イタリアンデザインとレーシングDNAにより生み出されるO・Zホイール。その生産現場を覗いてみる。 今回、紹介するのは、O・Zのイタリア本社にある鋳造ホイールのライン。高品質のアルミホイールをつくるには、当然、高品質な材料が必要になる。O・Zでは、厳選されたアルミのインゴットから、必要なアルミ合金をこの溶鉱炉でつくっている。


こちらは鋳造に使う金型。おびただしい数の金型が所狭しと積み上げられている。


ところで、ひと言に鋳造といっても、そのつくりかたは大きく2つに分けられる。ひとつは「重力鋳造法(グラビティ鋳造法)」と呼ばれるもので、溶かしたアルミ合金(溶湯)を重力だけで型に流し込むというもの。下の写真左がその概念図で、リムから溶湯を流し込むが、これだとリムに鬆(す)ができやすく、リムの強度が不足してしまう。

もうひとつが「低圧鋳造法(ロープレッシャー鋳造法)」で、この方法ならアルミ溶湯を型に流し込む際に低圧ガスを加えるため材料の偏りを防ぐことが可能だ。


当然、低圧鋳造法のほうが手間がかかり、製造に時間もかかるが、O・Zは一部の商品を除き後者の低圧鋳造法を採用し、高密度、高精度な鋳造ホイールを世に送り出している。下の写真は、金型から取り出されたままの状態で、ホイールのセンター部にはアルミ溶湯を型に流し込む際にできる"押湯"が残っている。あとの段階でこの押湯は取り除かれ、再利用される。


下の写真は、加工前の鋳造ホイール。お気づきかもしれないが、リム幅が狭く、アンバランスな形状だ。


実はこれ、HLT(フローフォーミング技術)により加工される前の状態。HLTはHigh Light Technologyの略で、F1ホイールづくりに由来する技術だ。


高温で高回転のホイールを型に押しつけることでリムを伸ばしていく。こうすることで、軽量かつ高強度のリムが成型される。

重力鋳造法の弱点を補うためにフローフォーミングを行うメーカーがあるなか、O・Zは低圧鋳造法とフローフォーミングを組み合わせることで、鍛造ホイールに迫る軽量・高強度を実現。そのこだわりが、O・Zの優れた機能性や高い性能を生み出しているのだ。


そして、製法にかかわらず製造された全ホイールはX線検査が行われる。

妥協のないものづくりを進める一方、O・Zでは生産効率向上のため、2002年から"カンバン方式"を導入するとともに、"カイゼン"により無駄をなくす取り組みを続けている。


工場見学のあと、プロダクトマネージャーのサムエル・セガーラ氏(下の写真左)と、レーシングデパートメントおよびアジアビジネスデベロップメントマネージャーのアンドレア・ベルノーニ(写真右)のふたりに話を聞くことができた。

今回の工場見学では、HLTのアドバンテージをより強く感じることができたのだが、今後、低圧鋳造+HLTのホイールは増えるのだろうか? この疑問に対しての回答はこうだ。現在、鋳造ホイールのうちHLTが占める割合は50〜55%だが、HLT加工機を追加導入したことで2018年10月からは従来の2倍の生産能力を持つことになるという。将来はその比率を80%くらいにまで高めたいということで、今後O・Zでは、HLTの鋳造ホイールが主流になりそうだ。


一方、鍛造ホイールについても、需要が増えている。アフターマーケットに加えて、メーカーやチューナーへの工場装着(OE)が増える傾向にあるのだ。そこで心配なのが生産能力ということになるが、O・ZではOE向け鍛造ホイールのラインを新設し、需要増に応えるという。

OE向けとしては、すでにフェラーリ、アストンマーティン、アルピナ、アバルトなどがあるが、新しいところでは、近い将来、ポルシェへの供給を始めることになるという。O・Zがポルシェに工場装着ホイールを提供するのはこれが初めて。現在開発中のニューモデルに鍛造ホイールを提供しているそうで、どのモデルに装着されてくるのか、いまから楽しみである。


このように、さまざまな取り組みによって、常に前進するO・Z。彼らが今後どんなプロダクトを生みだし、私たちのカーライフをどう楽しませてくれるのか、これからも目が離せない。

(Text & Photos by Satoshi Ubukata)

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