フォルクスワーゲン グループ ジャパン(VGJ)が、2017年1月から全国のフォルクスワーゲン正規ディーラーで「COX」のチューニングパーツの取り扱いを開始した。この夢のコラボレーションが実現した背景とその狙いをうかがう。 すでに
----本格的なチューニングパーツをVGJで扱おうと考えたきっかけは?

(富内)

COXのチューニングパーツに興味を持っていても、専門ショップに行くのはちょっと敷居が高いという人は少なからずいるはずです。それがフォルクスワーゲン正規ディーラーで買えるということになり、興味を示して販売店に足を運んでくださる人がいれば、現場の活性化にもつながるとの判断からです。先日のオートサロンで展示した効果もあり、実際、ディーラーへの問い合わせも増えているようです。

----それをVGJで正規に取り扱うことに反対はありませんでしたか?

(富内)

2016年1月に私が担当となる以前から足掛け約5年の議論を経て、今回の導入となりました。実際、その間に社内ではいろいろな議論がなされましたし、反対の声があったのも事実です。細かい検証や確認が積み重ねられた結果、今回の導入へとつなげることができました。


----ドイツ本国には同じドイツの「エッティンガー」のエアロパーツが用意されていますが、足まわりやエンジンのチューニングなどのパーツはあるのですか?

(富内)

ドイツ本国には強化スプリングがありますが、他のパーツについては日本独自で用意する必要がありました。そこで白羽の矢が立ったのがCOXでした。もともとモータースポーツ活動での関わりもありましたし、何よりフォルクスワーゲン車の扱い方について国内で右に出るブランドはないと思います。これまでに技術的な情報交換を行ってきたこともあり、信頼できる大事なパートナーだと捉えています。

----そのCOXですが、坂本選手から見るとどんなブランドですか?

(坂本)

僕自身のCOXとの関わりは、2000年にスタートしたニュービートルによるナンバー付きワンメイクレースでした。VGJによるこのレースはCOXが技術的にサポート。僕にとっては、とても想い出深いレースになりました。そして現在はCOXに所属しているわけですが、1978年にコックススピードとして創立して以来、私たちはモータースポーツで得られたノウハウを活かし、独自の方法でフォルクスワーゲンのチューニングに取り組んできました。

その基本となるのが「改造ではなく調律」という考え方です。チューニングパーツを開発するにあたっては、フォルクスワーゲンのバランスは絶対に崩さず、ユーザーの好みにあわせて、そのクルマの楽しい部分を伸ばしていくのがCOXの基本方針です。


----その開発力には定評がありますよね?

(坂本)

開発担当者の長年の経験やフォルクスワーゲンへの理解をもとに、フォルクスワーゲンのチューニングはこうあるべきという哲学を持って商品をつくっていますからね。また、たとえばゴルフのパーツを開発するにあたっては、ハイラインとGTI、Rで同じ仕様にしてしまえば簡単ですが、それで妥協が生まれるのは見過ごすわけにはいきません。そこで開発するうえでは時間もコストも余分にかかるのを承知で、グレードごとに別のセッティングを施すわけです。

見た目は地味なパーツばかりですが(笑)、性能には自信があります。

----実際にCOXによるチューニングを体験して、富内さんはどう思いましたか?

(富内)

坂本選手がいうように、COXのパーツは、フォルクスワーゲンのキャラクターを損なったり、ねじ曲げたりするアイテムではないというのを、私も実感しました。もともとの設計をさらに磨き、研ぎ澄ますとここまでできる......ということを示してくれています。カスタマイズというと別のモノに変える、違ってナンボというところがありますが、COXのチューニングは進化形であり、必ずノーマルの延長線上にあります。フォルクスワーゲンの本質をより感じやすくさせるパーツという印象でした。

----たとえば、どんなところですか?

(富内)

COXのチューニングパーツを装着したゴルフGTIを運転したとき、エンジンの吹け上がりが軽く、より楽にそのポテンシャルが発揮できるように感じましたね。

また、驚いたのがその乗り心地。足まわりをイジるとどうしても硬くなって、突き上げが気になったりするものですが、COXの場合はそれがない。むしろノーマルよりも乗り心地が良いという印象を持ちました。速さを求めているのに、乗り心地がいいというは興味深いですね。


----それはCOXの伝統ですよね?

(坂本)

性能は妥協しませんが、だからといって乗り心地を犠牲にしないのが、COXの流儀ですね!

----これまでもマーケットで高い評価を得てきた「コックス ボディダンパー(ヤマハ パフォーマンスダンパー)」(以下「ボディダンパー」)が、フォルクスワーゲン正規ディーラーで手に入るのもうれしいですよね。

(坂本)

ボディダンパーはボディを補強するものではなく、振動を吸収することで、ハンドリングや乗り心地を向上させる人気のアイテムです。フロントに1本、リヤに1本装着しますが、目に見えないくらいの動きでボディの振動や衝撃を受け止めるのです。装着したら半永久的に使えますし、装着のデメリットはほとんどありません。これでクオリティがワンランクにアップした走りを、ぜひ皆さんに試していただきたいですね。


----その開発は大変でしょうね......。

(坂本)

クルマごとにボディの形は違いますし、グレードが変われば振動の特性も変わってしまいますからね。開発では、最初に取り付け位置を決めて、そこから減衰力を決めていきます。減衰力を詰める作業にはかなりの時間がかかりますし、「これでいこう!」と決めてテストコースに持ち込んだ後にも、このボディダンパーを手がけるヤマハのエンジニアとの確認作業が待っています。そこでOKが出てはじめて商品化できるのです。

ゴルフ5用に比べてゴルフ7用のボディダンパーを開発するのは大変でした。ボディのつくりが進化しているので、装着による違いが出にくいのです。何度もテストコースに持ち込み、確認したのを覚えています。

----ボディダンパーを含めて、どのようにチューニングを楽しんでほしいですか?

(富内)

一度に全部装着するというやり方もありますが、それだと何がどう効いたかわかりにくい。それよりは、段階的にパーツを加えていって、クルマの変化を見るというのも楽しいでのはないかと思います。大人の贅沢な楽しみ方というか、愛車を育てる楽しみというか。それによってクルマと対話する時間が増えたらうれしいですね。


(坂本)

オーナーごとに楽しみ方はさまざまだと思いますが、見た目重視ならエッティンガーのエアロパーツとCOXのオリジナルスプリングキットでスタイリッシュに。走りをグレードアップしたければ、オリジナルスプリングキットに加えて、スタビライザーセットがあります。快適性を求めるならボディダンパーがお勧めです。ボディダンパーは実は速さにも貢献していて、以前ゴルフ6で富士を走ったとき、高速コーナーが早くなり、ラップタイムではコンマ6秒アップしました。

----話をうかがっているだけでも楽しくなってきますね!

(富内)

COXのチューニングパーツをフォルクスワーゲン正規ディーラーで取り扱うという発表があってから、興味を持ったお客さまからディーラーへの問い合わせも増えているようです。

私は子供のころ、よく父に連れられてディーラーを訪れたものですが、そのときディーラーのスタッフと父がクルマの話を楽しんでいました。ここをいじったらどうなるとか、この部分が気になるとか。チューニングパーツの取り扱いがきっかけで、フォルクスワーゲン正規ディーラーもそういう場所になったらいいと思いますし、フォルクスワーゲン好きが集まる場所にしたいというのが私の夢です。

----今後の展開が楽しみです。ありがとうございました!


(Text & Photos by S.Ubukata)