと、クイックな動きには即座に。ドライバーの意図したままのレスポンスを示すのだ。
しかも、そのグリップ力は底なしに思えるほどで、コーナリング中にステアリングを切り増すような場面でも、確実にノーズが入っていく。よほどのオーバースピードでもないかぎりは、ドライバーが思い描いたラインをトレースできるはずだ。ドライの一般道でそのグリップ限界を試す勇気はなかったが、これだけのハイパワーをさらりと受け止めるSportContact6の懐の深さには驚くばかりであった。
スポーツモデルのポテンシャルをフルに引き出すのに不可欠なスーパースポーツタイヤ。19インチ以上を考えているなら、このSportContact6は選択肢から外せない存在といえるだろう。
機会があれば、皆さんもぜひRacingLine JapanのゴルフRとSportContact6の実力をご自身で試してほしい。
(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Hisashi Uemura)